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J・ワース著『来て! 助産婦さん』

By in 書評 on 2017年10月18日

【書評】

たくましく生きる人々の貴重な記録
野洲修(西東京市在住)

 英国ロンドン東部のスラム街で1950年代、修道院に所属する助産師として働いた女性が、当時を振り返った実話である。2002年に英国で出版され、12年には国内ノンフィクション分野で最も多く読まれたという。

 我が家は、娘が2人とも助産師のお世話になって生まれた縁があり、興味深く読み始めた。専門家の目を通した出産の細かな描写には、心を揺さぶられる。強烈な陣痛、不安と緊張、産声、赤ちゃんと向き合い涙ぐむ母親の表情-。あわせて、著者が仕事を通して出会った人々にも引き込まれた。

 極貧の中、望まない妊娠をした15歳の少女。スペイン出身で英語を理解しない妻と、英語のみ話す夫との間に25人(!)の子をもうけ、円満に暮らす家族。自宅出産の現場を探し出しては、赤ちゃんの様子をしつこく著者に聞き出す、不潔な身なりの老女。異なる人種の男の子が生まれたが、妻の不義を責めるどころか、気づかないふりをして大切に育て続けた夫…。

 福祉も衛生環境も不十分な時代、しかもスラム街である。出産現場で起こる数々の困難を、同僚助産師たちは、機転やユーモアで乗り越えていく。そのたくましい姿にはホッとさせられた。

 前書きにこうある。98年に発表された論文によれば、欧州の文学という文学を調べたところ、助産師が登場する作品は見つからなかった。助産師は、医師や看護師と同じく身近な存在なのになぜ? 助産の現場はドラマチックなのになぜ? 著者はこの論文に触発を受け、助産師の仕事を多くの人に伝えたいとの思いから、本書の執筆に踏み切ったという。

 周産期医療に携わる人はもちろん、幅広い層に手に取ってほしい。エピソードの数々は、助産の仕事紹介にとどまらないからだ。妊婦のいる家庭内に入り込み、健康指導を重ねたり出産にかかわったりする助産師は、飾り気のない庶民の暮らしに触れてきた。研究者が書いた本にはまねのできない、明るくたくましく生きる人々の貴重な記録にもなっている。

 訳者9人は全員が大阪大大学院に学んでいた助産師。自身と同じ職の先人が書いた、助産師の物語という点に興味を抱き、読み始めたという。
 (編注)注文は、クオリティケア社HPの>>注文ページから。

 

【書籍情報】
書名 『 来て! 助産婦さん』(Call The Midwife: A True Story Of The East End In The 1950s, by Jennifer Worth. 原書購入はamazonへ)
著訳者 ジェニファー・ワース著、土屋さやか、ほか訳
定価 2500円+税
ISBN 978-4-904363-51-5 C3047
出版社 株式会社クオリティケア(HP

 

 

 

 

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