書影

◎二種類の「崩壊」論
 師岡武男(評論家)

 社会保障の「崩壊」論には、主張に二つの方向性がある。一つは給付の内容が貧弱になって本来の目的が果たせなくなっていると言うもの。もう一つは少子高齢化とともに給付額が大きくなって、その財政負担のために現行制度が持続できなくなっていると言うものだ。政府や多くの専門家の意見は後者だ。しかしこの本の主張は前者である。社会保障充実で安心、安全の日本経済をつくろうという提唱だ。

100winds_banner01 第34回

師岡武男 (評論家)
 

 物価高の大きな原因として円安があるが、関連して円安は日本経済の国際競争力の低下のためだと言う議論があって、問題を複雑にしている。それらの基本的問題点を考えてみる。

100winds_banner01 第33回

師岡武男 (評論家)
 

 岸田内閣の新しい経済政策がほぼ出そろい、その一部分が補正予算として提案された。日本経済は今の物価高、低所得の不安経済から一刻も早く転換してもらいたいのだが、この政策はその期待に応えているだろうか。

◎「戦争は絶対悪」を前提とした恒久平和のための政策

 師岡武男(評論家)

 日本経済は今、貧困と格差の生活危機が続いているが、岸田政権の下でさらに平和への危機も付け加わっている。非武装、不戦の憲法に反する軍事大国化と他国との軍事同盟の強化が急速に進められているのだ。この動きは安倍政権以来のものだが、その後のロシア・ウクライナ戦争をきっかけに、欧米諸国のロシア・中国・朝鮮への封じ込め政策が強められ、日本もそれに積極的に参加している。自民公明政権は、これを機に軍事大国化と憲法改定を一気に進めようとしているのだ。

100winds_banner01 第32回

師岡武男 (評論家)
 

 岸田首相が、就任1年後の22年10月、国会での所信表明で「構造的な賃上げ」を重点政策として訴えた。立派な政策公約だが、その実現には今どうすればよいか、を考えてみよう。

100winds_banner01 第31回

師岡武男 (評論家)
 

 日本経済の問題点を長年報告したり論じたりしてきて、今96歳の私が一番大事だと思う経済課題は、社会保障の充実である。私自身の生活は、寝たきりの体にならない限り、社会保障のお陰で、独居老人でも幸い何とか暮らしていける。しかし日本全体で見ると、不景気続きのじり貧経済のため生活に困っている人々が沢山いるし、社会保障は抑制のための「改革」がどんどんと進んでいる。恐らく多くの人々が老後不安におびえ、結果として消費節約による不景気経済の悪循環を招いていると思う。この状況を一刻も早く改善したい。

100winds_banner01 第30回

師岡武男(評論家)

 

基本的な仕組み

1:経済とはモノ(財・サービスの実物)を生産して利用する活動であり、人類発生以来の営みである。 2:モノの生産にも利用にもカネ(貨幣)が必要であり、金融経済の制度の役割は大きい。 3:カネは国(政府、日銀)が発行して供給(貸付と給付)する法定貨幣が基本となる。 4:カネは必要なだけ供給できるが、モノには供給力の限度がある。 5:豊かで安心・安全な福祉経済実現のために、これらの基本的仕組みを有効に活用して供給・需要の量的・質的な向上(成長)を図ることが必要。当然ながら完全雇用。

100winds_banner01 第29回

師岡武男 (評論家)

 

30年前と同じ課題

 日本経済にはかつて「生活大国5か年計画」というものがあった。それを振り返ってみると、今や日本は大国どころか「生活小国」になってしまった、と思わざるを得ない。

100winds_banner01 第28回

師岡武男 (評論家)

 

新鮮な標語だが

 コロナ禍とデフレ下の総選挙が終わり、新内閣の政策も与野党の公約も出揃って、政治も経済も新しい段階に入った。

100winds_banner01 第8回

師岡武男 (評論家)
 
 

 政府の政策への反対論があると、政府やその応援団が言う決まり文句は「なんでも反対」ではなく、責任のある代案を出せ、という逆襲だ。これが、世論対策としてかなり有効なセリフだからである。ただし、この論法が役に立たない場合もある。前国会の最大の争点だった安保法案などはそれだ。有力野党は、法案の撤回こそが代案だったからである。

超インフラ論【書評】

災害大国、デフレ大国への対策
師岡武男(評論家)

 今の日本は、大小の震災、水害のひっきりなしの襲来、あちこちで火山の噴火、最大の人災である原発事故の生々しい被害、いまだに先の見えないデフレ経済続きなどで、国中に不安な空気がただよっている。それらをそっちのけにして、政府は武力行使拡大立法にのめり込んできたが、自民党の谷垣幹事長は「安保立法の後は経済対策だ」と語っていた。

100winds_banner01 第7回

師岡武男 (評論家)
 
 

 8月30日の国会前を埋め尽くしたデモの写真を、新聞やテレビやネットで見た人は、まず「凄いな」と感じただろう。年配の人なら「60年安保以来だ」とも思ったに違いない。人数については、主催者発表の12万人と、警察の3万人とは開きが大きいが、各種の調べによると、国会周辺に来た人の延べ人数は12万人が事実に近いようだ。前日には安保法案支持のデモも都内であって、500人程度だったという(讀賣新聞)。人数で民意を計るなら、この二つを比べるべきだろう。

100winds_banner01 第6回

師岡武男 (評論家)
 
 

 経済問題について、明るい話題はほとんど見聞することができなくなった。というより、暗い話ばかりである。生産面では、日本など先進国の停滞と中国など発展途上国の成長頭打ち、分配面では貧困と格差拡大の貪欲資本主義のグローバリズム、それらを包み込んでいる資本主義経済行き詰まり観の広がり―これが今の経済環境だ。

100winds_banner01 第5回

師岡武男 (評論家)
 
 

 [2015年]5月の消費関連経済指標(速報値)を、前年同期と比べて点検してみよう。名目賃金は0.6%増加、消費者物価は0.5%上昇、実質賃金は0.1%減少、実質家計消費支出は4.8%増加となった。この読み方はちょっとややこしい。実質賃金がマイナスになるのは、厚生労働省が物価で割り引く際の物価指数が「総合指数」よりも高い0.7%上昇だからだ。この状況はほぼ4月並みだが、消費は4月よりも大幅に増えた。これは、昨年5月が8%の激減だったためで、消費水準自体は低いままだ。

会議は踊る01

【書評】「どうすべきか」「どう考えるべきか」が浮かび上がる  師岡武男(評論家)

 東久留米、小平、狛江という近隣の自治体の最近の出来事で、人々の関心を引いたはずのものを取り上げ、「何が」「なぜ」起こったかを書いた本。東久留米は前馬場市長とイオン誘致問題、小平は都道建設計画と住民投票、狛江は共産党市長の長期政権などについて「何が、なぜ」を中心に、自治体運営の問題点を追求している。