西東京市営のテニスコート4面へ 多摩26市のワースト1 残るコートも傷んで危険 芝久保第二運動場廃止の説明会から

投稿者: カテゴリー: 健康・福祉 オン 2023年11月10日

 芝久保第二運動場の年末廃止が決まり、人口20万人の西東京市の市営テニスコートは来年からわずか4面へ。近隣自治体と比べると、断トツ「ワースト1」になります。市内のコートを長年利用し、市大会でも優勝経験のある鈴木麻衣さんの危機感あふれる寄稿です。(編集部)

 

利用者説明会

利用者設説明会に多くの市民が駆けつけた(2023年10月14日、田無第二庁舎)

利用者説明会

(2023年10月17日、総合体育館会議室)

 

 テニス愛好者に親しまれていた西東京市の芝久保第二運動場が今年12月末に閉鎖、5面のテニスコートが消滅することになった。6年前の2017年10月末に閉鎖された東町テニスコート(2面)に続く事態に、市が10月に開いた計4回の利用者説明会では毎回、集まった市民らから今後の展望を問う声や意見、提案が数多く出された。

 

東町テニスコート閉鎖後に

 

 2017年9月、「東町テニスコートの閉鎖に伴う陳情」が560人の署名とともに提出され、市議会の全員賛成で採択された。しかしながらコートは同年10月に閉鎖。その後、文理台公園のリニューアルに伴う新設案が検討されたが、進展状況はまったく伝わってこない。施設確保に向けたこれまでの取り組みや、市内の民間施設・大学施設利用に向けた調整など、行政からの進捗報告(情報開示)がないのはとても残念である。

 また東町テニスコート同様、借地の芝久保第二運動場がいずれ土地所有者へ返還されることは、この時点で十分に想定できたのではないだろうか。東町テニスコート閉鎖から6年、あまりにももったいない時間が経過してしまった。

 

多摩26市で圧倒的にワースト1

 

(注)各市の人口は、10月1日現在の住民基本台帳による(東京都総局統計部)。面数は屋外の専用市営施設に限ってカウントした。東久留米市、清瀬市、西東京市で構成する一部事務組合「柳泉園」のコート5面は枠外扱いとした。

 

 年明けから、市営テニスコートは「ひばりが丘総合運動場(ひばりアム)」の4面のみとなる。コート面数でみると、西東京市は東大和市と並んで多摩26市のなかで最下位。テニスコートで知り合った人たちの間でささやかれていたのだが、実際に調べてみて「やはりそうか」と思い知らされた。

 近隣各市の公式ホームページに掲載されている情報によると、小平市12面、小金井市10面、三鷹市14面、東久留米市15面、武蔵野市は7面を保有している。

 西東京市のテニスコートは、面数だけではなく人口比でみても圧倒的な最下位にある。
 東京都総務局統計部発表による各市の人口(住民基本台帳登録)は、10月1日付で西東京市206,156人。仮にこの数字を基に、西東京市のテニスコートが4面として試算すると、1面当たり人口は51,539人となる。ワースト2は国分寺市(コート6面、128,685人)で1面当たり21,447人、ワースト3は東大和市(コート4面、85,151人)で1面当たり21,287人である。

 なお、東大和市は4面全てにナイター照明を備えているだけでなく、通年で朝6時から利用可能である。国分寺市では照明設備は無いものの、夏季は19時まで利用できる。一方の西東京市ひばりアムは照明も無く、通年で17時までしか利用できない。

 西東京市は芝久保コート閉鎖前であっても、1面当たり人口が22,906人で最下位だった。これまでは僅差で最下位だった西東京市が、今後は他の追随を許さない、圧倒的な最下位となる。

 コート数の差は市民大会数にも反映されている。西東京市では市営コートを主に使用して、市民大会(シングルス、男女ダブルス、混合ダブルス)を各種目とも年1回開催している。近隣の小平市は春秋の2回、三鷹市や小金井市は個人種目の他に団体戦も開催している。東久留米市でも人気の高い男女ダブルスは春秋の2回も市民大会を開催し、さらに団体戦も開催している。一方、西東京市では、今後は市民大会の開催自体が危ぶまれるのではなかろうか。

 

老朽化するひばりアムのテニスコート

 

テニスコート

唯一となるひばりアムのコート

 

 残された唯一の市営テニスコート「ひばりが丘総合運動場(ひばりアム)」もUR都市機構からの借地であるが、ここは砂入り人工芝の4面全てで老朽化が進んでおり、全面張り替えしなければ、一極集中使用に耐え得る状態ではない。人工芝は、改修目安となる傷みを超え、摩耗が極限まで進行して大変危険な状態になっている。

 

危険なひばりアムコート危険なひばりアムコート

危険なひばりアムコート

危険なひばりアムのコート(筆者作成)(クリックで拡大)

 

 損傷した部分だけ切り貼りする部分補修(Aコート、Bコート)が施された箇所もあるが、著しい摩耗で既存の芝足がほぼ残っていない地面に、芝足のある新しい補修芝を継ぎはぎしている。これにより、補修部分の新旧人工芝に段差が生じ、転倒する危険性が高い。三重県名張市では、人工芝の補修箇所の継ぎ目に足が掛かって転倒、負傷した事故により、訴訟が起きている(2023年8月、386万円で和解)。

 継ぎはぎだらけとなったひばりアムでも、同様の事故が懸念される。ましてや、ビニールテープによる補修やアスファルトが剥き出しになったまま放置されている現状では、そのリスクは高い。11月上旬に練習試合で来場した小金井市、武蔵野市の代表選手20人からは、「非常に危険だ」の声が相次いだ。

 

抽選の高倍率化、切なる願い

 

 利用者説明会では、都立高校(保谷、田無、田無工科)のコートが紹介されたものの、開放されたのは、猛暑のお盆期間を中心とした僅か年10日程度という実態が明らかになった。また近隣市のコートも一覧配布されたが、いずれも当該市民優先であり、西東京市民にとっては事実上使えない。車が無い利用者や高齢者は、遠くには行けないなどの指摘もあった。

 説明会で代替施設が示されたけれども、これらの状況を考えると、市内に唯一残されたひばりアムのコートに利用希望が集中する事態が想定される。会場で抽選倍率はどれぐらいか、実際に使えるのか、などの質問が出た。

 市の担当者によると、土日祝日の抽選倍率は人工芝で、芝久保第二運動場10.9倍、ひばりアム13.4倍との回答だった。芝久保閉鎖後のひばりアムは20倍前後となるような、現状をはるかに越える倍率となり、何カ月応募しても当選しないプレミアムコートになってしまうのではないか。実際に、2024年1月分の抽選では最大75倍の日が発生している(2023年11月6日時点)。このような高倍率の公共施設は市内に何カ所あるのだろうか。説明会で繰り返された「危機感を持って」「公共施設の適正配置を検討する」ことを、まさに行政にはお願いしたい。

 

テニスコート

MUFG PARKのテニスコートは11面ある

 

 新規施設の整備が難しい状況に鑑み、11面を保有するMUFG PARKとの提携(数面を市民用コートとして借り上げ、または市営コート利用料との差額補助)、ひばりアムの夏季利用時間の延長(芝久保と同様)、ひばりアムへのナイター設備設置など、これまで芝久保第二運動場に要していた年間財源の範囲内で実行可能な具体策を、行政が速やかに提示してくれることを切に願う。特に、MUFG PARKの活用が早急に決定されない場合、危険なひばりアム改修が決まっても、工事期間中は西東京市内のテニスコートがゼロとなる事態が起こる。

 

【関連情報】
・芝久保第二運動場閉鎖のお知らせ(西東京市Web

 

【筆者略歴】
 鈴木麻衣(すずき・まい)
 西東京市在住48年余。小学校4年生の時、旧保谷市のジュニア育成アカデミーにてテニスを始める。全国小学生大会・全国中学生大会・インターハイ・全日本ジュニア出場。2023年より西東京市硬式テニス協会理事。

 

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