東久留米市の「折り紙ギャラリー」開館3年 巨匠・吉澤章の作品を常設展示
紙を折って動植物、人物などさまざまな形を作って遊ぶ日本の伝統文化・折り紙は今や「ORIGAMI」として世界中に広まっている。折り紙を世界に紹介し、普及に貢献したのが創作折り紙の巨匠、吉澤章(1911<明治44>年~2005<平成17>年)だ。その吉澤の作品を展示するギャラリーが東久留米市にある。
栃木県河内郡上三川町出身の吉澤は、1938年(昭和13年)から独学で折り紙研究を始め、1954年(昭和29年)には研究成果を著書「折り紙芸術」として世に問い、同年「国際折り紙研究会」を創設、会長に就任した。以来、折り紙の普及と愛好者の交流の発展に生涯を捧げた。
1966年(昭和41年)からは外務省から折り紙講師としてオセアニア、ヨーロッパへ派遣され、訪問した国は54か国にのぼる。折り紙に関する吉澤の著書は英、仏、独、伊の4か国語に翻訳されている。
吉澤の折り紙は、糊やハサミを使わずに紙をひたすら折るというもので、動植物、人物、自然の風景、抽象(心象表現)まで多岐にわたる。直線が少なく、対象への鋭い観察眼と円熟した技巧から生み出される作品は、躍動感と生命感にあふれ「吉澤折り紙」呼ばれ、今も世界中の人たちに影響と感動を与えている。
1972年(昭和47年)、中国からジャイアントパンダが上野動物園に来たときは、パンダを観察するため1か月上野動物園に通い続け、1体のパンダを作るのに頭だけで40個作った話は今も関係者の間で語り草になっている。
吉澤の折り紙のギャラリーが東久留米市に設立されたのは、吉澤と交流があった塩川誠さん(91=東久留米市在住)の尽力による。出版社で吉澤の著書を刊行する担当だった塩川さんは、吉澤の作品を多くの人たちに見てもらいたい一心でNPO法人「創作折り紙吉澤章美術館」(代表・塩川さん)を立ち上げ、2020年3月、吉澤作品の常設展示場として「吉澤章 折り紙ギャラリー」がオープンした。
オープンが新型コロナの感染拡大時期と重なったため来場者は今も多くない。塩川さんは「折り紙を芸術の域まで引き上げた吉澤先生の作品を多くの人たちに観に来てほしい。観れば作品のすばらしさ、魅力がわかります」と話す。
(鈴木信幸)
【関連情報】
・吉澤章 折り紙ギャラリーニュース(国際折り紙研究会)
・‟折り紙”から‟ORIGAMI”へ 創作折り紙作家 吉澤 章(栃木県・上三川町)
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