まちおもい帖 第43回 コロナ禍がもたらした新しい世界

投稿者: カテゴリー: 暮らし連載・特集・企画 オン 2022年3月3日

 

4.新しい時代へのターニングポイント

 

 この原稿をまとめる前は、コロナ禍で暗いニュースばかり流れるが、コロナ禍でメリットを得た人や企業もいるのではないかと、軽い気持ちで調べ始めた。ところが、調べていくうちに、コロナを契機に「革新」とも言えるようなことが起きていると感じ始めた。

 最も衝撃を受けたのは、ワクチンの開発だ。mRNA創薬技術は、以前から知られていたが、コロナのお陰で、実用化が急速に進むことになった。世界中の人が治験者になったわけで、長期間経って、もしかしたら大変な後遺症が発現するかもしれないが、それも含めて凄いことだ。この新技術は、今後、さまざまな疾患への応用が期待されている。

 インターネットの利用も、一気に進んだ。YouTuberだけでなく、一般の人、中小企業、アーティストなどがネットを使ってさまざまな発信をするようになり、それを支えるさまざまなプラットフォームも提供されるようになった。この背景には、通信の高速大容量化、放送と通信の融合、高精細なテレビの普及、スマホやパソコン・タブレットの普及がある。ネット社会への基盤が整いつつあるところに、コロナで有無を言わさず実用化せざるをえなくなった。

 

(表3)テレビ、スマホ、パソコン等の出荷台数の推移
(注1)放送と通信を連携させた次世代スマートテレビ向けサービス
(注2)パソコン、タブレットは、他に合わせるため年に集計しなおした。
(出所)(出所)一般社団法人電子情報技術産業協会の統計による。

 

 GIGAスクール構想しかり、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)(注3)しかりである。コロナがなければ、ネット化、デジタル化に文句を言ったかもしれない先生方も、休校に当面し、ともかく対応せざるを得なかったに違いない。私は、企業に勤務していないので皮膚感覚として分からないが、テレワークでもチームで仕事がしやすいように、さまざまなアプリが提供され、企業はDXに必死なようだ。

 (注3) DXとは、組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、「顧客起点の価値創出」のための事業やビジネスモデルの変革のこと。例:フィルムカメラをデジタルカメラにする(デジタイゼーション)→写真現像の工程がなくなり、オンライン上で写真データを送受信する仕組みが生まれる(デジタライゼーション)→写真データを使った新たなサービスやビジネスの仕組みが生み出され、SNSを中心にオンライン上で世界中の人々が写真データをシェアする新しい文化が生まれる(デジタルトランスフォーメーション)

 

 コロナが収束すれば、また人々は集合して働くようになるのだろうか。通勤ラッシュは、復活するのだろうか。確かに、コロナ禍でも、緊急事態宣言が終わると、出社する人が増えるという傾向が見られた。しかし、これだけ長期間にわたって、リモートでの仕事が進むにつれ、リモートでも十分仕事が出来る社内体制づくりも進んだと思われる。自分らしい時間の使い方を覚えた人材は、会社を選ぶにあたって、それが可能な会社を選ぶだろうし、良い人材を得たい企業は、社内体制を変革せざるを得ないのではないだろうか。

 2年前にSDGsのセミナーをZOOMで受けていた折、参加者の一人がキャンピングカーを住みかにし、リモートで仕事をしながら、今週は鎌倉、先週は沖縄、その前の週は信州というように、好ましい場所を選ぶ多拠点暮らしをしていた。彼が言うには、この暮らしは、とても快適だが、たまには人と接触したい時もあるので、そういう移動式住居が集まりたい時に集まれるコミュニティがあったら良いのに、というようなことを言っていた。もしかすると、まちの在り方も変わってくるのかもしれない。(了)

 

 

1.コロナ関連分野の革新
2.インターネット利用の広がり
3.新しい働き方
4.新しい時代へのターニングポイント

 

 

05FBこのみ【著者略歴】
 富沢このみ(とみさわ・このみ)
 1947年東京都北多摩郡田無町に生まれる。本名は「木實」。退職、母の介護を経て、まちづくりに関わる。2012年より田無スマイル大学実行委員会代表。2016年より下宿自治会広報担当。2019年より、多世代交流・地域の居場所「どんぐり」オーナー。2020年にフェイスブック仲間と「西東京市カルタ」完成。2020年より下宿地区会館管理運営協議会代表。

 

 

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