第3回 市内の状況を緊急生放送 安全・生活情報をきめ細かに

 


有賀達郎(FM西東京)


 

FM西東京について

 FM西東京は開局から18年目に入ったコミュニティ放送局で西東京市を中心としたエリアに向けて84.2MHzでFMラジオ放送をしています。2010年からはインターネットでも配信をしているので、パソコンやスマートフォンを使って世界中どこでもリアルタイムでクリアな音質で聞く事が出来ます。

 

2011年 3月11日

 地震発生の時、FM西東京は録音放送の時間でしたが、揺れている中、スタッフがスタジオに飛び込み、すぐに生放送に切り替えて状況を放送。当日はそのままレギュラー番組を変更しながら24時頃まで生放送を続けました。

 幸い停電もなく一部の電話回線が使えたので、西東京消防署や西東京市危機管理室と連絡が取れ、このエリアの状況を放送。また、発生後間もなくスタッフが市内に出て駅前や被害のあったいくつかの場所から15時過ぎには生中継しました。さらに市内のショッピングビルやスーパー、学校、事業所などにも電話取材をして状況を放送。また、ガスが止まってしまったというお宅が多かったようで、各家庭のマイコンメーターの復帰方法を繰り返し放送しました。

 消防署や市役所から西東京市内では大きな被害やけが人はいないという情報を得ていたので、繰り返し市内や周辺は安心出来る状況だと放送しました。後で聞いたのですがこの事がとても役に立ったそうです。それは、新宿の高層ビルで仕事をしていたFM西東京のボランティアスタッフが、自分のところは大きく揺れたが、子どもを預けている西東京はどんな状況か不安で、仕事中のパソコンを使ってFM西東京の放送を聞いて、西東京市辺りは大きな被害はないということを確認。それもいつも聞き慣れているFM西東京のパーソナリティの声で聞けたのでとてもホッとしたとのことでした。

田無駅北口前

【震災当日、西武新宿線田無駅北口前に集まった人びと。FM西東京の横山裕貴さん撮影 禁無断転載】

 

 ツイッターでも放送と同じように情報を発信したので、都心で仕事をしていた西東京市民の方がツイッターで西東京市は被害が少ないという様子を知り、家族は大丈夫だろうと安心出来たと後日話してくれました。

 FM西東京には西東京市直結の無線FAXが配備されていて、このFAXからは公民館で帰宅困難者を受け入れているという情報を得ることが出来ました(この無線FAXは市内の公共施設や公共機関に配備されています)。

 また、夜遅くなって新青梅街道を歩いて帰ってくる方々に向けて、局舎の前に貼り紙で西武線は運転再開しましたとご案内しましたが、最寄りの駅にどうやって行くのかというのをご存知ない方が多く、口頭で花小金井駅を案内するようなこともずいぶんありました。

 

その後~これからがコミュニティFMとしての役割~

 毎日、計画停電、電車運行情報だけでなく、スーパーやガソリンスタンド、バスの運行情報などスタッフが手分けして連絡を取り、情報を集めて地元の生活情報を放送しました。放送の内容としては、いつも大型小売店では「米、水、パン、トイレットペーパーがない、明日は少しは入荷しそうだ」というような情報が続いていました。そこで地元の小さな食品スーパーに電話をしたところ「うちはたくさんあるよ、昨日も夜遅く帰ってきたサラリーマンが、『弁当がある、お米が食べられるんだ』と言って喜んでいたよ」という情報をもらうことが出来ました。

 そのスーパーの社長によると「大手と違って普段から数多くの問屋と付き合いその時々に合わせて仕入先を選んでいる。だから今回も付き合いのある問屋を廻って仕入れられた」と話してくれました。他にも小規模な小売店に聞くと、わりと商品があるようで「常連のお客さんに聞かれると奥から出してくる」と話してくれました。

 震災の翌週の土曜日は暖かく穏やかな日でしたが、何か手伝いたいと集まったボランティアスタッフの一人が、自転車で廻って周辺の様子を伝えるよと言って出掛けて行きました。大型自転車販売店はとても多くの客が来ているとか、屋根にブルーシートが掛かっている家が多いところがあるなど、街の状況をツイッターで伝えてくれ、それを放送しました。

 その中で家族連れがたくさん来ていてとても楽しそうに遊んでいるという小金井公園からのレポートは、非常事態の真っ只中で周りが見えにくくなっている我々に、日常生活はちゃんと動いていると、こわばった肩の力を少し抜けるような気持ちにさせてもらったのを覚えています。

 その後3月末には大船渡に実家があるFM西東京スタッフが現地に帰ってきた様子や、このエリアの方で被災地で活動してきた方々にスタジオに来ていただき、現地の状況を放送することも出来ました。

 

見えてきたこと~シンプルなメディアとしてのラジオ~

 こうして我々はラジオ放送を続けてきましたが、改めてラジオのシンプルさを実感しました。目の前にある事をそのまま原稿にしないでも伝えることが出来る、手伝いに駆けつけてきてくれたスタッフが電話などで取材してくれたメモがあればそのまま伝えられる、ベテランでなくても取材や発表が出来る、など情報を得てから発信するまでに少ないステップでそれほどスキルがなくても信頼出来れば業務が成り立つというメディアだということです。

 また、電話を掛けるとか自宅周辺のことを伝えるなど、いろいろな形で一緒に放送を組み立てていけるということも、シンプルだからこそ出来ることだと思います。そして、それは我々コミュニティFMは普段から多くの方々の力で成り立っているということで、それは直接的なスタッフだけでなく、リスナーの方々や市民みなさまの力も含まれています。

 被災地へラジオを送ろうという呼び掛けをした時には、チラシを市内の印刷会社が格安で印刷。市内の配送業者が販売店に届け、市内の全新聞販売店が新聞に折り込んで、という市内の協力体制もありました。FM西東京までラジオをお持ち下さった方の中には新品を購入して電池も探して買って来てくださった方や、親子連れでいらしてくれた方もいらっしゃり、お預かりした100台以上のラジオを被災地に送る事が出来ました。

 

これから~メディアの連携~

 ひばりタイムスをはじめとして、紙媒体、テレビ、ラジオなど情報発信機能を持つこのエリアのメディアが連携して情報を共有し、それぞれの特長を活かし補完しあって市民の方々のお役に立てる事に意味があると思います。またネットを活用する事でこのエリアの情報をこの地域の外へも素早く伝える事が出来ます。多くの方法で情報が流れる事でより多くの方に伝わり、また伝わった人からはメディアと接点のない方へ口頭で必要な情報が届くようにしていける体制が出来ると思います。FM西東京は、 この街のメディアの連携、そして人と人とのつながりを活かすことを常日頃から続けていきたいと思っております。

 

【筆者略歴】
有賀達郎(ありが・たつろう)
 1950年(昭和25年)東京生まれ。東京都立大学卒業後、株式会社文化放送で、営業、制作、報道とラジオ放送の現場で16年間勤務。その後自営業を経て、1997年9月よりエフエム西東京の開局準備に携わり、そのまま現在に至る。2007年6月から代表取締役。
 西東京市でラジオ放送だけでなく、人のつながりやメディア同士のつながり、エリアのつながりを心掛け、FM西東京がこの街でお役に立てるように様々な連携を意識して活動中。

 

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第3回 市内の状況を緊急生放送 安全・生活情報をきめ細かに」への2件のフィードバック

  1. 蔵野雅章
    1

    有賀さんへ 素晴らしい取り組みをされていたのですね。災害時には大いに役立つことと思います。震災時にかぎらず、日常生活の中でもこうしたスタイルでFM西東京が存在感を発揮されればと思います。どうしても音楽とかが中心のイメージがあり、生活情報として、NHKニュースを視聴する感覚でFM西東京を聴く習慣が西東京市民に定着できる工夫ができないのかなと思いを巡らせます。蔵野雅章

    • 2

      蔵野さん、ありがとうございます。
      そうなんですね。FM西東京は音楽ばかり・・・。
      確かに喋りが少ないなと思うので、もう少し何か出来ないかなと思っております。
      また、最近こうしたネットやSNSではかなりのアクセス数があるので、ネットからラジオへのつながりを探っていきます。
      ご指摘ありがとうございます。
      これからもよろしくお願いいたします。

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