第4回 施設に入る(1)


 斎藤澄子(社会福祉士・精神保健福祉士)


 

 「自宅で死ぬまで暮らしたい」という要望はあっても、現実は厳しいものです。

 私の勤務する某区の相談窓口にも、施設を利用せざるを得なくなった方やご家族の相談、苦情が少なくありません。

 高齢者の身体状況あるいは認知症により、ひとり暮らしの在宅生活に限界が来るというケース、また、家族と同居していても、あまりに介護負担が大きかったり、折り合いが悪かったりする場合、施設入所を検討することになります。中には、「親族に迷惑をかけたくないから、心身ともに元気なうちに施設に入りたい」と考える高齢者もおられます。

 自宅を離れて暮らすことのできる高齢者のための施設には、介護保険の施設だけでも、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設、有料老人ホーム、グループホームが用意されています。

 また、介護保険外でも、高齢者の住居として、養護老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、都市型軽費老人ホーム、高齢者集合住宅(シルバーピア)などがあります。

 さまざまな類型があるので、提供されるサービスの内容、費用負担など、利用する方の条件に合わせて、検討しなくてはなりません。

 今回は、介護保険制度で、「施設サービス」に位置づけられている施設をご紹介します。

 

 特別養護老人ホーム(略して「特養」、介護保険制度上では「介護老人福祉施設」)

 特別養護老人ホームは、原則的に、国、地方公共団体、社会福祉法人の設置に限られており、公的な後ろ盾があることにより、安心感が高いと言えます。

 原則的に要介護3以上、常時介護が必要で、自宅では介護が困難な方が対象です。他の入所施設に比べて費用負担が少なくてすみ、看取り介護(本人・家族の要望により、末期になっても入院をせず、亡くなるまで施設内で介護されること)を行う施設も増えてきました。

 入所の順番は、申し込み順ではなく、本人の介護度や家族の状況等が勘案されて決まります。希望者が多いだけに、入所までには、長い長い待機者の行列に並ばなければなりません。全国どこの施設でも申し込むことができますが、都会の中心部に近いほど、待機者の列は長く、また、居住費(家賃のようなもの)は高くなる傾向にあります。遠方の施設ですと、待機期間は短いわけですが、自宅から離れているので、面会に行きにくく、家族の絆が薄れてしまう懸念は否定できません。

 また、費用負担が軽いとは言っても、介護保険の自己負担分のほか、食費や居住費、日常生活費、医療費などが別途必要です。全室個室のユニット型特別養護老人ホームは居住費が結構な金額ですし、従来型特別養護老人ホームの多床室(大部屋)の利用者は、8月から介護報酬が引き下げられる一方で、それ以上に、居住費・光熱費が値上げされます。

 世帯の所得によっては、居住費と食費の負担を軽減する制度が用意されていますが、収入が少なくても、預貯金が単身で1千万円以上、夫婦で2千万円以上であれば、軽減措置は受けられません。いまや、「特別養護老人ホーム=格安」というイメージは、崩れつつあります。

イラスト= © 手島加江

イラスト= © 手島加江

 

 老人保健施設(略して「老健」

 医師やリハビリの専門家(理学療法士や作業療法士、言語療法士など)が勤務しており、病状が安定した要介護高齢者に対して、医学的な管理のもとで、看護や介護、リハビリを提供する施設です。入院生活のあと、いきなり自宅に戻るのには無理があるというリハビリ目的の利用や、濃厚な治療は必要ないものの、多少の医療処置が必要な慢性疾患のある方には、ふさわしい施設と言えます。

 ただ、老人保健施設内では、行われる治療や処方が制限されていることに、注意が必要です。想定以外の処置や投薬をしても、施設に一定額以上の医療報酬は支払われませんので、施設内で濃厚な治療を受けることはできません。重篤な状態になった場合は、外部の医療機関に移ることになります。

 一般的に、おおむね3か月ごとに判定会議が開かれて、入所の継続が判定されます。入所期間を厳格に定め、3か月経ったら有無を言わさず退所させる施設もありますので、入所契約時に確認することが必要です。

 なお、数は少ないのですが、より医療に厚い「介護療養型老人保健施設」(新型老健)という施設もあります。

 

 介護療養型医療施設

 介護療養型医療施設は、介護保険が適用される病院(病棟)です。急性期を脱して、ある程度状態は安定しているものの、痰の吸引や経管栄養などの医療処置が継続的に必要な方、ターミナルケア期にある要介護高齢者に、医療と介護を提供します。

 他の施設に比べると、医師や看護師が多く配置されていますが、行われる医療は、日常的な検査、注射、投薬、簡単な処置に限られます。それ以上の治療が必要になった場合は、医療保険適用のベッドに移る必要があります。

 おむつ代は包括的な費用に含まれていますが、介護保険報酬が他の施設類型より高く設定されているうえに、施設(病院)によっては、寝具等のリース代として、相当の金額を請求される場合もあり、費用負担は少なくありません。「毎月の支払いが大変」という声はよく耳にするところです。

 介護療養型医療施設は、医療費抑制や社会的入院の排除を求めて、平成18年に廃止が決定し、介護療養型老人保健施設への転換が図られてきました。しかし、医療ニーズの高い中重度の要介護者は増えるばかりで、受け皿が十分でなく、また、新型老健への転換が進まないことから、平成30年まで、廃止の期間が延期されています。

 すでに、新規の申請は行われておらず、「介護保険法」という法律から、「介護療養型医療施設」の項は削られていますが、昨年8月、機能の継続が決まりましたので、名称は変わるかもしれませんが、医療ニーズの高い要介護者の受け皿として、何らかの形で存続するものと思われます。

 

 

【略歴】
 斎藤澄子(さいとう・すみこ)
 福岡県出身。都内某区で高齢者の相談業務に従事。社会福祉士・精神保健福祉士。元看護雑誌編集長。趣味はトランペット演奏、長年の「少年隊」のファン。
 手島加江(てじま・かえ)
 イラストレーター。1980年桑沢デザイン研究所卒業。82年頃よりフリーとして活躍。広告、雑誌、書籍、CDなど。個展、グループ展など多数。

 

【関連リンク】
・介護保険施設入所待機者数(平成27年3月31日現在)(西東京市Web
 

 

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