5人

まちおもい帖 第42回 自分らしく生きるママさん起業家たち

投稿者: カテゴリー: 暮らし連載・特集・企画 オン 2022年1月6日

 

4.ゼロ歳児を育てながらジェラート屋「mucuムク」を始めた大谷里菜さん

 

 大谷里菜さん(36)は、2年ほど「どんぐり」2階に、当初2歳の長男と家族3人で住まわれていた。2020年夏に長女を出産したにも関わらず、しばらくしてゼロ歳児を預かる保育園を見つけ、2021年夏には、西東京市の補助金を得てキッチンカーによるジェラート屋「mucu」を開店してしまった。若いとはいえ、そのエネルギーと行動力に脱帽である。

 実家が商家なのかと思ったら、ごく普通の会社員の家庭で育ったとのこと。地元の大学卒業後、店舗内装会社に入社、営業担当として、大阪、東京で勤務。東日本大震災の後、知人に誘われ、被災した方々に当面の仕事を斡旋する一般社団法人の現地スタッフとして、宮城県石巻市に移り住み、牡鹿半島のある浜に通いながら仕事を行った。

 ここは、もともとは牡蠣養殖が盛んで、殻から身を取り出す加工場でたくさんの女性が働いていた。牡蠣養殖も加工場も流されてしまったため、職を失った方々が、獣害駆除で捕獲された鹿の角と漁網を使ってアクセサリーを作り、全国に販売した。里菜さんは、製造の管理と販売を受け持っていた。

 しばらくすると復興が軌道に乗り、牡蠣養殖も加工場も再開されたため、現地での仕事は、縮小することになった。それに伴い、一般社団法人を退職し、その後バックパッカーとして2カ月半ほど欧州旅行をした。旅をしながら、漠然と食に関わる仕事をしたいなぁと考えていたところ、茨城県鹿嶋市で農産物を加工した地ビールや食事を提供する店の求人を見つけた。ここは、無肥料無農薬自然栽培をしている若手農業集団「鹿嶋パラダイス」が経営している。彼女は、接客だけでなく、時には料理をつくり、農業も手伝った。ここで、西東京市から手伝いに来ていたご主人と出会い、結婚して西東京市の住人に。

 

大谷里菜

ジェラート販売につい語る大谷さん

 

 ジェラートとの出会いは、長男を妊娠している頃、あるイベントに出店していたジェラートがとても美味しかったことによる。彼女は、お酒も甘いものも大好きなのだが、妊娠中にはお酒が飲めない。楽しみがないなぁと思っていた折、ジェラートの美味しさが心に残った。たまたま、通える地域内にあるジェラート屋の求人をみつけ、そこで働くことにした。最初から自分で店を持ちたいと考えていたわけではなく、そのうち自分でもやれたらよいなぁぐらいの気持ちだった。ところが、コロナ禍で、「新たなビジネスモデル・経営革新チャレンジ支援補助金」の募集があり、これはチャンスと捉えて応募した。

 この事業は、市内の3者以上のグループで取り組む新しい生活様式に対応した新たなビジネスモデルに対し、補助対象経費の10分の9(上限100万円)を返済なしで補助するというもので、みごと採択された。ジェラートを屋外で販売するため、軽トラックを購入、知人の大工さんにお願いして、BOXを載せる形でキッチンカーに改造した。自ら車にペンキを塗るなどして資金不足を補った。

 

「どんぐり」の駐車場で実験的にジェラート販売(この日は、ミルク、桃、きなこ、つぼ焼き芋の4種)

 

 現在、ジェラート製造は、彼女独自のレシピで製造し、2021年夏には、主に、「ひばりテラス118」や東久留米のブルベリー農園「奈良山園」で販売し、好評だった。手ごたえを感じたものの、販売量を増やすには、独自の製造所が必要であると感じた。そこで、現在、別の補助金を活用して製造所をつくろうと、適した物件を捜査中だ。
>>次のページ 5.SDGsに特化したジェラート屋「KANKIKU」を立ち上げた木村きく子さん

1.「小さな小さな花屋さん」を始めた内藤阿珠佐さん
2.やさしい整体「茊絆」を経営する藤居仁子さん
3.小学生にロボットプログラミングを教える高田しのぶさん
4.ゼロ歳児を育てながらジェラート屋「mucu(ムク)」を始めた大谷里菜さん
5.SDGsに特化した営業支援、商品開発事業「KANKIKU」を立ち上げた木村きく子さん
6.しなやかな働き方

 

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