「わくわくアワー」で「イベントおばさん」奮闘 下宿地区会館が「地域社会の活動拠点」になるために

投稿者: カテゴリー: 暮らし オン 2022年4月4日

昭和の名曲イントロクイズ

 「あっ、BINGOになった!」
  3月の第4日曜日、下宿しもじゅく地区会館で「昭和の名曲 イントロクイズと心で歌いましょう」が実施された。14人の方が集まって、昭和の名曲によるBINGOゲーム(カードの縦横斜めのいずれかに〇が全部つくと上がり)を楽しんだ。

 バイオリンで曲を弾いて下さった喜多さんが前もって昭和の名曲を75曲選別し、曲名を法則性なく振り当てたBINGOカードを作成してくれた。当日は、曲を無作為に弾き、観客に曲名を当ててもらう。当たらなかった人もカードにその曲名があれば、〇を付けることができる。曲名が分かっても、カードにその曲名が無い人は、〇を付けられない。最終的に6人がBINGOとなった。

 

BINGO

斜めに一列になったBINGOの例

演奏中

BINGOしている様子

BINGO

演奏中

 

 「豪華景品」と銘打ったが、100円均一で購入したクリアファイルを2枚ずつ包装したものやスーパーで購入した5個入りティッシュを1個ずつ包装したもの。バイオリンを弾いてくれた喜多さんに差し上げたお礼も「豪華景品」2つ程度。参加者から徴収した100円の浄財で賄っているため、これが精一杯なのだ。

 残り時間5分ほど、用意した歌詞カードの中から、美空ひばりの「愛燦燦」と坂本九の「見上げてごらん夜の星を」を、皆でマスクしたまま、小さな声もしくは心で歌ってお開きとした。コロナ禍なので、大声で歌うのは、憚れるからだ。参加者からは、概ね楽しかったと言ってもらえた。

 

1月は新春カルタ大会、2月は落語と手品

 このイベントは、「わくわくアワー」と称し、原則毎月第4日曜日の午後2時から1時間程度実施している。1月には「新春カルタ大会」、2月には「落語と手品」を開催した。新春カルタ大会では、私が主宰し、市民100人以上が参加して作成した「西東京市カルタ」を使った。2回実施し、合計点の一番多い人と一番少なかった人に「豪華賞品」を差し上げた。

 「落語と手品」では、保谷落語会のほら吉さん「初天神」と寝太郎さん「寝床」、ミラクル松崎さんの「手品」を演じて頂いた。お子さんが二人来られていたので、手品のお手伝いをしてくれ、会場が和やかになった。出演者にも「豪華な品」で謝意を示した。実は、どれも使い捨てカイロ10袋。

 

保谷亭ほら吉さん

保谷亭ほら吉さん

保谷亭寝太郎さん

保谷亭寝太郎さん

ムッシュ松崎さん

ミラクル松崎さん

 

さんざんだったカルタ大会

 このように紹介してくると、とてもスムーズにイベントが実施されているように見えるかもしれないが、実態は、ボロボロだ。一番難しいのが集客。特に第1回目は、知人に声をかけたものの、4人しか集まらず、カルタをやるには、どうしても10人以上が必要。そこで知り合いのデイサービスの方が遠足のような形で利用者さんを参加させて下さるというので、渡りに船とお願いした。

 ところが、皆さん、ご年配の方ばかりなので耳が遠い。最初の説明の時には、頷いて下さっていたので、カルタづくりの経緯やカルタ取りのルールは、理解して下さったものと思っていたら、大きな勘違いであった。普段の会議では、十分声が通る程度の部屋なのだが、読札が聞き取れない。施設のヘルパーさんが「りんごの‘り’」とか「みかんの‘み’」とか、良く通る声で一つひとつ言い直してくれてなんとか進めることができた。

 

カルタ大会

カルタ大会の様子

 

 「あなた、マスク外したら」とまで言われてしまった。私がお願いして参加してくれた方は、少し若いので、自らはカルタ取りに参加せず、ヘルパーさんの役割をすることになってしまった。「西東京市カルタ」は、新しいカルタだし、皆さんに西東京市のいろいろな名所を知ってもらいたくて作成したので、読札の意味を味わって欲しいと、「読札を全部聞いてから絵札を取って下さい」というルールにしたのだが、そんなルールはお構いなしで、さっさとカードを集めてしまう方もおられる。

 西東京市カルタについては、公民館の出前授業として、複数の小学校で2・3年生を対象に実施してきた。生徒たちの感想文では、「西東京市のいろいろなことが分かって面白かった、今日は帰ってからお母さんに教えてあげたい」など、一つひとつのカードの意味を理解してくれたり、絵札の素晴らしさに感動してくれたりと手ごたえを感じていたのだが、見事に打ち砕かれてしまった。この教訓から、観客には高齢の方が多いことに配慮し、2月からは、マイクを用意することにした。

 

難しい集客

 地区会館は、地域住民と利用者の代表からなる管理運営協議会(以下協議会)が市と受託契約を結び、市から予算を頂いて運営している。財政が厳しいなかで、予算の拡大は難しく、新たな事業を予算化しにくい。ただ、条例の目的に合っていることなら、協議会が自主的に事業をすることが可能だ。そこで、「わくわくアワー」は、観客から100円程度の浄財を得て、それをチラシ作成や景品などの経費に充てる形で実施する自主事業として認めてもらった。

 市に対しては、ややゴリ押し的な形でスタートさせたこともあり、「わくわくアワー」をそれなりに成功させたいと心は焦るものの、なかなか人は集まってくれない。ポスターを地区会館以外にもお願いして掲示してもらい、チラシを利用団体に渡し、近くの自治会に回覧してもらうも、出足は遅い。第2回目からは、チラシ250枚ほどを担当エリアにポスティングした。事務スタッフには、コロナ禍なので予約制にしたため電話の受け付け、チラシやポスターの製作、終了後の小銭の管理など仕事を増やしており、これ以上仕事を増やすことはできない。メタボ解消と思って自ら担当地域にポスティングした。

 この事業を始めるにあたっては、健康麻雀仲間が趣旨に賛同してくれ、「地区会館盛り上げ隊」としてお手伝いしてくれる約束を取り付けた。落語の時には、白板をアクリル板に取り換えたものやマイクのアンプなど重いものを運ぶ手伝いをしてくれ、イントロクイズの時には、観客にもなってくれた。しかし、日曜日でもあり、孫たちとの約束などもある年代だ。出来る限りは、言い出しっぺの自分がやろうと思っている。

 

地域社会の活動拠点になっているのだろうか

 なぜ、こんなことをやっているかというと、私が代表をしている下宿地区会館の知名度が低いことによる。この会館には、ロビー機能がなく、地域の人たちがふらっと立ち寄れる雰囲気がない。

 利用するには、4人以上での申請が必要で、既に利用している団体の方たちは、三味線、二胡、ウクレレ、バラライカ、篠笛、詩吟、書道、英会話、フラダンス、着付け、玉すだれ、工芸、エクササイズ、ヨガ、気功、体操、健康麻雀、輪投げなど多彩な趣味を楽しまれている。施設利用という面では、これで十分ではないかと思われるかもしれない。

 しかし、ちょっと硬い話になるが、「地区会館」は、「西東京市市民交流施設条例」に基づいて設置されており、その第一条(設置)には、次のように書かれている。「人と人とのふれあいを尊重して、市民の自主的かつ自発的な文化・教養の高揚を図り、もって市民主体による市民本位の豊かな地域社会づくりの発展に寄与するため、地域社会の活動拠点として、西東京市市民交流施設(以下「交流施設」という。)を設置する。」

 つまり、趣味や体操などを楽しんで、文化・教養の高揚を図るという面では、十分機能を果たしているのだが、「地域社会の活動拠点」であるという面では、はたして役割を担えているのだろうかという疑問が残る。市民交流施設は、半径700m内に設置されており、市民誰でもが利用できるのだが、およその担当エリアがある。下宿地区会館の場合には、南町4・5・6丁目がそれに当たる。

 しかし、近くに住んでいる人でも、「下宿地区会館」を知らない人も多い。あるいは、知っていても、自分とは関係ない場所だと思っている可能性が高い。そこで、団体登録していない地域の人も、ふらりと立ち寄れる場所にしたい、まずは知ってもらいたいとの思いから「わくわくアワー」を始めた。

 

担当エリア

下宿地区会館の担当エリア
(注)南町4丁目(緑)、5丁目(桃)、6丁目(黄)

 

 下宿地区会館については、実は、もう一つ心配している面がある。利用者全体が高齢化しているのだ。かつては、エリア内の老人会などもカラオケや輪投げなどで利用してくれていたのだが、高齢化で老人会そのものが維持できなくなってしまった。三味線の先生も、高齢になり、親族のいる田舎に帰ってしまったと聞く。

 同じ市民交流施設でも、たとえば、東伏見コミュニティセンターは、設立準備会合に中学生を入れ、「食事ができると良い」「バンドの練習がしたい」などの声を反映させて、広いロビーやバンド練習ができる部屋を用意した。現在は、コロナ禍なので食事はできないかもしれないが、それ以前は、放課後になると、中学生や高校生がカップ麺を食べながら、ロビーで勉強を教え合ったり、イベントの計画を立てるのに使ったりしていた。音楽室は、若者だけでなく、フォーク世代のお父さんたちの利用も多いそうだ。若い世代を取り込むことも、今後のことを考えると不可欠な課題と思える。

 

継続は力⁉

ポスター

4月のわくわくアワー「オカリナとハーモニカ演奏を楽しもう!」のチラシ(クリックで拡大)

 このように、思いと実績がまだ乖離しているのだが、それでも、利用団体関係者でもなく、知人でもない人がちらほら参加しはじめた。何を見て参加してくれたのか聞きたいところだが、怖くて聞けずにいる。継続は力なり。下宿地区会館を地域社会になくてはならない場所にするため、イベントおばさんは、老骨にムチ売って、もう少し頑張ってみようと思っている。

 地区会館は、4月から、それまでの文化振興課から協働コミュニティ課に窓口が変更になり、7月からは、全館の名称が「コミュニティセンター」になる予定だ。文字通り地域社会・地域コミュニティの活動拠点を目指す必要があるだろう。ちなみに、4月は「オカリナとハーモニカ演奏を楽しもう!」、5月は落語を予定している。是非、一度足を運んでください。
(富沢このみ)

 

【関連情報】
・下宿地区会館(西東京市Web

 

 

05FBこのみ【著者略歴】
 富沢このみ(とみさわ・このみ)
 1947年東京都北多摩郡田無町に生まれる。本名は「木實」。退職、母の介護を経て、まちづくりに関わる。2012年より田無スマイル大学実行委員会代表。2016年より下宿自治会広報担当。2019年より、多世代交流・地域の居場所「どんぐり」オーナー。2020年にフェイスブック仲間と「西東京市カルタ」完成。2020年より下宿地区会館管理運営協議会代表。

 

 

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