待ってました、交番 10月半ばから工事再開
西東京市のひばりが丘団地で、改築中だった交番の工事が今年初めから中断している。建設業者が倒産したのだ。10月半ば、新たな業者の手でほぼ9カ月ぶりに工事が再開される。年明けにも2階建ての新交番がスタートしそうだ。
▊塩漬け9カ月
警視庁田無警察署ひばりが丘団地交番は、団地と道路を挟んだ市内谷戸町2丁目の交差点にある。老朽化したため改築することになり、昨年5月、有限会社けやき建設(国分寺市西恋ヶ窪4丁目)が約4600万円で落札し、ほどなく工事が始まった。ところが今年1月末に工事が中断。2月初めには、けやき建設が倒産してしまった。
それからほぼ9ヵ月間、鉄筋コンクリート2階建ての本体は出来上がっていいるのに外回りは手付かず。金網に囲まれたまま、塩漬け状態が続いた。
付近の住民は再開を待っている。近くのパン店の主人は「早く交番が元通りになってほしい。交番がないと不安ですよね。団地に新しいマンションが出来たので、交番が再開しないせいか、道を教えてほしいという方がよく来ます」と話していた。
交番改築工事の発注元は警視庁だった。9月初めに同庁施設課に問い合わせたら「工事は8割がた完成し、出来高払いで精算済み。新しい業者が決まったので10月から工事を再開し、来年1月末には完成予定です」という。
新たに工事を手がける株式会社明幸(板橋区赤塚8丁目)の担当者は「金網は新しく張り替えました。交番は内装がほぼ出来ていて、あとは網戸を付けたり駐車場や植木、看板などの工事が残っています。10月半ばから順次取りかかる予定です」と話していた。
▊はるばる来たぜ国分寺
業者が倒産すれば、影響は小さくない。けやき建設が工事中だったのはひばりが丘団地交番だけではなかった。小金井警察署国分寺北口仮設交番も工事が中断した。元々交番のあったJR中央線国分寺駅北口一帯は再開発の真っ最中。仮交番を開発地区の外に建て始めたのに、鉄骨姿のまま雨ざらしになっていた。
駅前の商店街で聞いたら「業者は夜逃げしたんだって。借金が相当あったってうわさだね」。30階を超える高層マンションが2棟予定され、交番のあった場所は建設工事の真っ最中だった。
折角来たのだからと、けやき建設の所在地に向かった。西武国分寺線の恋ヶ窪駅で下車。西武国分寺線、中央線、それにJR武蔵野線が交差する辺りを、地図を頼りに小1時間ほど歩き回った。それらしい場所にやっとたどり着いたのに、目指す建設会社は見当たらない。近くの喫茶店に入って尋ねると、「ほら、あそこだよ」と店主が外に出て指さした。その一角は、地面がむき出しの更地だった。
「先週、建物を解体したばかり。東京都やほかの業者とかが盛んに来てたね。いいことばかり言って借金を重ねたんだ。俺たちも踏み倒された口。社長を見つけたら殴ってやりたいぐらいだ」。8月末の雨上がりの午後、30分ほど事情を聞いた。怒りはなかなか収まらなかった。
▊建設景気の陰で
建設業界は不景気ではないらしい。倒産は前年より減少している。
民間信用調査機関の帝国データバンクによると、けやき建設が倒産した今年2月は全国で627件が倒産した。そのうち建設業は118件で、公共工事が高水準で推移していることを受け、前年同月比20.3%減となっている。ということは、不運が重なったのか、経営に問題があったのか。
電子入札情報によると、けやき建設は昨年、ひばりが丘団地や国分寺駅北口の交番のほか、都内の消防署訓練塔の新設、都立動物公園の施設改修、都営団地の公園トイレ工事などを次々に落札した。しかし今年2月3日、東京地裁は破産手続きの開始を決定した。破産管財人に選定された弁護士は「工事続行不可能な件は出来高分をいただき、契約を解除して引き渡しました。それ以外のことは、警視庁など発注元に聞いてほしい」。
ひばりが丘団地交番を囲む金網は、真新しいものに張り替えられた。工事会社などを告知する「建設業の許可票」も新しくなった。工事は10月半ばから始まる。2階建ての新交番がお目見えするのもそう遠くない。
(北嶋孝)
【関連情報】
・帝国データバンク 2015年2月倒産集計(リンク切れ)
>> http://www.tdb.co.jp/report/tosan/syukei/1502.html
・東京電子自治体共同運営 電子調達サービス
>> https://www.e-tokyo.lg.jp/choutatu_ppij/cmn/tmg/cmn/jsp/indexQ.jsp
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