記者たちによる津波被害の真相究明 by 兼子義久

 東日本大震災の津波被害を受けた沿岸部の学校は少なくはない。しかし、この本の主題となった宮城県の石巻市立大川小学校では、児童108人のうち74人が、さらに児童を引率した教員も当時学校にいた11人のうち10人が津波に巻き込まれ亡くなっている。学校管理下で亡くなった児童数では、戦後最悪の事故とされる。

「日本の家族」のささやかな幸せが見える by 倉野 武

 

 住宅事情や家庭内の勢力関係から、これまでずいぶん蔵書を処分してきたが、そのなかでも「これは手元に残しておきたい」と死守してきた一冊に、エッセイスト、森下典子さんの『いとしいたべもの』がある。(写真は『いとしいたべもの』と続編の『こいしいたべもの』)

何を食べ、どう生きるか by 道下舞子

 

 フランスで聖書以来のベストセラーと言われる本書。著者は1960年代にパリで歌手として成功した女性だ。自動車事故で瀕死の重傷を負うが、自然療法で回復に至る。壮絶なストーリーと自然食を実践する上での具体的な方法や効能が書かれている。1980年代発行の書物にも関わらず、古びない内容となっている。知人からの勧めで読んだ本書。何を食べ、どう生きるかをあらためて考えるきっかけとなった。

「計画」を成功させる仕掛け by 菊池ゆかり

 

 主人公、マコトこと真島誠は池袋で起こるもめごとを解決するトラブルシューター。『I. 池袋ウエストゲートパーク(W.G.P)』シリーズは外伝を含む既刊18巻。マコトが仲間たちと痛快に悪いやつらをとっちめたり、ママと子どもを救ったりする話が収められている。数ある「事件」のうち、私は『灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパークⅥ』の中の「池袋フェニックス計画」という章が大好きだ。

完璧なプラトニック・ラブストーリー by 墨威宏

 恋愛小説限定で読書会を開いているという友人から「お勧めの恋愛小説、ないですか」と聞かれたことがある。私は浅田次郎の『ラブ・レター』と即答した。浅田次郎がいけなかったのか、「どんな話?」とも「面白いの?」とも聞かれず、「へえ」とだけ。本当は聞いてほしかったのだけれど。今でも恋愛小説の「推し」は『ラブ・レター』だと思っている。この文章を書くために再読したら、また涙腺が緩んでしまった。(写真は、『ラブ・レター』収録の『鉄道員』。右はCDブック)

80年代、クールな衝撃 by 杉山尚次

 『1973年のピンボール』(以下『ピンボール』)は、『風の歌を聴け』(以下『風の歌』)に続く村上春樹の2作目の作品、1980年に刊行されている。前年の『風の歌』はデビュー作でもあり、間違いなく村上春樹の代表作として言及されることが多いが、『ピンボール』はそれに比べると少しばかり影が薄い。村上と同じころデビューしたサザンオールスターズ(78年デビュー)でいうと、「いとしのエリー」(79年)に対する「思い過ごしも恋のうち」(79年)みたいな位置づけといったらいいだろうか。どちらも衝撃作のあとの次作で、佳作なのに代表作にはなれない。どういうわけか私は、そういう作品をひいきにしてしまう性癖がある。

子どもに関わるときに誰でもやさしい大人になれる by 石田裕子

 何年か前に、生協の申し込みリストで見つけた児童精神科医、佐々木正美先生の本。 子育て真っただ中の時に、『子どもへのまなざし』という本を読んでいたことを思い出した。自分の子どもたちは、もうすっかり大人になってしまったけれど、「人を信じ、自分を信じる子どもに」という副題に、目が離せなくなり、思わず申し込みをした。

事実を書きとめる乾いた書法 by 北嶋 孝

「一冊」シリーズの企画が提案されたとき、取り上げる候補作はすぐに何冊か思い浮かんだ。絶版になって忘れ去られる書物が多い中で、『悪童日記』の文庫版はいまも書店で見かける。現役の本なので取り上げるのに躊躇はなかった。

自然がもたらす生きる力 by 卯野右子

 立春を迎えた翌日、光かがやく青空に吸い寄せられて庭にでてみると、マグノリア・ロイヤル(コブシの一種)の蕾が毛羽立ち膨らんでいた。近くの公園でもロウバイが咲き、ウメの花がほころびはじめている。

見えなくても大切なもの by 道下良司

 

 人体の皮膚が切り取られ、内臓が見えている表紙のイラスト、どこか怖い印象をうける。「土と内臓」という書名も内容が連想できず、不気味さを感じる。率直な第一印象だ。

ひとしずくの文化が広げる波紋 by 渡邉篤子

 書店の棚に表紙を見せるようにして置かれていた。  荒れた建物の中でカメラの前に立つ2人の子ども。  ひょうきんな顔をする弟の首に腕を回し、「ちゃんと止まっていなさい」と制しているかのようなお姉さん。その表情はかすかに微笑んでいるが、無防備ではない。大人の表情だ。

冷たい4畳半でふれた青春の一冊 by 川地 素睿

 

 上京して初めての冬、冷たい4畳半のアパートで過ごした。大学受験で気持ちをすり減らしていた2月、アパートのある中野区の宮園書房で定価60円、80ページに満たない詩集『北国』を購入した。井伏鱒二が訳詩した「『サヨナラ』ダケガ人生ダ」の文句に魅かれていたわたしには鮮烈で寂寥感に満ちた詩集だった。(写真は、徘徊していた中野駅前の裏通り)

 

 自分の人生を変えた一冊、心に深く残った一冊、ぜひ勧めたい一冊。自分にとって取っておきの本を紹介する新企画です。毎月第2木曜日に掲載します。(編集部)

 

『生と覚醒めざめのコメンタリー』(全4巻)

 

比類なき人生相談の記録 by 片岡義博

 

 「黄昏時の長い影が、静かな水面の上にあった、そして川は、午後から静かになりつつあった」。この随想録の多くはそんな自然描写から始まる。次に来訪者の様子が描かれる。「彼は快活な人物だった。そしてしきりに知恵を求めていた」というように。