五感で体験「平和学習」 「散華乙女の記念樹碑」の武蔵野女子学院

投稿者: カテゴリー: 暮らし オン 2018年8月15日

武蔵野女子学院の散華乙女の記念樹碑(松岡氏提供)

 平和学習に力を入れる武蔵野女子学院中学校・高等学校(西東京市新町1丁目)社会科教諭の松岡千里さんが8月4日(土)、芝久保町のFM西東京生放送番組「ウィークエンドボイス」に出演した。学校敷地内には第二次世界大戦中、校内で爆死した生徒を祀った「散華乙女の記念樹碑」が建てられている。

 松岡先生は公民が専門。「戦争が起きて今の憲法ができています。『戦争』を伝えないと憲法の意義が分からないのではと思い、戦争に焦点を当て教材研究をしてきました」と話した。

 同校の近くにはかつて戦闘機のエンジンを製造した「中島飛行機武蔵製作所」があった。1944(昭和19)年12月3日、B29爆撃機の直撃弾を受けて、学校の防空壕に避難した4人の生徒が死亡した。1948(昭和23)年、当時の校長が哀悼の意を込め土を盛り、ワビスケ(椿)を植樹。1978(昭和53)年、記念樹碑が建立され、毎年追悼会が行われている。

 同校は2年前から設定科目として高校1年生総合コースを対象に週2時間の探求活用講座を設置している。松岡先生は、「積年の思いを盛り込めるフィールドワークなどができるので嬉しくなりました。学校も地域も戦争の被害を多く受け、多くの人が向き合ってきたことを取り上げると、生徒には心に迫ってくるものがあると思いました。今年の5月から7月の講座では母校の歴史を通じて、生徒たちが戦争と平和について身近に考えてほしい、生徒一人ひとりが語り部に、という思いを持って進めました」と言う。

 

「戦争と平和について身近に考えてほしい」と話す松岡千里先生(FM西東京)

 

 テーマは、「武蔵野女子学院の戦時中の歴史を通じて戦争と平和について考えていこう」。「教え込むのではなく、一人ひとりが戦争について向き合えるようにする。その上で、見る・聞く・触れる・歩く・話す・食べるなどを五感を使った学びを実践しました」と話した。

 講座では、卒業生の島津好江さんから、学院や武蔵野地域の戦中・戦後の体験談を聞き、戦時中に食べた「すいとん」作りも体験した。また、校外フィールドワークでは、近隣にある延命寺で、住職から戦争中の話を聞き、実際に爆弾の破片や防空頭巾など戦争当時の実物にも触れた。「本物の『出征のぼり』を見ると生徒たちはどんな思いでこれを作ったのかと感じることができました」と話していた。

 

戦前の防火訓練。写真は武蔵野大学所蔵。1940年(昭和15年)撮影(CD「戦中日誌類からみた戦時下の武蔵野女子学院」から)(松岡氏提供)

 

 平和学習のまとめは新聞各社へ投稿した。掲載された生徒の投書には「この授業を受ける前までは単純に『怖い』という感情から戦争について知ることを恐れていた。しかし、授業を終えるたびに「戦争についてもっと知りたい」と思うようになっていた。戦争はいかに残酷で、人の心をどれだけ傷つけるものかを後世に伝えたい、という思いが生まれたからだ」(東京新聞「発言」2017年8月17日付)などの思いが綴られていた。また、「むさしのFM」の番組「発信!わがまち・武蔵野人」(2017年9月1日)の公開放送にも出演し平和への思いを伝えた。
(柿本珠枝)

 

【関連リンク】
・散華乙女の追悼会を執り行いました(2017.12.04)(武蔵野女子学院
・平和案内説明板マップ(武蔵野市

 

【筆者略歴】
柿本珠枝(かきもと・たまえ)
旧保谷市で育ち、現在西東京市田無町在住。1998年(株)エフエム西東京開局から携わり、行政や医療番組、防災、選挙特番など担当。地域に根差した記者としても活動している。

 

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