線路沿いに咲くバラ【Photo歳時記】
西武池袋線のひばりヶ丘駅近くの線路沿いに、赤いバラが咲いている。大型連休も残り少ない5月4日の午後、カメラをぶら下げて撮影に出掛けた。4月末から3回目。もちろんマスクに野球帽、サンダル履き。普段なら不審に見られる風体なのに、緊急事態宣言下のいまは珍しくもない。周辺の人出は普段の休みとそう変わらない。
線路際のバラを見ると、根元はポリバケツに入っているではないか。伸びた枝は鉄柵に紐で縛り付けてある。だれが運んだのか、結わえたのか。電車が通るたびに枝葉が揺れる。先端のバラも風圧に押され、花びらがこぼれそうになるほど大きく動く。
手前に真っ赤なバラ。動く電車を背景にして連写する。100メートルほど先の駅構内を望む構図も押さえた。電車とバラの組み合わせはありきたりすぎるかと思いつつ鉄柵の支柱に近づくと、塗装が剥げ落ち、焦げ茶の鉄錆が浮き出ている。これこれ。傷んだ花びらの先っぽも外してはいけない。花が萎れても、似つかわしい居場所を記録したい-。妄想を掻きたてながら、線路北側の道路を小1時間ほど徘徊した。
(北嶋孝)
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