「型」を遊んで伝統美再発見 紋切りワークショップ

投稿者: カテゴリー: 暮らし オン 2016年1月11日

 

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型を切ると家紋も出来るんですよ(小金井市民交流センター)

 堅苦しく不自由にみられがちな「型」には、自然や暮らしを見つめた豊かな創意がいっぱい。人々のあいだで育まれてきた、暮らしを豊かに楽しむ「型」の文化や思いにふれてみませんか-。こんな惹句に引き寄せられて、お隣小金井市で開かれたワークショップに参加した。和紙の色紙を三つ折りにして型通りに切り抜くと、あれまあ、思いがけない「紋」が現れる。子供も大人も夢中になるわけが何となく伝わってきた。

 「紋切り型を知ってる人、いるかな?」
 小金井市民交流センターの地下ギャラリーで、講師の造形作家下中菜穂さんがこんな言葉でワークショップを始めた。控えめな手が、ぱらぱら上がる。子供たちやお父さん、お母さん、それにおばあちゃんらが5卓のテーブルを囲んでいる。卓上には色紙や糊、ハサミやカッターなどが置いてある。

 紋切りは江戸時代に発達した。下中さんは、徳川将軍家の三つ葉葵の紋所をはじめ、ハマグリやうさぎ、桔梗などを使った家紋を次々に見せる。参加者の関心を引きつけたところで「じゃあ、取り掛かりましょうか。まず紙を折ってみましょう」。視線がほどけ、会場がザワザワと動き始めた。

 特製の「紋切り定規」を使って色紙を三つ折り、五つ折りに。用意された型紙から好みの「型」を選んで切り抜き、折った色紙に糊で貼り付ける。型通りに切り抜き、そっと手のひらに広げると、四ツ七宝や光琳松などの複雑、華麗な紋が現れる。意外な形の出現に、小さな歓声があちこちで上がった。

 

 

 出来上がった紋を台紙に貼り付けるとはがきの出来上がり。手順が滞ると、スタッフが駆けつける。遅れると、お母さんやお父さんがうずうずして身を乗り出す光景も見られた。

 市内在住の菊地学さんは家族4人で参加した。「妻に誘われてきました。工作は好きなんです」と言いながら、家族が見守る中、カッターで複雑な型を熱心に切り抜いていた。
 「小学1年の娘が学校でもらったチラシを見てこの催しを知りました」という古川優子さん。「娘が参加したいというので一緒に来ました」。生後6カ月の赤ちゃんとともに、娘の絢菜(あやな)ちゃんの作業を見守っている。出来上がったはがきを手に、絢菜ちゃんは壁に張り出そうと駆け出していた。「娘は物おじしない性格なので人前にも積極的に出ていきます。楽しそうでよかった」。

 色とりどりのはがきが壁に張り出される。このあとのトークセッションに参加予定の能楽師、津村禮次郎さんが飛び入り参加して、能の衣装や小道具にも紋があり、独特の意味があると説明してくれた。

 参加者の作品をひとわたり紹介したあと、講師の下中さんは「紋切り型は現在、おもしろみのない繰り返しという意味で使われています。しかし『型』があるから『型破り』がある。紋切りが忘れられるのは実にもったいない。紋切り遊びは、型を遊んで伝統を再発見できます。おうちでも楽しんでください」と言う。江戸時代の紋切り技法を解説した古い和書を手に取って、「こういうプロの秘伝を100年後にも伝えたい。みなさんもぜひ協力してください」と締めくくった。

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 このワークショップは、「『型』にあそぶ、『型』をあそぶ ワークショップ&トークセッション」の前半。後半のトークセッションで下中さんは「紋切りを自分の手で体験してみたら、堅苦しい決まり物と思っていた奥に、自由な世界が開けていた。みなさんも確かめてほしい」と述べた。能楽師の津村さんは「能では『型』をつなげていくと意味が生じる」など伝統文化の仕組みと仕掛けを説明した。

 この催しは、小金井市伝統文化フェスタの一つ。文化庁の助成を受け、小金井市伝統文化による地域活性化推進事業実行委員会が主催。NPO法人アートフル・アクションらが担当して開かれた。
(北嶋孝)

【関連リンク】
・小金井市伝統文化フェスタinお正月2016(小金井市Web
・「型」にあそぶ、「型」をあそぶ ~ワークショップ+トークセッション(アートフル・アクション
エクスプランテ(紋切り型の著書多数)

 

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