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ケアを通じた地域づくり(下) ボランティアや近隣住民とつながる

 

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 ケアタウン小平は「住み慣れた街で、最期まで生きて、逝く」ことができるよう在宅ホスピスケアを提供し、それが可能な地域をつくることを目指す。そのためには地域とのつながりは欠かせない。いわばケアという関係で結ばれたコミュニティづくりであり、人生の終わりまで安心して暮らせる地域社会を築くモデルづくりでもある。

 

ボランティアの重要性

 

 そうしたコミュニティを下支えするのは、地域におけるボランティアの存在だ。ケアを要する人に必要なだけのケアを提供するには、専門職や制度によるサービスだけでは足りない。ケアタウン小平クリニック院長の山崎章郎(ふみお)さんは、ホスピス医の経験から、患者とその家族のケアにおいてボランティアの重要性を痛感していた。

 

中庭でパネルを読む「ケアタウン小平応援フェスタ」参加者

 

 コミュニティケアリンク東京には現在、100人近いボランティアが登録している。活動の内容は、庭の草木の手入れから簡単なおつかい、利用者の話し相手、レクリエーションなど多岐にわたる。

 さらに大きな役割として、病を抱えた利用者や入居者を「患者としてではなく、一社会人として存在することを支える」ことがある。相手が医師・看護師の場合、その関係はどうしても「患者」となってしまう。しかし「人は患者としてだけ生きるのではない。社会人対社会人として振る舞えることは、社会性を担保できる大切なことなのだ」(山崎章郎著『「在宅ホスピス」という仕組み』)。

 一方、ボランティア自身にとっても、ここが居場所となり、生きがいとなっている側面があるようだ。あるボランティアはこう記す。「私にとってケアタウン小平でのボランティアの存在は、自分のことを冷静に考えるための貴重な場です。これからの高齢社会の中で、自分の未来が見えない中で、どう生きたらよいのかを教示してくれる場所になっています」(「ケアタウン小平だより」第13号から)

 ケアを必要とするのは患者だけではない。その家族や遺族。死に向かう大切な人を看病する緊張感、亡くしてしまった喪失感、空虚感は想像に余りある。

 遺族に対するケアは、チームの中で看取りに至るまでの間に関わりを持つ機会の多い訪問看護師が主に担っている。たとえば患者の死後四十九日にお花を持って訪問する。半年、1年という節目に担当の看護師が遺族に近況を伺う手紙を届ける。また半年以内に家族を亡くした遺族との茶話会を年2回、1年を経過した遺族との交流会「偲ぶ会」を開き、それぞれの思いを語り、分かち合うなど細やかなケアを心がけている。

 2008年には在宅遺族会「ケアの木」が発足した。遺族自身が会の世話人を務め、さまざまな催しを通じて懇親を深めている。

 活動エリア内で在宅看取りを経験した遺族は年々増えていく。ボランティアのうち約2割は遺族。在宅で看取った患者の遺族が、今度は小平ケアタウンの活動を応援している。年月とともに在宅ホスピスケアを通じて地域の絆は深まっている。

 

ホスピスケアからコミュニティケアへ

 

 小平市が2018年3月に発表した「小平市地域包括ケア推進計画」(2018〜2020年度版)によると、一人暮らしの高齢者世帯は1995年から2015年までの20年間で3.3倍に増えて全体の約3割。2025年には全体の38%に達すると見込まれており、お年寄りの孤独死の増加が懸念されている。

 小平市が2016年、高齢者に聞いたアンケートによると、「見守りや声かけ」について「希望しない」という回答が46%と突出して高い。「地域とのつながり」については「とても感じる」が14%、「少し感じる」が41%、「あまり感じない」「感じない」で計38%。「近所づきあい」は「あいさつをする程度」の割合が39%、「立ち話をする程度」の割合が34%、「家に行き来するなど親しくつきあっている人がいる」は15%。すなわち地域での見守りや支え合いは非常に心もとない状況にある。お年寄りの孤立を防ぐためにも、地域社会のつながりは今後ますます重要になるだろう。

 コミュニティケアリンク東京はケアタウン小平が地域の親子の居場所や拠り所になるようさまざまな交流活動をしている。「子育て支援事業」は絵本の読み聞かせや貸し出しのほか毎月1回、中庭に近隣の子どもが集まって、四季折々の遊びができる日を設けている。

 

子どもたちがフラダンスを披露

中庭でゲームをする子ども

 

 子どもたちはデイサービスを利用する高齢者を含めて異なる世代と交流し、親は子育ての悩みや介護の苦労を話すことができる。

 このほか落ち葉を腐葉土にして販売する「豊かな庭づくり事業」、アロマセラピーやヨガ教室を担う「文化・スポーツ倶楽部事業」などを展開。今では子どもたちが放課後に立ち寄ったり、友達と待ち合わせたり、中庭でサッカーをしたりする姿が見られるようになった。

 地域の老若男女が気軽に話したり真剣に語り合ったりする場があれば、そこに新しい交流が生まれ、新しい関係性が築けるかもしれない。そうした蓄積が地域のコミュニティを形づくり、今は心もとない関係もやがて強いつながりになる。そうなれば在宅ホスピスをさらに延長させた、地域によるコミュニティケアができるようになる——。

 山崎さんによると、13年前にケアタウン小平を立ち上げた時に親を在宅で看取った患者の家族が今、介護される側として関わっているケースが出てきたという。
「そんなふうに世代を超えたつながりも生まれています。この態勢を守って前進していくために、次なる人材を育成してバトンを渡していく。行き詰まったらベースにある理念に立ち戻る。その根本が揺るがなければ、この態勢は続いていくはずです。これはボランティアや寄付を含めて地域ぐるみで支えるホスピスケアのモデルの一つです。ここでできたのだから、ほかでもできるはずです」

 

1000個の風船

 

 地域を応援し、地域に応援されることを願って2003年から毎年開催しているのが、地元の住民と交流を図るための「ケアタウン小平応援フェスタ」だ。今年は10月21日に開かれ、職員やボランティア、利用者とその家族、アパート住人、近隣の子どもからお年寄りまで約700人が参加した。

 中庭を取り囲むように、手作りお菓子や福島県の支援物産販売の店が並び、中央ではゲームやクイズのほか、近くの小平第八小学校の子どもたちによるフラダンスが披露された。室内では山崎さんの講演会、合唱、似顔絵コーナー、アロママッサージ……。多彩な企画を通じて参加者は地域で支え合いながら生きていく思いを分かち合った。

 

1000個の風船が空に放たれた

 

 フェスタは毎回、恒例の「バルーンリリース」で終わる。色とりどりの風船1000個に参加者がそれぞれ願いごとを書いたメッセージを入れて飛ばすのだ。中庭で歓声が上がり、1000の願いを乗せた風船が秋の空高く放たれる様子をみんなが見守った。
(片岡義博)

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【関連リンク】
・地域包括ケア推進計画を策定(平成30年3月)(小平市
 ★計画書(PDF 2.3MB)(p14、29〜 参照)

 

【筆者略歴】
 片岡義博(かたおか・よしひろ)
 1962年生まれ。共同通信社記者から2007年フリーに。小平市在住。嘉悦大学非常勤講師(現代社会とメディア)。