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「避難所運営ゲーム」は奥が深い 熊本地震当日に疑似体験

By in 災害・防災 on 2016年4月20日

 

熊本地震の当日、避難所運営ゲームが実施された(多摩六都科学館)撮影©ひばりタイムス

避難所運営ゲームが多摩六都科学館で実施された。(写真©ひばりタイムス)

 大災害が起きたとき、住民が避難所でどう過ごすか。その運営をゲーム形式で疑似体験する試みが各地に広がっている。この「避難所運営ゲーム」(頭文字を取ってHUGと呼ばれている)が4月14日、西東京市の多摩六都科学館で実施された。この日、熊本地震が起きて、多くの被災者が避難所生活を余儀なくされている。被災状況を先取りして学ぶ試みとして市内各所でこのHUGを実施してきた田無スマイル大学の富沢木実さんに報告していただいた。(編集部)

 連日、熊本を中心とした地震の報道が続いている。日を追うごとに被災規模が大きくなり、心が痛む。避難所の様子もTVに映し出され、避難生活の大変さも窺える。東北の復興もまだ道半ばなのにと思う。「地震大国日本」にとって、被災・避難は、他人ごとでは済まされない。

避難所運営ゲームとは

 「避難所運営ゲーム」(HUG)は、静岡県が阪神淡路大震災を受けて開発したもので、避難所の運営を疑似的に体験することによって、さまざまな気づきを得ることができるという優れものだ。

 参加者が5~7人のチームに分かれ、被災者に見立てたカード約200枚を避難所である学校の体育館や教室に並べていく 。カードには、さまざまな被災者の情報(家族構成や年齢、家の破壊の程度、住んでいる地区、病気など配慮すべきこと)が書かれており、それらを勘案しながら場所を決めていく。

 さらに 4~5分に1回程度、「イベント」と呼ばれる出来事がアナウンスされる。たとえば、「毛布が20枚届いたので、配布方法を考えて下さい」とか、「トイレの水が必要なのでプールからバケツリレーして欲しい」、「○○さんがインフルエンザにかかったようです」などなど。これについても、各チームでどのように対応したらよいか考えていく。

 特に、東日本 大震災の後、日頃からの備えが必要とされ、防災用具・食糧等の備蓄や防災訓練に加え、このゲームの実施が全国的に広まっている。

真剣に取り組む

 2016年4月14日(木)に、多摩六都科学館でスタッフとボランティア会のメンバー約100人を対象に、「避難所運営ゲーム」を実施した。

 「多摩六都科学館は、現在、行政の避難施設に指定されていませんが、公共の施設であり、いつ避難所となるかもしれないので、休館日を利用して実施することにしました」と多摩六都科学館パブリック・リレーションズ担当の藤江亮介さん。

 参加者は、7人ずつ15テーブルに分かれ、西東京市市民協働推進センター「ゆめこらぼ」の内田雅俊センター長が進行役となり、ゲームが行われた。私は、進行の支援として参加。西東京レスキューバードの方々もボランティアで運営の手伝いに来られていた。

 今回は、避難所運営ゲームの前に、「乳幼児・妊産婦、肢体不自由者・要介護の高齢者、認知症、知的障がい者・精神疾患のある人、女性・少女」という特に配慮を必要とする人を取り上げ、この方たちが避難生活で困るであろうことをまず書き出すというゲームの助走となるワークも取り入れた。その後、ゲームの説明、ゲームの実施と続く。

 

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避難所運営に取り組む参加者(写真©ひばりタイムス)

避難所運営に取り組む参加者(写真©ひばりタイムス)

 

 どのチームも真剣に、被災者の状況を勘案し、イベント(出来事)に対応していた。ペットを連れてくる人が多いのに驚いたり、高齢者は体育館の入口付近では寒いのではないかと配慮したり、DV被害に遭っている家族を夫からどう守るか考えたり…と、約45分間集中し、話し合いつつゲームを進めた。

 終了後、他チームの結果を互いに見学しあうと、考え方の違いからカードの並べ方が異なり、また新たな気づきが生まれる。その後、手を挙げて、数人の方から感想が述べられた。「バタバタと始めてしまったが、最初から、ある程度、どんな事情を抱えている人が来るかを把握しておき、部屋の使い方を大まかに決めておけばよかった」「名簿を作る必要性を最後になって分かったのだが、作れなかった」などのご意見があった。

地域や小中学校でも

 実は、静岡県のゲームでは、被災してすぐの出来事と、数日してからの出来事が混ざっており、ゲームに時間がかかることから、田無スマイル大学が2013年に実施するにあたって、「被災から7時間の間の出来事」と設定し、短時間で体験できるよう工夫した。その後、市内各所や府中市などで実施してきたが、すべてこの方式を採用している。しかし、避難生活が長引いた設定の別バージョンも 必要かもしれないと感じている。

 現在、西東京市では、避難施設とされている小中学校ごとに教師と地域住民からなる「避難所運営協議会」が設立されている。実際に小中学校に避難所が開設された場合、この協議会メンバーが運営にあたる。

 避難所運営ゲームは、いざという時、協議会が実効ある組織となるには、前もってどのようなことを考えておかなければならないか、また、そこに避難する住民自身が(お客様ではなく)主体的に動く、あるいは運営メンバーに協力する必要があるのではないか…といったことを考えるきっかけを与えてくれる。

 西東京市では、ゆめこらぼが中心となって、各避難所運営協議会、小中学校の先生、公民館職員、ふれあいのまちづくり懇談会などを対象に、市内各所で避難所運営ゲームを実施してきた。足かけ3年で約30回というのは、全国的にみても多い方だと思う。

 また、田無スマイル大学では、今年度NPO等企画提案事業に認定され、中学生を対象に「生きるチカラを育てるワークショップ」と銘打って、このゲームを実施する予定だ。防災についての意識を高めるだけでなく、多様な人々に配慮することの大切さも学べると考えてのことだ。

 今回は、時間が短く、ここまでの話にもっていけなかったが、単にゲーム内の気づきに留まるだけでなく、日常生活への行動にまで結びつけるようにすることがとても大切だ。近所にどんな方が住んでいるか日頃から気を付ける、自宅の備えを万全にするなどなど。実際に、「揺れがあるとブレーカーが落ちる装置を購入した」「風呂の水を流さないようにした」「ビニール袋に排泄した物を凝固させる薬剤を購入した」などの行動に結びついたケースも報告されている。

 多摩六都科学館で実施した夜に、熊本で地震が起きた。いつ被災者・避難者になるとも限らない「地震大国日本」に住んでいる私たちにとって、日頃の備えが不可欠だとまさに実感した。市内での避難所運営ゲームの実施やそれを実際に活かす努力を途切れることなく続ける必要があると改めて感じている。
(富沢木実)

 

【関連リンク】
・多摩六都科学館 >>
・西東京市市民協働推進センター「ゆめこらぼ」(西東京市Web
・西東京レスキューバード(>>

 

【筆者略歴】
富沢木実(とみさわ・このみ)
 生まれ育った西東京市で、「自分たちのまちを良くするのは自分たち」と考え、行動する人を増やすためのさまざまな活動をしている。田無スマイル大学実行委員会代表。法政大学地域研究センター客員教授。

 

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