私の日本経済論―豊かな福祉国家をつくるために

投稿者: カテゴリー: 連載・特集・企画 オン 2022年4月20日

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第30回

師岡武男(評論家)

 

基本的な仕組み

1:経済とはモノ(財・サービスの実物)を生産して利用する活動であり、人類発生以来の営みである。
2:モノの生産にも利用にもカネ(貨幣)が必要であり、金融経済の制度の役割は大きい。
3:カネは国(政府、日銀)が発行して供給(貸付と給付)する法定貨幣が基本となる。
4:カネは必要なだけ供給できるが、モノには供給力の限度がある。
5:豊かで安心・安全な福祉経済実現のために、これらの基本的仕組みを有効に活用して供給・需要の量的・質的な向上(成長)を図ることが必要。当然ながら完全雇用。

6:資本主義は経済制度の一部として重要な機能を持つが、内容は多様で画一ではないので、政策としてこの名称にこだわるべきではない。
7:金融経済肥大化による弊害の是正が必要。

 

現状は低成長、低福祉の長期停滞

 1980年代末期の株価、地価中心のバブル景気崩壊後、日本経済は新自由主義政策が推進され、平成、令和の30年余り、デフレと低成長が続いている。国民の生活は、貧富の格差拡大、貧困者の増加、新型コロナの大打撃などで苦しんでいる。その大きな原因となるのが、国内総生産(GDP)の低成長から脱け出せない経済運営だ。

 低成長とは、具体的に言えば最大の需要要因である消費と投資の停滞による生産の停滞だ。従って両需要の拡大ができればよいのだが、日本経済はこれまでそれができなかった。それはなぜなのかが、根本問題だ。

 消費が増えない原因は、端的に言えばモノが売られても、買わない、買えないためだ。その理由は様々だが、対策は、買いたいものが買えるように、また売りたいものが売れるようになる政策を講じることだ。

 

日本経済再生の可能性と展望

 豊かで安心・安全な福祉経済をつくるための必要条件は
 ①モノ(財・サービス)の生産能力
 ②原燃料資源の確保
 ③共同社会思想による生産と公正分配の政策・制度

 現在の日本は①と②の条件は既にそなえている。
 ①については、デジタル化の遅れなどが問題視されるが、追いつき追い越す可能性が十分ある。
 ②については、購入のための外貨資金は十分にあるが、外国から「売ってもらう」ための対外友好関係を保つことが必要。全方位の友好外交が一番よい。
 従って、経済再生の展望を切り開くための主な課題は③である。

 

具体的な再生政策-最大の障害は緊縮財政

 豊かな福祉国家とは。社会保障と社会インフラの充実を中軸とする福祉型経済の国である。

 福祉国家が目指すのは社会福祉充実のための経済発展だ。経済成長は、生活大国(豊かな福祉国家)をつくるために必要だが、福祉のための需要供給の拡大は、経済成長の大きな要因にもなるはずだ。
 地球破壊なき生産拡大(成長)と公正(社会正義)な分配による好循環実現への経済政策が必要である。

 しかし現状は、公正分配が妨げられ、富が偏在し格差が拡大しているため、経済成長もできないでいる。

 不公正分配の大きな原因は、金持ち本位の自由生産、自由市場体制と金融経済のゆがめられた肥大化にある。

 しかしそれだけでなく、福祉国家への大きな障害として国家財政の制約論(社会保障亡国論など)による、緊縮財政の問題がある。むしろこれが当面の最大の課題と言えるだろう。この問題についてはすでに詳しく言及した。

 

 

【筆者略歴】
師岡武男(もろおか・たけお)
 1926年、千葉県生まれ。評論家。東大法学部卒。共同通信社入社後、社会部、経済部を経て編集委員、論説委員を歴任。元新聞労連書記長。主な著書に2021年2月刊の『『対案力』養成講座』(言視舎)、『証言構成戦後労働運動史』(共著)などがある。

 

 

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