連載「西東京 帰り道 ~濱口太のフォトレッスン~」第1回 思いがけない出会い

投稿者: カテゴリー: 連載・特集・企画 オン 2020年4月23日

 

 スマートフォンが行き渡り、誰もが写真を気軽に撮る世の中になりました。撮った写真はSNSにアップして、見た人たちと一緒に楽しめます。ところがどっこい。シャッターを押せば写真は映るけれども、なるほどと思える写真は意外に少ないはず。西東京市在住の写真家濱口太さんが市内の風物、人物を撮った写真を取り上げ、その成り立ちを明らかにしながら、撮影に役立つノウハウや隠れた手法、現場の裏表を軽妙洒脱に語ります。(編集部)

 

【撮影データ】iphone8「押すだけ!」でスマホ任せ!(下保谷三角山跡地)

下保谷ふれあい歩道橋(01)

 帰り道というテーマで写真を撮っているが、「よい写真撮ろう!」と意気込んで、首からニコンをぶら下げて狙うと、イマイチおもしろくない写真ばかり撮れてしまうことが多い。邪念邪気の塊になっているから、ポイントを見落としているのだ。
 しかし何も考えず、夕方ふらふら歩いていると思いがけない景色を見つけることが多い。この写真もポケモンを探しに出た時に、撮影した写真なのです。
 撮影なんて偉そうなこと言いながらカメラを持っておらず、この写真はスマホで撮影した。ま、そんなことは言わなきゃわからないし、「暮れ落ちた空と街が同じ明るさになったとき、人は日常に戻っていく。そんな瞬間をカメラに収めました」とか言っておけば、それなりの写真にみえるのです。

【ポイント】
 夕日が沈んだあたりの時間をうろうろする。通行人。

 

【撮影データ】Nikon D4 レンズ 300ミリ 絞り f4 シャッタースピード 1/90 ISO 1600(下保谷森林公園近く)

 北町(02)

 北町の倉庫街に撮影機材を運んだ帰り、夕日の紅が残っていたので、ここぞとばかり車からニコンを取り出して300ミリの望遠レンズを着装して、ちょっと本気モードで構えてみる。
 望遠レンズの良いところは何と言っても圧縮効果! 前後の距離感をグッと縮めることで、自然な回廊ができる。しかし、良いタイミングが来なくてレンズを覗き続けること10分。自転車を押す人とこちらに向かってくる人が、良い良い! おまけに対向車のライトが上手く差し光になっていてストーリーを作ってくれた。
 ファインダーを10分以上覗き続けることは一眼レフでは簡単だが、ミラーレスでは目が焼ける。プロがミラーレスをあまり信用しないのは、こんなところにもあるのです。

【ポイント】
 一にも二にも、待つ。

 

【撮影データ】iphone8(西武柳沢駅南口)

 ツインガスタンク(03)

 西東京名物「ツインガスタンク」を柳沢駅から見る。
 「空の青にガスタンクがシュールだな〜」とのんびり見ていたら、キャリーバッグを引っ張る一般人確認! あ、カメラが無い! しかし慌てることは無い。こんな時のスマホ! 弘法筆を選ばずと言うではないか。すかさずスマホで連写!
 そんなわけで、旅立ちのような帰り道の写真が撮れたわけです。

【ポイント】
 ガスタンクとヘッドライトと通行人。

 

【撮影データ】NikonD4 シャッタースピード 1/30 絞り F4 感度 800(保谷駅南口)

 ベデストリアンデッキ(04)

 帰り道の写真を撮るなら、夕方の駅周辺に行けばなかなか良い状況に出会える。ってまあ、殆どが帰宅時間なのだから当たり前! そんな中で狙うべきは、歩く人の方向。同じ方向に向かって歩いていることが帰路を印象付けるポイントになるのです。
 さらに空の青と紅が拾えたら完成だ。
 しかしこれが、まだ明るい時間だと「西東京出勤路」になってしまうから気をつけて!! 出勤風景の写真ばかり集めたら、憂鬱(ゆううつ)な気持ちになるよ〜。

【ポイント】
 歩く方向。通行人。

 

 

【筆者略歴】
 濱口太(はまぐち・ふとし)
 西東京市在住の写真家。六本木のスタジオフォリオを経て、ファッションカメラマン袋谷幸義氏に師事。1995年に独立後、雑誌、ウェブなどで活躍。フード撮影では佳川奈央、ポートレート撮影では河村フォトン名義で作品を発表している。地元の風物を記録する「西東京百姿フォトコンテスト」や写真集を企画した主要メンバーの一人。

 

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連載「西東京 帰り道 ~濱口太のフォトレッスン~」第1回 思いがけない出会い」への3件のフィードバック

  1. カワジモトエ
    1

    うれしい記事です。なんだかいいですね。ニコンはプロ仕様で手が届きませんが。スマホは、ブレッソンのような決定的写真にいいかもしれないですね。

  2. 2

    ガスタンク余りもシュール。いつも見ている風景なのに

  3. 3

    一枚ずつ写真を見ていると、何故か色んな情景が目に浮かび泣けてきます。
    子供の頃だったような、昨日のことだったような。。

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