高物価、低所得経済から救民・救国の経済へ 岸田内閣の経済対策への対案

投稿者: カテゴリー: 連載・特集・企画 オン 2023年11月15日

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第33回

師岡武男 (評論家)
 

 岸田内閣の新しい経済政策がほぼ出そろい、その一部分が補正予算として提案された。日本経済は今の物価高、低所得の不安経済から一刻も早く転換してもらいたいのだが、この政策はその期待に応えているだろうか。

 世論調査(共同通信)では、経済対策を「評価しない」が62.5%と高いが、理由はさまざまだ。一番多いのは「今後増税が予定されているから」が40.4%、「財政再建対策を優先すべき」も20.6%あり、「金額が少ないから」は6.9%だった。増税による所得減少への不安が強いのが目立つ。政府が強調する物価対策や賃上げ対策への設問が足りないが、それへの国民の関心は高いのではないか。

 このままでは岸田首相が所信表明で連呼した「経済、経済、経済」の政策は増税、財政再建優先、金額不足のショボイものになって、物価安定、所得底上げとは程遠くなり、経済は衰退を続けるしかないだろう。

 そこで、もっと効果のありそうな、そして実現可能な大型の対案を提案してみたい。

 積極財政によって、値下げと所得増加、公共投資拡大を実現する。具体的には、減税、賃上げ、一律現金給付、国内生産への支援などである。結果的に財政による所得と財産の再分配となるが、経済全体は拡大成長するだろう。。

 この経済対策の根本的手段は、政府と日銀の貨幣発行権だ。その権限を、救民・救国の経済の実現のためにフルに行使する。税金を財源にする必要はない。貨幣発行は当面、国債の日銀引き受けによる。国の生産力に見合った貨幣発行なら、経済にも財政にも不都合は起こらない。日本経済は今その状況にある。

 以上の総論に基づく各論の大筋は次の通り。

 まず物価。物価は、つい先ごろまで2%のインフレが政府の政策目標だったが、今やインフレ抑制が大問題になった。国民の多くが物価安定を望んでいる。政府は「物価を上回る賃上げを」と叫んでいるが、今年の賃上げも物価上昇に及ばないで実質賃金低下が続く。賃上げや所得増加の無い人もたくさんいる。物価安定対策は当然必要だ。

 物価高の大きな原因とされる円安問題への対策。円高にすればそれなりの値下げ効果はあるが、市場経済での円高の基本的効果は貿易での国際競争力の弱化と経済不況である。その犠牲を払って、今円高政策を進めることが正解とは思えない。

 円高にするには、政府によるドル売り円買いのほか、金利引き上げによる金融引き締めがあるが、引き締めは円高効果だけでなく、直接不況要因になるから論外だろう。ドル売りは、政府の外貨準備が、22年末現在円換算で162兆円もあるので簡単なはずだが、米国が望まないのだろうと推測する。

 一番わかりやすいのは、消費税や石油関係課税の引き下げだろう。しかし政府はそれをしない。野党も『れいわ』以外は及び腰だ。消費税の在り方は、物価対策としてだけでなく財源対策としても、政党の真価が問われる最大課題だ。

 所得税や企業への減税では、直接の値下げにはならない。所得税減税について、岸田首相は、「税収増加分の還元」という言葉を創ったが、意味のないごまかしだ。税収が増えれば、予算で国債発行の必要額が減るが、還元論は減税額をその枠内の小幅に抑えるための言葉の魔術だろう。同様に「消費税は社会保障の財源」論もごまかしだ。仮に消費税がゼロになっても、社会保障給付費が自動的に減ることはないのだ。こうした言葉の魔術は官僚のお家芸だ。

 次は賃金。岸田首相は「持続的な構造的賃上げ」で物価を上回る賃上げを目指すと言うが、今春の賃上げも物価に及ばず「持続的な賃下げ」が現実だ。首相が過去の賃下げについてコストカット経済の構造を指摘したのは適切だが、それを克服するための具体策は示していない。

 このコストカット構造は、財界と労働組合の「共犯」によるものだと指摘した学者・ジャーナリストもいる。政府もその仲間だったはずだ。いずれにせよ、構造的賃上げのためには、労働分配率拡大と生産拡大が必要だ。それには労働人口減少による人手不足も役立つだろうが、共犯関係は根強いから、政府の介入が必要だ。財政的呼び水として公的関与のある賃金の大幅引き上げが有効ではないだろうか。

 今年の小幅民間賃上げに連動する公務員賃上げで、特別公務員の岸田首相にも給与引き上げがあることが、世論の批判を浴びるという事態があった。低所得にあえぐ庶民の不満のせいだろうが、もっと大事なことは、一般公務員賃金の大幅引き上げを実現して、民間に波及させることではないか。そのための財源は、増税などはもちろんしないで政府が負担する。公務員の賃上げは、必ず民間に波及するだろう。それが市場競争経済だ。

 生産拡大のために、財政による投資拡大も不可欠だ。その対象は、先端技術産業支援があってもいいが、それ以上に生活必需産業の拡大が必要であろう。それによって、「成長と分配の好循環」が進むだろう。

 

 

師岡 武男
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