第41回 「おひとりさまの老後」:ヨタヨタ・ドタリ期から死まで

 

4.任意後見制度の活用-2,000万円の預貯金で100歳まで

 

 家族など身元保証人になってくれる人のいないおひとりさまの場合、元気なうちに身元保証人に代わる人を用意しておいた方が安心だ。西東京市では、社会福祉法人西東京市社会福祉協議会(以下社協)のなかに、権利擁護センター「あんしん西東京」という窓口があり、本人が任意後見人を紹介して欲しいと依頼できる。

 依頼があった場合、社協は、弁護士、司法書士、社会福祉士などの幹事役に、後見人の候補者を出してくれるよう依頼する。候補者と面談し、「任意後見受任者」(注5)を選択・決定する。任意後見人受任者が決まると、お願いする内容を決め、それを公正証書にする。公証役場で任意後見契約公正証書を作成すれば、法務局にその内容が登記される。

(注5)任意後見制度では、本人の判断能力が低下したと判断され、裁判所に申し立て、任意後見監督人が選任されて初めて任意後見契約が履行される。このため、それ以前は任意後見「受任者」と呼ぶ。この受任者に対し、任意後見契約が開始される前の生活サポートとして、後述する「見守り契約」や「任意代理契約」が取り交わされる。

 

任意後見制度

図2 任意後見制度の仕組み (出所)公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート『成年後見物語』に筆者加筆

 

 図2は、任意後見制度の流れを描いたものだ。任意後見制度は、本人が元気なうちに契約するため、本人の判断能力が低下するまでの間は、「見守り契約」を結ぶ。見守り契約というのは、月一回程度、電話連絡や面談を行い、本人の状況を把握し、消費者トラブルに巻き込まれている、あるいは、認知症の発症が疑われる場合などには、必要な関係機関に連絡し、対応措置の要請を行う。また、仮に、判断能力が十分であっても、身体が不自由になった場合などには、代理権を与えて財産管理を委任する契約、「任意代理契約」を結ぶ場合もある。

 そして、いよいよ判断能力が低下したと判断された場合には、かかりつけ医やケアマネージャーなどと相談の上、家庭裁判所に申し立て、任意後見監督人が選任される。この段階になってはじめて「任意後見契約」が履行される。監督人は、任意後見人が適正に契約を履行しているかどうかを監督する。

 任意後見契約は、本人が死亡すると終了する。後見人は、財産管理の計算、引き渡しの事務などを行うと、契約完了となる。もし、葬儀、埋葬、死亡届の諸手続き、家財道具の処分、親族への連絡、遺産相続、遺言の執行などの事務についても、後見人に委任したい場合には、「死後委任契約」を結んでおく。

 お願いする内容は、表3のような項目から選ぶ。

 

任意後見制度

表3 任意委任契約に関する代理権目録(記載例
(出所)公益社団法人成年後見支援センター ヒルフェ

 

 後見人は、手術や輸血、延命措置の依頼など医療行為への同意は、できない(注6)。本人である私が延命措置をしないで欲しい場合には、意思表示ができなくなる前にきちんと延命治療を拒否する意思表示をしておく必要があり、「尊厳死宣言公正証書」を作成しておくと良い。また、後見人は、介護ヘルパーの仕事もできない。後見人の仕事は、ヘルパーに介護してもらうための契約を締結することである。

(注6)本来、医療行為そのものを受けるかどうかの選択を行う権利は本人のみに属する権利であり、家族であっても、患者本人に代わって同意するのは、法的に有効とは言い難いと考えられている。まして、第三者である後見人は、同意できない。ただ、本人の判断能力が低下している場合には、医療・ケアチームで、できるだけ本人の意向に沿うよう求められており、後見人は、そうした環境を整える。

 見守り契約の費用は、月5,000円~1万円程度、実際に任意代理契約が開始された場合の費用は、財産の金額によって異なるらしい。法定後見制度(注7)では、基本的な報酬が定められており、被後見人の財産額によって異なる。表4によれば、月2万円~6万円となっている。任意後見制度でも、家族以外の専門家に依頼した場合には、月3万円~6万円くらいが相場と言われている。このほかに、任意後見監督人への報酬、月1万円~3万円を支払う。この金額は、家庭裁判所が決定する。もちろん、こうした契約を作成する手数料などは別途かかる。

(注7)「法定後見制度」とは、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度。「任意後見人制度」は、本人の判断能力が十分なうちに、あらかじめ、任意後見人となる人や将来委任する事務内容を定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人がこれらの事務を本人に代わって行う制度。

 

報酬額

表4 法定後見人制度の場合の報酬額
(出所)グリーン司法書士OnLineのHPより筆者加筆

 

 私は、田無駅から徒歩5分の土地を約80坪持っているので、預貯金がなくても、管理財産額は、5,000万円より上になってしまうだろう。すると、任意後見人に支払う費用が月5万円としても年間で60万円、監督人に月3万円で36万円、合計で約100万円かかる計算となる。仮に預貯金が良く言われる2,000万円あったとしても、土地を処分しないとすると20年しかお願いできない。それに見守り期間が月1万円として年12万円、死後委任契約を仮に3カ月くらいとして3万円くらいかかる。

 現在74歳、100歳まで生きるとし、見守り10年間で120万円、任意後見制度になってから16年間で1,600万円、死後委任契約3万円とすると1,723万円。在宅死に300万円かかるとすると、2,000万円あれば、ぎりぎり一人で死んで行けそうだ。ただ、おひとりさまの場合、前述の「保険外サービス」を依頼せざるをえない機会も多いだろうから、2.000万円の貯金ではちょっと心もとないかもしれない。

 

 >>次のページに続く 5. 遺産、死亡給付金と税金

【目次】
1.ヨロヨロ期-まずは、民生委員・地域包括支援センターに相談
2. 在宅か施設か-わがままな私は在宅にしよう!
3. 在宅で死ねるか-孤独死⁉ 死んだ経験がないので不安だ
4. 任意後見制度の活用-2,000万円の預貯金で100歳まで
5. 遺産、死亡給付金と税金
6. 任意後見人契約・尊厳死宣言・遺言-公証人役場へ

 

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