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第24回 我がこととして取り組みはじめた空き家問題


  富沢このみ(田無スマイル大学実行委員会代表)


 

 「遊休不動産のリノベーション」については、この連載でも、第一部第5回(2017年1月)で一度取り上げている(小倉と松戸の事例)。でも、その頃は、私自身よその地域のこととして捉え、リノベによってまちが生まれ変わるなんて面白いなぁと思い、紹介していた。ところが、遊休不動産の問題は、実は他人事ではなく、我がまちのこととして喫緊に取り組むべき課題であった。遊休不動産といった場合、シャッター通りに代表される商店や事業所と住宅があり、今回は、主に住宅の話だ。

 実際、私が住んでいる自治会内でも、一人暮らしをしていた高齢者が亡くなった、老人ホームに入居したなどの理由から、空き家・空地がどんどん増えている。そうなると、需要も減るので、店舗も閉鎖されてしまう。

 

我家の近くでも多く見られるようになった空き家

 

 幸い、我が自治会は、田無駅から5分と比較的好立地であるため、売り出されればすぐに買い手が見つかることが多い。それでも、相続の問題などで、放置されている空き家もかなりある。写真の住宅は、最近になってNPO法人空家・空地管理センターに管理を委託したようだが、少し前までは、樹木が伸び放題になっていた。

 すぐに買い手が付く場合でも、新しい世帯は、近所づきあいをしたがらず、どんな人が住んでいるのか顔が見えない。地主が別なところに住んでいてアパートや貸家にしている場合には、なおさらだ。自治会としては、たとえ人が住んでいても歯抜けのような状態となり、防犯・防災という面からも好ましくない。

 

空き家はこれからさらに増える

 

 図は、全国の人口・世帯数の推移と将来推計を示したもの。人口は、既に、2008年をピークに減少しているものの、空き家が問題となるのは、世帯数との関係であり、世帯数は、まだ増え続けている。世帯数のピークは、2023年と推計されている。人口が減少しているのに、世帯数の減り方が遅いのは、単身世帯や高齢者だけの世帯が増えているからで、今後、空き家の問題は、さらに深刻化すると考えられる。

 

 

 全国の住宅ストック数と世帯数の推移をみた次のグラフでみると、早くも1968年には、住宅ストック数は、世帯数を上回っており、2013年には、総世帯数約5,245万世帯に対し、住宅ストック数は、6,063万戸と総世帯数よりも16%(818万戸)も多い。うち、「賃貸用または売却用の住宅」、「二次的住宅(別荘など)」を除いた「その他の住宅」が318万戸(多くが一戸建木造)となっている。

 一般に、結婚、出産、転勤など、人生の節目に住宅を購入する場合には、新しい利便性の高い住宅(設備的にも、交通アクセス的にも)を求める傾向がある。仮に親が住んでいた実家を相続したとしても、使うには古くて修理代がかかる、現在の生活圏から遠い、建物除去にもお金がかかる等々の理由から空き家のまま放置されることになる。

 

(出所)国土交通省『空き家の現状と課題』

 

空き家による周辺への悪影響

 

 ひとくちに空き家といっても、非常に多様で、引き続き住宅として使用できるものから廃屋に近いものまで、また戸建や共同住宅など様々である。一般的に空き家が問題となるのは、管理が行き届かず、景観の悪化、防犯や防災機能の低下、ゴミなどの不法投棄を誘発、衛生の悪化や悪臭の発生などである(図参照)。こうした空き家の多くは、所有者が不明であることも多い。

 

(出所)国土交通省『空き家の現状と課題』

 このため、国では、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を制定し(2014年11月27日公布)、市町村に空き家対策についての計画を策定し、実態調査を行うよう促すと伴に、「特定空き家(適切な管理が行われず、地域に甚大は影響を及ぼすおそれがある空き家)」については、行政が取り壊しなどの強制執行を行えるようにした。

 

西東京市の空き家の現状

 

 こうした国の方針もあり、西東京市では、2017年度に、都市整備部に「住宅課」を新設した。空き家対策や住宅セーフティネット(高齢者、低額所得者、子育て世帯等の住宅確保)、民間住宅の耐震化など住宅を取り巻く諸課題に効率的かつ円滑に対応するためである。担当が複数に分かれていた空き家関連の窓口を一元化し、空き家の利活用等を含め、組織的な対応と効果的な施策の展開を図るねらいだ。

 そして、市内の空き家等の所有者等を対象とした相談体制の確立と空き家等の有効活用、適正管理、発生抑制等を推進し、空き家等対策の強化を図ることを目的に、不動産、建築、法律等の専門家団体の6団体と、協力及び連携に関する協定を締結した(注1)

 2018年3月には、『西東京市空き家実態調査報告書』(注2)が作成された。これによると、市内には、「空き家」と想定される建物(注3)が669件あり、市内住宅総数の1.7%にあたる。これらは、さらに、①ほぼそのまま使える(33.2%)、②修繕すれば使える(64.7%)、③利活用が難しいもの(2.1%)に区分される。

(注1) https://www.city.nishitokyo.lg.jp/press/2017/kisyakaiken20170828.files/siryou8.pdf
(注2) http://www.city.nishitokyo.lg.jp/kurasi/jutaku/jutaku_oshirase/akiya_jittaityousahoukoku.files/akiyahoukokusyo.pdf

 

 この調査で空き家とは、以下のものが除外されている。長屋・共同住宅では、建物全体について使用実態が無いもの。「新築売家(建売)・中古売家・賃貸用戸建て・管理戸建て」については、空き家ではあるが、「管理」という観点では一義的には不動産会社等により保たれていると想定できるため対象外。

(注3)所有者アンケートで「空き家」との回答があったもの、及び宛先不明、未回答のもの。

 

(出所)西東京市『西東京市空き家実態調査報告書』2018年3月

 

 西東京市は、平成31年3月に議会に上程する予定で、「(仮称)西東京市空き家等の対策の推進に関する条例」を策定中である(パブリックコメントが終了したところ)(注4)。この条例が制定されれば、西東京市でも、「特定空き家」について、取り壊しなどの強制執行を行えるようになる。

(注4)http://www.city.nishitokyo.lg.jp/siseizyoho/pub/syukei/akiya_taisaku_jyoureseitei.files/shiryou.pdf

 

空き家の有効活用-世田谷区の例

 

 京都の町屋とか、各地の酒蔵、豪農の家などは、空き家を活用して雰囲気のある宿泊施設、飲食店、小売店、ライブハウスなどに活用できるであろうが、普通の住宅の場合、特にこれといった風情は無いので、空き家の活用といってもそう目新しい方法を思いつきにくい。

 世田谷区では、平成25年度から、空き家等(空き家、アパート等の空室、空き部屋)を地域資源と捉え、空き家等の地域貢献活用を目的とした相談窓口を設けている(注5)。相談窓口では、地域貢献活用に提供したい空き家等を保有するオーナーと利用団体とのマッチングに取り組んでいる。西東京市にとって参考になると思われるので、やや詳しく見ておこう。

(注5)相談窓口としては、一般財団法人世田谷トラストまちづくりが担当している。
http://www.setagayatm.or.jp/trust/support/akiya/index.html

 

(1) 相談窓口(注6)
  ・空き家等を持っていて、地域貢献活用を考えているオーナーからの相談を受け付ける。
  ・オーナーの考えを聞き、現地で建物の調査を行い、活用の方法を一緒に考える。
  ・区の関連部署やNPO等空き家等の活用を希望する団体との出会いをサポートする。
  ・他方で、空き家等を活用したい地域貢献団体の情報収集を常時実施する。

(注6) 空き家等の活用にあたっては、オーナーには、耐震基準を満たしているか、満たしていない場合補強工事等を行う意志があるか、活用方法が用途地域による用途制限の範囲であるか、活用するのは、個人ではなく団体などの条件がある。

 

(2) 地域貢献活用助成事業
 ・地域貢献活用とは、地域交流の活性化、地域コミュニティの再生等、地域の課題解決の一助となるような活用方法。
 ・ 募集期間に企画を応募し、公開審査会で採択されると、事業を始めるにあたっての改修工事費用等を最大300万円まで助成される。

(3) 世田谷の空き家等活用ゼミナール
 オーナー及び活用希望団体・個人を対象に『世田谷の空き家等活用ゼミナール』を開催。「空き家等を活用して実現させたいプロジェクトがあるけれど、事業計画づくりがわからない」、「使い方に合った魅力的な空間づくりを考えたい」、「家賃に見合う収益事業をどう生み出したらよいか」などの課題に対して、まちづくりの専門家を講師に、少人数のグループワークで事業計画プランの練り上げを行なう。

 

 この仕組みで誕生した物件は、2018年4月現在、14件となっている。世田谷トラストまちづくりでは、「地域共生のいえ」という事業もやっており、うち4件がこれにあたる(注7)

(注7) 「地域共生のいえ」は、オーナー自らが営利を目的としない地域の公益的なまちづくり活動を定期的に行っているケース。これについては、特に助成制度があるわけではないが、実施にあたって、どのような活動が地域に合っているかなどまちづくりに関する相談を受けている。

 

西東京市の空き家への取り組み

 

 西東京市の先の条例の内容は、主に「特定空き家」対策が中心であるが、空き家等を活用することについても触れられている。市としても、今後、空き家オーナーと活用したい人との情報を収集し、マッチングまで行えるようにしたいと考えているようだ。

 『空き家実態報告書』で、空き家オーナーに対して実施したアンケートの中で、「全国では、空き家を地域のために活用している事例がありますが、その物件を地域貢献のために『貸出す』ことに興味はありますか。」との問いを設けている。結果は、「興味がない」が49.0%、「興味がある」が19.4%、「わからない」が31.6%であった。

 興味があると回答した人に、「どのような利用なら貸し出しても良いと思うか」を聞いた結果(複数回答)は、以下の表のようになっている。さらに、「どの程度の賃料なら貸しても良いか」を聞いた結果では、「周辺の賃貸物件の賃料と同額程度」が 56.7%で最も多かったが、半額程度も33.3%となっている。

 

 

 西東京市では、空き家の活用を活性化させ、魅力的なまちにしていこうと、民間ベースで「空き家ラボ(ウエスト東京アキヤラボ)」も立ち上がった(注8)。今後、空き家を提供する人、空き家を使って魅力的なまちづくりをしたい人の情報を集め、両者のマッチングやさまざまなアドバイスを提供していきたいとしている。

(注8) メンバーは、駄菓子屋ヤギサワベース、㈱ユニココ、岡庭建設㈱、三幸自動車㈱、㈱FM西東京、ヤギサワバル。キックオフの様子は、『ひばりタイムス』「空き家からまちづくりを考えるシンポジウム 西東京市民有志の会「アキヤラボ」お披露目」参照。https://www.skylarktimes.com/?p=16875
アキヤラボのHPは、https://akiyalabo.com/

 

さて、どうしたものか

 

 たんたんと、空き家の話をしてきたが、実は、筆者に空き家を任せても良いという話が持ち込まれており、他人ごとではないのだ。このため、アキヤラボのキックオフセミナーに出かけたり、世田谷区民ではないのだが、先の世田谷の空き家等活用ゼミナール(2日間)にも参加させてもらったりなどしてきた。

 私が所属する自治会には、ふらっと集まる場所がないので、一体感が得られにくい。古くからの住民は、親の代からの知り合いだが、新しい住民との接点を持つ機会がない。代替わりしたり、嫁いできたりした人とのふれあいも少ない。子どもと大人が出会う場所も欲しい。今イメージしているのは、多世代が交流できるような場所だ。

 アキヤラボのセミナーで基調講演をされた価値総研の小沢理市郎氏が、「事業性があれば、事業する人がすぐに表れるが、空き家の活用は、必ずしも、すぐに事業性には、結びつかない。地域を巻き込んで、その空き家の活用がその地域にとって有益だと思ってもらえるよう、ワークショップなどを10回くらいして、『地域の自分ごと』にすることが大切」と言われていた。本当にやるとしたら、こうした段取りが必要だろう。

 さらに問題なのは、収入をどう生み出すかということだ。西東京市の空き家オーナーアンケートにみられるように、周辺の賃貸物件なみの賃料を支払えるようにすることは、最低条件だろう。オーナーは、固定資産税を支払っているのだから、それに見合う収入は必要だ。

 世田谷のゼミナールで私のチームを指導してくれたまちひとこと総合計画室代表の田邊寛子氏も、たとえ志は、社会貢献的なものであっても、改修費、家賃、ランニングコストなどを賄える程度の収入を上げられる事業計画にしなければ長続きしないと言う。

 田邊氏は、旧東海道品川宿にある築100年の空き家を活用し、「うなぎのねどこ」という「まちと人、人と人をカジュアルにコネクトする『場』」をつくっている。間口が2.7mと狭く、奥行きが30mもある2階建ての建物で、会員制の運営のシェアオフィスとし、①2階をアトリエ・スタジオとしてシェアするレジデンス、②1階の和室、キッチン、会議室などをワークの場としてシェアするノンレジデンス、③定期的なレッスンを行うイベントメンバーという3タイプの利用方法・料金を用意し、きちんと収入を得られる仕組みでスタートした(注9)

 

(注)2017年時点の資料より (出所)まちひとこと総合計画室

 

 

(注9) 当初は、会員制で始めたものの、活動が見えてくると人がやってくるようになり、地域のお祭りなどにも参加するなかで、会員だけでなく、どなたでもどうぞという雰囲気になってきたという。舞鶴で始まった「ご近所大学」とも連携し、ご近所のユニークな方による講座なども行われている。
https://www.facebook.com/unaginonedoco/

 

 空き家は、一つひとつ違うので、それぞれの空き家が置かれた環境に適した利用方法と収入の得方を考えなければならない。果たして私にやりきれるだろうか、乞うご期待!
(写真・画像はすべて筆者提供)

 

 

05FBこのみ【著者略歴】
 富沢このみ(とみさわ・このみ)
 1947年東京都北多摩郡田無町に生まれる。本名は「木實」。大手銀行で産業調査を手掛ける。1987年から2年間、通信自由化後の郵政省電気通信局(現総務省)で課長補佐。パソコン通信の普及に努める。2001年~2010年には、電気通信事業紛争処理委員会委員として通信事業の競争環境整備に携わる。
 2001年から道都大学経営学部教授(北海道)。文科省の知的クラスター創成事業「札幌ITカロッツエリア」に参画。5年で25億円が雲散霧消するのを目の当たりにする。
 2006年、母の介護で東京に戻り、法政大学地域研究センター客員教授に就任。大学院政策創造研究科で「地域イノベーション論」の兼任講師(2017年まで)。2012年より田無スマイル大学実行委員会代表。2016年より下宿自治会広報担当。
 主な著書は、『「新・職人」の時代』』(NTT出版)、『新しい時代の儲け方』(NTT出版)。『マルチメディア都市の戦略』(共著、東洋経済新報社)、『モノづくりと日本産業の未来』(共編、新評論)、『モバイルビジネス白書2002年』(編著、モバイルコンテンツフォーラム監修、翔泳社)など。

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