第3回 介護保険、今年4月から変わること


 斎藤澄子(社会福祉士・精神保健福祉士)


 

 これまでも、介護予防サービスや地域包括支援センター、地域支援事業(小規模多機能型居宅介護など)が開始されたり(平成18年)、認定調査の内容が変更されたり(平成21年)、医療と介護、生活支援サービスが切れ目なく提供されるシステム「地域包括ケア」の推進が提唱されたり(平成24年)、いろいろなことが起こりました。

 平成27年は、その5回目の見直しの年にあたります。利用者にとって、どのようなことが変わるのか、見てみましょう。

 

 65歳以上の介護保険料が上がります

 

 介護保険サービスに要する費用は、40歳以上の国民が負担する介護保険料と税金で、半分ずつ賄われています。この介護保険料も、3年ごとに見直されます。

 西東京市では、65歳以上の介護保険料の基準額が、1か月5115円から5691円に上がりました。

 基準額とは、同じ世帯に住民税課税者がいる方のうち、本人は住民税非課税で、前年の課税対象年金収入額と合計所得金額の合計が80万円を超える方の保険料のことです。実際の保険料は、基準額に所得段階ごとに決められた倍率(0.43倍~2.30倍)を掛け算した金額です。これまで15段階だった所得段階も変更になり、今年度から、17段階に細分化されました。

 介護保険料は、一般的にサービスの量が多い市区町村ほど、高くなると言われています。ちなみに、東京都内で基準額が最も高いのは、港区の6245円、最も安いのは羽村市の4500円です。西東京市の基準額は中の上ぐらいのお値段です。

 

イラスト=© 手島加江

 

 利用者負担やサービス利用要件が変わります

 

介護保険からサービス事業者に支払われる介護報酬の改定に伴い、利用者の負担が変わります。

 今回の改定では、全体平均で2.27%の引き下げが実施されました。居宅介護支援(ケアマネジャーによるケアプラン作成・相談対応、ただし、利用者負担はありません)と通所リハビリ(デイケア)を除くほとんどの介護報酬が下げられたのです。

 例えば、西東京市でデイサービスを7~9時間利用する場合、3月までの利用者の負担は、介護度に応じて1日743円~1279円でした(食費、日常生活費は別途負担)。これが、4月からは、それぞれ40円程度下がります。

 「じゃあ、介護を受ける費用がお安くなるのね?」と思う方がおられるかもしれませんが、そうは言いきれません。

 まず、基本となるサービス利用料に、各種加算が適用されます。例えば、デイサービスであれば、介護職員処遇改善加算をはじめとして、栄養改善加算、口腔機能向上加算、認知症加算(新設)、中重度者ケア体制加算(新設)、個別機能訓練加算など、さまざまな名目で、利用料金に上乗せされます。

 これらの加算の有無や種別は、職員の資格、研修状況、利用者の介護度等の要件によって異なるので、同じサービスを利用していても、事業所によって、利用料が違ってきます。

 また、一部の事業所では、介護報酬の引き下げを理由に、公定価格のないサービスの値上げを実施したところもあります。

 私の勤務する某区の相談窓口には、すでに3月のうちから、「昼食代がほぼ倍になると言われた」(デイサービス)、「介護報酬の引き下げ分全額を管理費に上乗せすると言われた」(グループホーム)などの苦情が寄せられています。

 確かに、利用者の自己負担は介護報酬の1割なので、利用者負担の値下げ分が1日20円であっても、事業者が得る収入は1日1人あたり200円減少します。経営的には、大問題でしょう。ただ、それを、利用者に転嫁するのはいかがなものでしょうか。

 さらに、これまで一律に1割負担だった利用者負担の割合にも、変更が加えられました。8月以降、本人の合計所得金額が160万円以上の方(年金収入とその他の合計所得金額の合計が、単身で280万円未満の方、65歳以上の高齢者が2人以上いる世帯で合計所得金額が346万円未満の方を除く)の自己負担は、2割になります。近いうちに、個別に通知が送付されるほか、市報や市のHPに情報が掲載されるので、該当されるかもしれない方は注意しておいていただきたいと思います。

 さらにさらに、特別養護老人ホームの入所者については、4月から、光熱費が引き上げられるほか、8月から、多床室の居住費が大幅に増額されます。また、これまで、居住費や食費の減額措置(特定施設入所者介護サービス費制度)を受けていた一定以下の年収の方のうち、預貯金が多い方は、8月から減額されなくなります。

 このほか、27年度は、特別養護老人ホームに入所できる人の介護度が原則要介護3以上になったり、高額介護サービス費の上限額の引き上げ、高額医療・高額介護合算制度の限度額変更などが、実施されます。

 

 わからないことは質問しよう 

 

 介護保険は、制度が変わるたびに、複雑で使いにくくなり、利用者の負担が増えるような気がします。「木に竹を接ぐ」とか「弥縫策」とか「屋上屋を架す」などの言葉が浮かびます。これでよいのでしょうか。

 ともあれ、利用者側としては、何がどう変わったか、確認することが大切です。

 3~5月に行政や事業者から渡された書類は捨てないでください。不明な点、不審な点については、ケアマネジャーや行政窓口に問い合わせることをお勧めします。

 質問される窓口も気の毒だとは思いますが、彼らはそれがお仕事。頑張って、どんどん疑問や意見をぶつけることが、次回制度見直しの際に生かされるかもしれないのですから。 

 

【プロフィール】
 斎藤澄子(さいとう・すみこ)
 福岡県出身。都内某区で高齢者の相談業務に従事。社会福祉士・精神保健福祉士。元看護雑誌編集長。趣味はトランペット演奏、長年の「少年隊」のファン。
 手島加江(てじま・かえ)
 イラストレーター。1980年桑沢デザイン研究所卒業。82年頃よりフリーとして活躍。広告、雑誌、書籍、CDなど。個展、グループ展など多数。

 

【関連リンク】
・介護報酬の改定等(西東京市Web)
>> http://www.city.nishitokyo.lg.jp/kenko_hukusi/kaigo/20150401housyukaitei.html

・ シニアライフの知恵・介護編 <目次>

 

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