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子どもの成長と親子の絆を願って 「ひよこ親子教室」の19年

投稿者: カテゴリー: 子育て・教育 オン 2017年3月25日

 

2歳児クラス最後のイベント"段ボール迷路で遊ぼう"村田先生と一緒

 子どもの成長を願っても、子どもが思い通りに育つとは限らない。親の枠にはめることがいいとも限らない。親と子の豊かな関係づくりを願って19年。西東京市で、未就園児と親を対象にした「ひよこ親子教室」を主宰している村田真由美さんに、教室の歩みとともに、「親子の育ち」体験を寄稿してもらった。(編集部)

 私は遊びや季節の行事を通して大事な親子関係や人としての土台作りをお手伝いしている「ひよこ親子教室」を主宰しています。主に未就園児とその保護者を対象にした教室で、地域の親子のために活動を続けて今春で19年目、教室を巣立った卒会生は 549 組となりました。

 初めは「わが子」のために

 教室を立ち上げた経緯をお話させていただきます。我が子が未就園児の頃の話です。3年保育で入園する時期を迎えた時に「将来自立していつか手が離れるなら、小さいうちは自分の手で育てたい」と思い、3 年保育を見送ってもう1年自分の手で育てる決意をしました。
 当時も今と同じように 3 年保育が主流でしたが、周囲に流されず自分の考える道を貫きたいと思い、迷いは全くありませんでした。でも親の身勝手な気持ちでそのような選択をした以上、充実した毎日を送らせてあげたい、送らせなければいけないという使命感もありました。そこで教室の前身でもある「ひよこサークル」を立ち上げることにしたのです。

 当時の住まいは調布で、普段からお世話になっていた児童館のご厚意により1室をお借りしてサ-クル活動をスタ-トさせました。 内容はお名前の歌(名前を言ったり返事をしたりする歌)、手遊び、体操、読みきかせ、外遊び、季節のイベント、工作などです。誰か1人が大変な思いをするのではなく皆で協力し合いましょうという考えのもとに、活動内容の決定と先生役を当番制としました。

 40 組もの親子が活動をしていました。目標や目的が同じでいつも相手の立場に立って行動出来る親子の集まりでした。お互いを思いやり声を掛け合って、非常に温かい雰囲気の中で笑顔溢れるサークルだったのです。

 その一方で子ども達は沢山の喧嘩を経験しました。親はけがのないところまで口出しをしないと約束して見守ることにしました。このような経験を小さいうちにしておくことで、手加減を学ぶと思ったからです。 例え勉強は出来ても人の気持ちが分からないような子にはなってほしくないし、生きる力のある子どもになって欲しいと思っていました。喧嘩をして人の痛みを学べる環境を、親として非常にありがたく思いました。

 

わぁい、やったぞ!

 

 サ-クル活動を通して心の成長と共に、社会性や協調性が育まれたと感じたことから、「子どもは実体験でこそ学ぶ」ということを確信しました。それは今でも子育て中のお母さん達に伝えていきたいことの1つとなっています。我が子のために続けてきたサ-クル活動でしたが、振り返ってみると教室の基礎は全てここで築いていました。

 西東京市で「教室」スタート

 義父母が西東京市在住だったことから平成8年(1996年)に西東京市に転居、平成10年(1998年)の春に長女が小学校に入学、長男が幼稚園入園というタイミングで「サ-クル」を「教室」としてやっていくことを決意します。 結婚前は証券会社の役員秘書と人事部に在籍していたので、お子さんに関わる仕事に従事することは無縁だと思い込んでいました。 それでも教室の設立を決意したのは、自身の子育てがとても楽しかったように、子育て中の方にも親子共通の思い出を沢山作ってもらいたい、楽しい子育てのお手伝いの一端を担いたいと思ったからです。

 その翌日には教室を開催する場所を西東京市民会館に決めて広告を手作り。コンビニを渡り歩いて 5000 部コピーした私は意気揚々と新聞屋さんに向かいました。すると「どこの地域に入れたいの? 普通は市役所に行って子育て世帯が多いところを調べてから広告を入れるんだよ。それに広告は1万部から受け付けているの。だけど、これあなたが自分で全部コピーしたんでしょ? 今回だけは子どもの多い世帯に入れてあげるよ」と言っていただきお言葉に甘えました。 ここからスタ-トすることが出来たので今でもこの新聞屋さんには感謝の気持ちで一杯です。

 広告を見て入会した親子は20組、教室の立ち上げを決意してからわずか数日間での出来事でした。

 教室運営は、サ-クル活動の経験を活かして順調でした。内容はサークル時代に行っていたことにプラスして、お誕生日会やリトミック、季節のお歌などにも取り組んでいます。お子さんにとって良いと思ったことはすぐに取り入れ、毎回が真剣勝負です。1時間でこれだけの内容をきちんと行い、お子さんに集中してもらうために、テンポ良く行うことも心掛けています。少しでも間が空くと、未就園児のお子さんは飽きて輪から抜け出してしまうのです。そうならないために事前準備には相当な時間を費やしています。準備が120%でなければ、未就園児を1時間集中させることは難しいからです。

 教室はお母さん達の口コミによりどんどん拡大していき、自分の予想していた以上の親子がご入会されるようになりました。「責任ある立場として何か資格を取らなければいけない」と思い、一念発起して猛勉強し、保育士資格を取得しました。入会者は増え続け、120組の親子が在籍していた年もありました。教室の空きが少ないと分かると、夜中にでも問い合わせの電話があるほどでした。

 育児の悩みに耳を傾けて

 どうしてそんなに多くの親子が入会するのか冷静に分析すると、核家族化に伴い「育児の悩みを気軽に相談出来る相手が身近にいないから」ということに尽きると思います。育児の仕方、お子さんとの遊び方、接し方さえも分からない、でも誰にも相談出来ない。例えママ友に相談したとしても明確な答えは出ない…という現実があるからだと思っています。

 

段ボール迷路で遊ぶ母子

 

 私はそうしたお母さん達と真摯に向き合い、育児の悩みに耳を傾けてきました。親子の気持ちを受け止めながら、通り一辺倒な答えではなく、その親子に合った解決方法を伝えたり時には叱咤激励もしたり。子育て中で少し視野が狭くなっているお母さんには「こういう考え方もありますよ」と他の考え方を提案したり、自信の持てないお母さんには「それで良いですよ」と背中を押したり。 ゆっくり話を聞くために悩みを伺うのは教室の時間外ということもあり、大勢のお母さんが相手なので時間的な労力は正直計り知れないものがあります。それでも入会したお母さん達の力になりたい一心で今日までやってきました。今後はそのような時間をどのようにしてきちんと確保していくのかが大きな課題となりそうです。

 ひよこ親子教室を主宰する一方で、3年前から都内の保育園にも勤務するようになりました。教室では1人で企画、準備、運営を行ってきたので外の世界で様々な保育方法や保育観を知り、保育について視野を広げたいと数年前から考えていたのです。保育園ではお子さんへの声の掛け方、注意の仕方、保育に対するアイデア、保護者対応など、様々なことを深く知ることが出来ます。毎回が勉強ですし、自身のプラスにもなり、保育の幅が広がったと感じています。

 親子関係の土台作り

 楽しい子育ての一端を担いたいと思って始めた教室でしたが、長年沢山の親子に接しているうちに、未就園児の間に親子関係や人としての土台作りがいかに大切かということを感じるようになりました。 親子関係の土台作りについては、教室の中で沢山の経験をしてもらい、お母さんにお子さんの様々な側面を見てもらうことからスタートします。

 様々な側面とは良いことばかりではありません。家では教室の内容をするのに教室では取り組まない、普段は名前や返事がしっかり言えるのに皆に注目されると自分を出すことが出来ない、座っているべき時間に座っていられないなど、お母さん達が目を背けたくなるような状況も目の当たりにします。でもそんな時こう伝えるのです。「お子さんの色々な側面が今分かって良かったですね」と。

 入園後にその姿に気付いたとしても、幼稚園や保育園で傍に付いている訳にはいかないので、親として出来ることが限られてしまうと思うのです。でも入園前なら、どうしてそういう行動を取るのか、どうしたら改善されるのかなどを一緒に考えて試行錯誤しながら答えを出すことが出来るのです。 親子の土台作りとはこうしてお子さんの良いところも悪いところも親御さんが認めることが非常に大切だと思います。

 子育てのゴールは、子どもが自分の足で人生を歩んでいけるようになることだと思います。そのために当たり前のこと、例えば大人に促されなくても挨拶をきちんとする、自分のことは自分でする、どんな小さなことでも自分で選択する、沢山の人と接することで社会性、協調性を身に付ける…という小さな積み重ねにより、人としての土台作りが出来ていくと考えています。

 教室では季節の行事にも注力しています。行事後のお子さんが飛躍的に成長する姿を数多く拝見してきました。『ひよこは楽しいことをするところ』と認識出来るようになり、それがやる気に繋がるのだと思っています。

 様々な経験をした親子は、入園前の2月に卒会式を迎えます。お子さんと必死に向き合った2年間を振り返り、お母さん達は涙に暮れます。親子共に心の成長を果たし、クラス全員で子育ての苦楽を分かち合い、頑張ってきたことを認め合うのが卒会式なのです。

 

歌や手あそびを交え遊ぶパネルシアター

 

 一番劇的に成長する時期を近くで拝見出来ること、お母さん達から「ひよこに通って良かった」「心配なく入園出来ます」と言っていただくことが、この仕事をしている上での醍醐味です。卒会生からは活躍している旨のご連絡を度々いただき、嬉しく思っています。「不安要素はひよこの時に知って克服出来たので安心して送り出すことが出来ます」というお声もいただいています。

 教室での様々な経験が入園後に活かされていることを耳にする度に、教室でやってきたことは間違っていなかったと再認識することが出来るのです。

 子育てを応援し続けたい

 これまでは卒会式を以ってお別れでしたが、お子さんが大きくなるとまた新たな悩みが生じてくるものです。そんなお母さん達を応援する意味から、今後、月に1回程度、子育て懇談会を開催します。卒会してから悩みが生じた時に『相談出来る場所がある』という安心感を持ってもらえるのではないかと考えました。

 これまでは未就園児が対象の教室でしたが、家族参観の際に一緒に参加したご兄弟が「ひよこ楽しい!自分も通いたい」と言ってもらったことをきっかけに、園児・小学生のイベントを1学期に1回程度行うことにしました。実は教室に通っていなかった上のお子さんについての相談を受ける機会も少なくなく、実際にお子さんを拝見した上でなら相談にのりやすいという意図もあります。

 未就園児の頃は一番手が掛かりますが、子育てを振り返ると一番可愛い時期でもあります。そんな貴重な時期にお父さんが育児に関わらないのは勿体ないと思い、月に1度、お父さんとお子さんお二人のためのクラスも開設します。育児を楽しみたい、お子さんと関わりたいけれど、どう関わったら良いのか分からないというお父さんに是非参加していただきたいクラスです。

 今後も子育てを応援し続ける教室であり続けるために日々精進していきたいと思います。お子さんにとって未就園児の頃の環境がとても重要であり、その大切な時期に親子共通の思い出があることは、親子の将来に大きく影響すると長年の経験から強く感じています。でもどれだけ長い時間を親子で過ごしたのかが重要なのではありません。短くても親子できちんと向き合う時間を過ごすことがとても大切なのです。お子さんの健やかな成長のため、親子の絆を深めるために、これからも微力ながら教室を続けていきたいと思います。
(村田真由美)(写真撮影=柿本珠枝)

 

【関連リンク】
ひよこ親子教室>>

 

【筆者略歴】
 村田真由美(むらた・まゆみ)
 旧岩槻市(現・さいたま市岩槻区)で育ち、現在西東京市在住。保育士。平成 10 年にひよこ親子教室を立ち上げ、地元に根付いた教室として活動中。

 

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