「英語スピーキングテスト」11月下旬実施、来春の都立高校入試に「活用」  西東京市で緊急学習会

投稿者: カテゴリー: 子育て・教育 オン 2022年8月15日

 東京都教育委員会(都教委)によって今年11月末に初めて実施予定の「英語スピーキングテスト」の結果が、来春の東京都立高校入学試験で「活用」されることになっています。都教委は3年前、「進研ゼミ」などで知られるベネッセコーポレーションと協定を結んで準備してきました。西東京市で7月末に開かれた緊急学習会で、このテストの問題点が数多く指摘されました。主催団体の一つ西東京市の「憲法を教育に生かす会」の西田昭司さんが報告します。(編集部)

 

 

学習会

「英語スピーキングテスト」学習会の講師を務めた柏村みね子さん

 

 7月24日(日)午後2時から、コール田無のイベントルームBで、緊急学習会「知ってる 英語スピーキングテストのこと」が開かれました。

 今年から公立中学校の3年生は全員、ベネッセコーポレーションの作成したスピーキングテスト(ESAT-J)(注)を11月27日(予備日12月18日)に受けることになり、それが都立高校入試の合否判定に使われます。これには疑問があると反対する動きが新聞でも報道されています。そこでこの学習会が企画されました。講師は、昨年3月まで公立中学校の英語教員で、新英語研究会事務局長の柏村(かしむら)みね子さんです。

(注)ESAT-JはEnglish Speaking Achievement Test for Junior high school studentsの略称。

 

 柏村さんは、スライドで都教委のホームページを見せました。「話すこと」の能力を測るアチーブメントテスト(到達度テスト)として実施し、小・中・高校の英語指導の改善に役立てることを強調していることが分かります。柏村さんはまず「都立高校入試において結果を活用」と書いてありますが、全体の中で扱いはわずかで、中学生と保護者にとって大事なことが、「見落としてしまうくらいの小さな扱いだ」と指摘しました。

 

 タブレットへ録音、まじめに考えるほど時間がかかる

 スピーキングテストが実際どのように行われるのでしょうか?
 学校では普通、スピーキングテストは先生と対面で行い、言い淀んでも、先生がサポートしてくれます。東京都のスピーキングテストは、タブレットに対してイアホンマイクを通して本人が回答します。分からないことがあっても尋ねることはできません。

 柏村さんはさらに、昨年まで実施されたプレテスト問題を画面で見せながら、テストの中身や問題点を具体的に説明していきました。

 スピーキングテストの出題はパートAからパートDの4種類です。パートAは英文音読。Bはイラストがあり、英語での質問に英語で答え、Cは4コマイラストの内容を英語で説明。Dは英文を聞き、意見と理由を述べるという形です。

 もちろん制限時間があります。単語だけで答えても低得点。主語、述語、文法は正しいか、発音はどうかなどで採点されます。厳密に考える子ほど時間がかかります。「点数を稼ぐため何回も練習し、テストのためのパターンを覚えるのでは、スピーキングの力はつかない」と柏村さんは指摘します。

 

 フィリピンで採点、公平かは「不明」

 録音データはフィリピンに送られて採点されます。フィリピンでどんな資格の人たちが何人で採点するのか、受験する約8万人の生徒の回答を、全員公平に採点するためのすり合わせはどのように行われるのか、などは公表されず、ブラックボックスです。

 結果は来年1月中旬、学校を通して、生徒にスコアレポートとして送られてきます。

得点域 ESAT-J段階 換算得点
80~100 A 20
65~79 B 16
50~64 C 12
35~49 D 8
1~34 E 4
0 F 0

 昨年度のスコアレポートの例がスライドで示されました。全体の得点(スコア)とコメント(Can-Do Statements)と学習アドバイスがありますが、パートごとの得点は示されず、どこがどう悪かったのか全く分かりません。学習アドバイスも、「あなたは『相手の質問を聞き取り、情報をもとに的確に答える力』を伸ばすと良いでしょう」などです。柏村さんは「頑張りましょう、程度のものでしかない」と言います。

 実際の柏村さんの説明は、昨年のプレテスト②を受けた生徒に渡されたスコアリポートにある、得点域とESAT-J GRADE(段階A~F)をスライドで示し、それが20点から4点刻みの換算得点で配点されるという仕組みを述べました。
 右の表は、3つの関係を分かりやすくなるようにと、筆者(西田)が一つの表にまとめたものです。

 

 調査書点が英語だけ2倍はなぜ?

 スピーキングテストは100点満点で採点しながら、上の表のようにA~Fの段階に分けられて「換算得点」を出し、これが調査書点として加えられます。1点の生徒と34点の生徒が同じ4点、79点と80点の1点差でも換算得点は4点差になります。1点差を争う入試に、なぜこのようなやり方をするのでしょうか。さらに、国語、社会、数学、理科で評価「5」を取ると換算の調査書点は約23点です。英語はスピーキングテストの20点を加えて、調査書点が43点になります。英語だけ他教科のほぼ2倍の調査書点となり、柏村さんは、「なぜ英語だけ?」と、英語教師にとっても疑問だと言います。

 

入試活用の流れ

東京都教育委員会「東京都立高等学校入学者選抜における東京都中学校英語スピーキングテスト結果の活用について」から(クリックで拡大)

 

 不受験者の扱いも謎の1つ

 柏村さんは「不受験者の扱いも謎」と指摘します。
 感染症などでこのテスト「ESAT-J」が受けられなかった公立中学校の生徒、国立、私立、他道府県の中学生は「不受験者」となります。不受験者が都立高校を受験した場合は、受験した各都立高校で、英語の学力テストを得点順に並べ、同得点の生徒10名のESAT-J得点の平均点を推計点とするとしています。学力テスト得点が高ければESAT-J得点も高いなどの相関関係がなければこういう計算をして良いとする根拠がありません。都教委は都議会で、その相関関係を示すデータは持っていませんと答えています。しかも、「自分の実力と関係ない他人の得点で決められてしまうのはおかしい」と柏村さんは言います。

 

 GTECで「対策」した子とそうでない子

 ESAT-Jと瓜二つの設問を持つ、ベネッセのスピーキング教材「GTEC」も問題になっています。設問の設定だけでなく、準備時間と回答時間、評価基準までそっくりなのです。中一の男子生徒は言ったそうです、「まんまやん」と。都教委は、「似ているが違う」と答えています。柏村さんたちが独自に調査したところ、GTECを公費で購入し「対策」をとっているのは都内に9自治体ありました。購入していないのは42自治体あり、西東京も購入していませんでした。GTECをやった方が有利になるという問題と、利益誘導の問題があります。また、様々な塾や入試関係企業が有料のスピーキングテストの模試をすると勧誘しています。「家庭の経済格差が得点格差につながる危険がある」と柏村さんは指摘しました。

 

 コロナ禍で発声・発話十分できていない、学ぶ語彙2倍の2200語

 今年の中学3年生は、小学校卒業前に全国一斉休校でした。中学校入学も遅れ、コロナ禍で発声・発話も制限され、ペアの会話、グループ活動も十分できていません。さらに2021年から新学習指導要領で、学ぶ語彙は1200語から2200語と2倍になり、高校で学んでいた文法も中学に降りてきて、大変な状況の中にあります。「スピーキングテストは、ますます子どもたちを苦しめることになる」と柏村さんは強調しました。

 スピーキングテストの実施は教員の要求ではありません。経済界の要求から出てきたものです。柏村さんは、「こんなことをやっていて、子どもたちに何が起きるか想像してみてください」と話しました。「ぜひ、やれることをやってみてほしい」と呼び掛けました。

 その後、質問や交流に移りました。「不登校の子は不受験者になるのか」「不登校の子で写真を嫌がったらどうするのか」などの質問が相次いで出でました。これに対して柏村さんは「在籍しているのでESAT-Jの受験が基本。しかし都は『個別対応』としているので、その辺はわからない」とのことでした。

 

会場風景

質問が多く出た学習会場

 「ウェブ登録で、写真など個人情報を入力するが、親の同意をちゃんととれるのか」「マイクから隣の人の声が入ったりしないのか」などの質問も相次ぎました。これに対して柏村さんは「どのように登録させるか学校によって違う。何らかの方法で保護者の承諾書をとるのではないか。録音などの事故は、都は1件もないとしているが、あやしい。大学のスピーキングテスト専門家は何百人に1回は必ず事故があると言っている」と答えていました。

 その後、自閉症的な子の場合やディスレクシア(文字の読み書きが困難)の子の場合などの質問が出ましたが、「都は『個別対応』としていて、扱いは分かりません」との回答でした。吃音者は不受験者とすることが決まり、特別扱いを申請すればESAT-Jを受験しないで良くなりました。

 出席者は約30人。延べ13人の方から発言がありました。また自分の分とは別に当日の資料を持ち帰る方が多く、40部用意した資料が全てなくなりました。市民の高い関心を感じた学習会でした。

【筆者注】スピーキングテストの得点域と換算得点の表については、ネットのイミダスで入試改革を考える会代表の大内裕和武蔵大学教授が明らかにしています(「都立高入試英語スピーキングテスト「20点」の謎〜配点も点数も全てが不可解」 情報・知識&オピニオン imidas – イミダス)。柏村さんも、これをもとにお話ししています。

 

【関連情報】
・中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)(東京都教育庁特設サイト「Tokyo Portal」)
・東京都立高等学校入学者選抜における東京都中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)結果の活用について(2022年5月26日)(東京都教育庁
・「民間資格・検定試験を活用した東京都中学校英語(仮称)」事業 基本協定の締結について(2019年8月21日)(東京都教育委員会
・英語スピーキングテスト、都内の公立中8万人対象に初実施へ…公平性巡り疑問視も(読売新聞
・都立高入試英語スピーキングテスト、民間試験GTECとそっくり 都教委は「似ていても違う」(朝日新聞

 

【筆者略歴】
 西田昭司(にしだ・しょうじ)
 1947年1月生まれ。田無、保谷で18年間中学校理科教員。現在、「憲法を教育に生かす西東京の会」事務局長。

 

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