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新しい「たんぽぽ」に 田無の会が新体制で再出発

By in 健康・福祉, 交流・共生 on 2015年4月10日
たんぽぽ

【知的障害者入所施設「たんぽぽ」 2015年4月6日撮影 禁無断転載】

 東京都や西東京市から行政処分を受けていた社会福祉法人田無の会(西東京市向台町三丁目)が役員を一新し、再出発に向けて活動している。新理事長の大森昇司さん、新施設長になった松田たか子さんに話をうかがった。

 「前理事長が2月24日に辞め、25日に新しい役員を加えて理事会を開き、私が理事長に選ばれました。息子がここに入所していることもあって評議員を務めていました。若くみられますが、私はもう80歳です。最後の仕事として、やらざるを得ないと決意しました」

 それから1ヵ月余り。同法人が運営する知的障害者入所施設「たんぽぽ」(定員50人)の職員と話し合うほか、東京都や西東京市、関係団体を回って謝罪と事情説明の忙しい毎日を過ごしている。

 「いままでの考え方を改めて、関係機関と協力していきたい。ここ(施設)の職員には、入所者の気持ちを考えて対応しよう、誇りを持って仕事をしようと話しています。朝7時過ぎからここに来ているんですよ。理事長になってから休みなしです」と大森さん。杖をつきながら、若いころ柔道で鍛えた精神力で陣頭指揮している。

 法人運営は理事長の役目だが、現場は施設長が回さなければならない。松田さんは4月に着任したばかり。6日に訪問したとき、施設長室は段ボールと書類の山だった。

 「引き継ぎがほとんど出来てなくて、関係先に提出する書類を作成するのも大変でしたが、残った職員と力を合わせてなんとかまとめました。これから職員の勉強会、外部施設の見学・研修、マニュアル作りなど、ひとつひとつ進めます。ゼロからというより、マイナスからの出直しかもしれません。入所者と職員の間はもちろん、職員同士の間も、風通しをよくしていきたい」と言う。

 

新理事長と施設長

【現状を話す大森昇司理事長と松田たか子施設長。西東京市向台町のたんぽぽ 禁無断転載】

 

 「たんぽぽ」は2000年4月、西東京市向台町に開設した。前理事長らは今年2月に退任するまで15年間、福祉法人と施設を運営してきた。この間、入所者への虐待やずさんな運営が明るみに出て2013年9月、東京都から新規利用者の受入れ停止を命じられた。これに対して同年12月、前理事長らは東京都を相手取って訴訟を起こした。翌14年にも改善がみられないとして都は2年連続で行政処分する異例の事態になったが、今年2月になって東京都に対する訴訟は取り下げた。

 前理事長らは都だけでなく、入所者や職員、家族らの聞き取り調査を実施した「第三者委員会」の報告に事実誤認があるなどとして、自分たちが設置した委員会のメンバーも訴えるなど混乱が続いていた。

 「(入所施設の)『たんぽぽ』は、東京都や西東京市があっての施設です。都訴訟の取り下げに続いて、3月には新体制となった理事会、評議員会で、第三者委員会の方々に対する訴訟の取り下げも決めました。その方々にも頭を下げ、事情を説明しています」と大森さん。東京都の処分は新規入所停止だけではない。国の基準に都が上乗せ補助する「サービス推進費」(東京都民間社会福祉施設サービス推進費補助金)もストップした。「2年間の停止は痛い。年間約5000万円ですから、なんとか凍結解除していただいて、職員の処遇改善にもつなげたい」と話していた。

 「たんぽぽ」は鉄筋コンクリート3階建て。現在20代から70代までの45人がそれぞれ個室で暮らしている。職員の出入りが激しかったため、スタッフの充実は急務だが、「職員募集しても、ネットには施設の悪い評判が載っていてスムーズには進みません。私たちの活動で、ひとつひとつ塗り替えて、ここが働きがいのある職場だとアピールしていくしかない。現在はホームページがないので、これからあらたに作る必要がある。本当にやるべきことが山積みです」と松田さんは言う。

 大森さんは「4月の創立記念日は(行政処分という)謹慎の身なので、所内でささやかに行いました。ご近所の方々にもご心配をかけたので説明に回りました。ボランティア活動などでこれから地域とも密に協力していきたい。家族会の役員会とも話し合い、月末に全体会を開いて説明することにしました」とも話している。

 その後、大森さんらは8日に開かれた東京都社会福祉協議会の知的発達障害部会で、出席した都内の施設長らを前に状況を説明し、関係改善のお願いをしてきたという。謝罪と説明の行脚は当分続きそうだ。

 東京都と西東京市には、3月20日付けで改善状況報告書が提出された。今後、都と市が内容確認を進めることになる。東京都福祉保健局指導監査部によると、「報告書の具体的な内容確認は6月ごろになる」という。
 訪問した4月6日、「たんぽぽ」門前の桜は満開だった。しかし、入所者や職員らが春の訪れを実感できるのは、もう少し先になるかもしれない。
(北嶋孝)

【関連リンク】
社会福祉法人に対する行政処分(改善措置命令)について(2015年2月20日、西東京市)
指定障害者支援施設の行政処分について(平成26年9月30日、東京都福祉保健局)
指定障害者支援施設の行政処分について(平成25年9月30日、東京都福祉保健局)
平成二十七年東京都議会会議録第四号〔速報版〕(平成27年第1回定例会本会議 上田令子(かがやけ)議員が質疑で田無の会処分の件を取り上げた)

 

 

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