Print This Post Print This Post

いま日本に必要なこと―二大不安をなくしましょう

By in コラム・百音風発 on 2020年5月17日

100winds_banner01
第20回 師岡武男 (評論家)

 このままでは、日本は安全と安心を持てない国になってゆきます。
 国のカネをどんどん使って、災害と貧乏から脱け出しましょう。
 政府・日銀は問題解決への打ち出の小槌を持っています。生かすのは政治の力です。

 いま日本国民の生活を揺るがしているのは、大きな天災と人災によるコロナ不安とデフレ経済不安の二つでしょう。この二つの不安がなくなれば、世の中はぐんと明るくなるに違いありません。個々人の人生には、不安も不幸もたくさんありますが、それを克服する社会基盤を作るのが政治の仕事です。そのことを、人々が声を挙げて政治に要求し、積極的な財政金融政策の実現を図ることが必要だと思います。

 

コロナ対策、禍を福となす

 

 まず、当面のコロナ不安です。つい最近今年になってから降ってわいた大問題ですが、社会的な対応についての、私の問題意識は別記(「コロナ不安への社会的対応について」)の通りです。なお、個人的な対応については、私自身の高年齢を考えて「三密」回避の規制を守るなどして感染防止に努めるほかないと思っています。

 コロナ災害は世界的な大事件であり、被害の程度も収束の時期もまだ見当が付きませんが、日本の医療体制、公衆衛生体制が貧弱であったことは、はっきりしました。日本だけでなく世界全体の問題でもあります。

 そのなかで、日本の現状は幸い死亡者が比較的に少なく済んでいます。原因はまだわかりませんが、この先感染拡大を防ぎ治療体制を強化すれば、被害の拡大をかなり防ぐことができそうです。そのために必要な対策には、何よりも国費を惜しみなく注ぎ込むことが肝心です。今回の事態で、疫病という災害の防止対策に国のカネを出し惜しんできたことを反省し、災害対策全体の充実を進めることで、禍を転じて福となしたいものです。

 

デフレ不安は最大の経済問題

 

 コロナ対策と併せて、国のカネの注入増加が緊急に必要なのが、デフレ不況対策です。実はこれが、コロナ以前からの最大の財政政策の課題でしたが、コロナ対策と重なり合って、一層大きな課題になりました。それを総合した政策が25.7兆円の補正予算でした。しかしこれでは足りないことが明らかなので、政府も第二次補正予算の準備に入っています。

 今後の財政出動の大問題は、その大きさと財源対策です。私の言いたいのは、日本経済を災害と貧乏の不安から脱け出させるために必要な財政資金は、どんどん使うべきであり、その財源に心配はない、ということです。しかし財源問題は、これまで長年にわたって、「財政危機」論によって「小さな政府」のための緊縮財政政策がとられてきました。この財政危機論は根深いもので、40年前に大平内閣が一般消費税を提唱して以来の大蔵省(現財務省)の頑固な主張です。

 

100兆円の第二次補正予算提案

 

 安倍首相は第二次補正予算の編成に当たって「雇用と暮らしをなんとしても守り抜く。そのために一段の強力な対策が必要」(5月14日)と言明しました。しかしこれまで、雇用と暮らしを守るために提唱されてきた多くの財政出動案はことごとく無視されてきました。今度こそなんとしても実行しなければならない事態です。

 どの程度の補正予算が必要でしょうか。一案として、自民党の安藤裕衆院議員らによる「日本の未来を考える勉強会」の提言(5月1日)があります。その内容は「コロナ感染症の拡大を全力で防ぐとともに、コロナショック以前の国民生活、雇用、経済力、および生産能力維持」を目標に、第2次補正予算は「機動的な財政出動のため、真水で100兆円の枠を設定し、財源は全額国債を充てる」というものです。その具体策が7項目書いてあります。そのほかに、アフターコロナの経済のV字型回復のために「消費税0%」もタブー視せずに積極的に検討することを付け加えています。野党からは、れいわ新選組が4月6日、コロナ緊急提言として「100兆円規模の財政支出と消費税1年間ゼロ%」などの提案を出していました。

 

国債大増発、財政はびくともしない

 

 第一次補正予算は、全国民に10万円給付などで25.7兆円の国債を発行するという、前代未聞の大規模な財政出動でした。財政危機論の一角が崩された感があります。従来なら、バラマキ財政とか財政破綻とかの悪評がマスメディアに氾濫したに違いありませんが、今回は不気味なほどの沈黙ぶりです。従来の誤りを反省してのことなら結構ですが、第二次補正で試されるでしょう。

 第一次補正の大きな国債増発で「財政破綻」が起こることはないでしょう。安藤議員らの第二次100兆円補正案がそのまま実現しても、日本の国家財政はびくともしないはずです。そもそも財政破綻とは、具体的にはどんな事態を言うのでしょうか。説明されたことのない、おまじないのような言葉です。財政破綻などありえないのは、政府・日銀には通貨発行権という打ち出の小槌があるからです。

 

安全と安心の福祉型成長へ

 

 財政破綻論の大本山財務省の麻生大臣は5月12日の記者会見で、国債の追加発行による財政への信頼不安についての質問に「メディアも財務省も狼少年だ」と軽く切り返しました。財政破綻論への思いがけないな反論です。リーマンショック時に首相だった麻生氏の本音でしょう。

 第二次補正予算編成をめぐる政策論で、政府・与党も野党も、自然災害とデフレ不況の国難から日本経済を救い出すための政策能力を問われることになるでしょう。安全と安心の確保される福祉型の成長経済を目指して、競い合ってもらいたいものです。
(了)

 

 

【別記】コロナ不安への社会的対応について

 

1 予防ワクチンがない現在、集団免疫獲得のために適度の感染拡大は必要、というのが感染症対策の通説のようだ。しかし、感染拡大は死亡者拡大を招く危険があるので、拡大防止を軽視することはできない。拡大防止対策は、社会的な「三密」の回避策などだ。

2 感染拡大が速すぎると、医療崩壊の事態を招く恐れもある。国の準備体制次第だが、日本は医療体制貧弱のためか、PCR検査の抑制などによって、拡大を隠してしまう政策をとったようだ(ただし死亡数が比較的に少ないことは、嘘ではないだろうが)。
しかし拡大はかなり進んでいて、一部に医療崩壊の危機感が強まっている。

3 三密回避の手段として、感染者の隔離徹底が有効であり、無症状、軽症者も在宅でなく病院、ホテルなどの施設に収容して保護するのが最強かもしれない。
まず感染者の確認のために、検査(PCR、抗体の二つ)の充実が必要だが、日本ではきわめて不足している。隔離の徹底にも検査にも、多くの財源が必要だが、政府にその用意がない。
 それらの拡大減速対策不足の結果、日本での感染は現在じりじりと拡大している。しかしまだ「速すぎる」という状況でもないようだ。

4 逆に、三密回避対策が行きすぎることもよくないだろう。
 その場合、いつまでも集団免疫が獲得できず、感染拡大が収束できないからだ。
 減速対策としての、地域や経済活動などの封鎖による三密回避策が行きすぎると、経済や社会生活が崩壊してしまう。適切な規制緩和が必要だ。スウェーデンは大幅な緩和戦略をとったというが、成果はまだはっきりしない。日本の緊急事態宣言は、遅ればせの三密規制強化であり、感染拡大が減速しつつあるところだ。この政策は5月末まで延長された。

5 三密回避により感染速度を適切な速さ(遅さ)に調節することが必要だとしても、具体化は容易ではない。多かれ少なかれ、それによって生ずる国民生活や経済活動への負担は、国家財政による十分な援助が必要だ。

6 当面何よりも優先すべき対策は、重症者と死亡者を増やさないことだ。そのために政府はあらゆる政策を集中すべきである。
 しかし現在までの対策は、あまりにも遅すぎる、小さすぎる。基本的な原因は、財務省を金縛りにしている妄執的な財政破綻論である。この妄執の壁は、政治の力で突破するしかないだろう。日本の現状で、コロナ対策や経済支援による財政破綻はあり得ないことだ。
(2020年5月9日)

 

【筆者略歴】
師岡武男(もろおか・たけお)
 1926年、千葉県生まれ。評論家。東大法学部卒。共同通信社入社後、社会部、経済部を経て編集委員、論説委員を歴任。元新聞労連書記長。主な著書に『証言構成戦後労働運動史』(共著)などがある。

 

 

(Visited 260 times, 1 visits today)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA