西東京市の「バラの園」閉鎖 つぼみはすべて切り落とし 保谷町ローズガーデンとはなみずき公園
「保谷町ローズガーデンとはなみずき公園のバラ園は5月2日から6月中旬まで閉鎖します」-。西東京市が4月30日、ホームページ上でこう発表した。「新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため」だった。バラの見ごろは5月中旬からというので、しばしの別れを告げようと5月1日と2日、二つの公園を回った。ところが両園のバラのつぼみは、すべて切り落とされていた。
ローズガーデンは保谷町5丁目の住宅街にある。280平方メートルの敷地に、約150品種のバラが咲き、訪れる人も多い。市の直営の公園だが、バラの栽培、手入れなどはNPO法人「西東京花の会」が一手に引き受けてきた。
1日の午後2時すぎ、迷いながらやっと公園に着いた。南北のゲート付近に色とりどりの花は咲いているけれども、園内がどこかがおかしい。人影がないだけでなく、緑一色なのだ。近寄ってよく見ると、バラの棘は見える。しかし枝先につぼみがない。園内のほぼ全てのバラの木は、枝先がつぼみごと切り落とされていた。
年輩の女性が入口で足を止めた。話しかけると、この近くに住み、以前は花の会に所属して、芝久保町にあったバラ園の手入れもしたことがあるという。つぼみや花がないと知らせると門前に来て「まあ、ほんと。みんな切っちゃったんだ」と驚き、「でも、バラには人が集まるからねえ。2、3週間したら、次のが出ますよ」と慰めてくれた。
はなみずき公園のバラ園に着いたのは1日午後3時を回っていた。すでに閉鎖の掲示が張りだされている。工事用の赤いセーフティーコーンに黒と橙色の縞模様のバーが設置され、前倒しの閉鎖状態になっていた。こちらはいこいの森公園などとともに「西東京の公園・西武パートナーズ」の指定管理。ここのバラも、ローズガーデンと同じく「花の会」が世話している。
2日から閉鎖のはずなので、ちょっと失礼してバーの脇をすり抜け、園内へ入った。チューリップの赤い花が目立つけれども、ここでもバラの枝先はほぼ切り落とされていた。
市のみどり公園課は「(バラの)花が咲いていると、外からでも見え、人が集まります。人命に関わる大事なので、花の会さんとも話し合ってバラのつぼみを切ることにしました」。
ローズガーデンのつぼみ切り落とし作業は前日の4月30日午後と、5月1日午前に実施。同日午後3時半ごろから、ゲートにロープを掛け、閉鎖したという。
実際に切り落としを担当したのは、花の会内のボランティアメンバーだった。理事長の小山田勇治さんも残念な気持ちを隠せない。「だって、咲かせるために手入れしてきたんですから。その寸前に切るのは本当に残念です」と言う。しかし事情も分からないではない。「(ローズガーデンは)住宅地だし、人が集まりますからね。(バラの)花を咲かせないでほしいと市に電話してきた人もいるそうです」と言いつつ、「いま切っても、つぼみは2、3週間で出てきます。二番花は2ヵ月も経てば咲きます。いろんなバラがあって、年中咲いています。外出できるようになれば、いつでも楽しめますよ」。
閉鎖開始日とされた2日午後、再度保谷町ローズガーデンを訪ねた。南北のゲート前に建設作業用のバリケードが置かれ、ゲートはたすき掛けにロープが張り巡らされている。文字通りの閉鎖だった。江戸時代なら「閉門」か。刑罰、処分の一つで蟄居付き。「確か、閉門は竹矢来だったよなあ」。そんな詮もない妄想が頭をよぎった。
(北嶋孝)(写真は筆者撮影)
【関連情報】
・【閉鎖】保谷町ローズガーデン及びはなみずき公園(バラ園)の閉鎖について(4月30日)(西東京市Web)
・保谷町ローズガーデン(西東京市Web)
・NPO法人西東京花の会(HP)
・保谷町ローズガーデン(保谷町ローズ倶楽部)
花の女王であるバラさえも、コロナは奪ったしまいました。花の首を切ることは、つらい行為だと思います。人間の命を助けるためにいたしかたなく。バラを復活させるためにも、さらにウィルス感染拡大防止に協力しなければ。