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下水道受益者負担問題の見解説明へ 西東京市議会の特別会計決算「不認定」受け

By in 市政・議会 on 2018年11月15日

2017年度の特別会計決算書。下水道特別会計だけが不認定となった(クリックで拡大)

 西東京市議会第3回定例会で、2017年度決算が審議されてから1ヵ月半が過ぎた。一般会計などの決算は認定された。しかし下水道特別会計決算だけが賛成少数で『不認定」となった。旧保谷市時代の受益者負担金徴収の時効対策問題が尾を引き、2015年の不可解な事務手続きの「空白」が明らかになって決算委員会が紛糾したのだ。市は陳謝し、問題の整理と今後の方針の説明を約束した。11月16日から始まる第4回定例会で、その内容が明らかになる。

 

旧保谷市の下水道受益者負担金問題

 

 問題の発端は1999年5月、監査委員の監査の過程で、旧保谷市の下水道事業受益者負担金の徴収猶予額の一部が時効になっていると分かったことだった。放置すれば順次時効になって、徴収できない消滅分が増えていく。市は台帳や公図、農地の相続など異動状況を半年かけて調査し、監査報告書が11月末に出たあと、市議会の全員協議会にその結果を報告した。

 西東京市は旧保谷市と旧田無市が2001年1月に合併して誕生した。下水道事業は両市の制度が違うため旧2市の受益者負担条例がともに暫定施行され、合併から17年経っても1市2制度が続いている。問題になったのは旧保谷市のケースだった。

 受益者負担制度は、公共下水道が整備されて利益を得る人に相応の額を負担してもらおうという趣旨。旧保谷市の場合、農地として使われていると、申請によって負担金の2分の1相当額の負担金の徴収を猶予する。時効は5年。このため5年ごとに更新手続きを行い、時効の中断が続いてきた。ところがある時期から更新手続きが行われないまま5年が過ぎ、時効になって負担金を徴収できない農地が生まれた。時効になったのは、1981年~1983年と1988年の計4年度分だった。

 

地権者と市、議会も対応

 

 当時の資料によると、市は翌2000年に、時効分を寄付してくれるよう地権者の農家らを回って協力を依頼した。しかし法的根拠のない寄付を断った人が相当数いたため、市の「欠損額」は最終的に約423万円に上った。この「取り損ねた分」をどう穴埋めするか。関係者は知恵を絞った。

 保谷高範市長が自らの給料1ヵ月分を50%削減。ほかの幹部職員、それに徴収猶予継続手続きを怠った当時の市長都丸哲也氏ら退職者に協力を募り、計282万円の寄付を集めた。残りの141万円は、保谷市長が退職後に全額を支払った。市議会も自戒の意味を込め、一律3万円の報酬減額条例を議員提案した。反対はあったものの、最終的には賛成多数で可決し、事実上、補填に協力した。

 合併して西東京市が生まれる直前、市ぐるみで身を浄める「儀式」だったのかもしれない。

 

更新手続きは寄付強要の恐れ?

 

 新たな問題は西東京市になってから生じた。時効になった分を寄付の形で納付すると承諾した人たちに、合併後の西東京市は定期的に「徴収猶予相当額納付猶予申請書」を提出してもらい、意思確認をしてきた。最初が2000年、その後2005年、20010年と5年ごとに事務手続きを繰り返した。ところが20015年にその更新手続きを停止していたことが明らかになったのだ。決算委員会は紛糾した。

 

2017年度決算の寄付金はゼロだった(クリックで拡大)

 

 都市整備部の湊宏志部長は停止の理由を「度重なる寄付のお願いは、寄付の強要と受け取られる懸念があるとの判断だった」と述べ、「平成22年(2010年)以降、現在に至るまで更新事務は行っていない」と説明した。

 地方財政法では、自治体の寄付強要を禁止している(第四条の五)。このため旧保谷市時代に定めた納付依頼に関する「要綱」は、「所有者の任意の意思を尊重し、強制または強要してはならない」と念を押している。こうして2000年から3度、更新手続きを重ねた。ところが4度目になると「寄付の強要と受け取られる懸念がある」と判断が変わってしまった。

 

都市整備部に「判断」文書なし 「機関決定が必要」と市長陳謝

 

 更新手続きの停止は誰が、どういう手続きで決定したのか。
 湊部長は「2014年12月に、都市整備部として今後更新手続きを行わないと判断した」と述べた。顧問弁護士らへの「法律相談はしなかった。総務法規課の担当者に検討してもらい、意見をいただいて都市整備部が判断した」と答えた。さらに不可解なことに「総務法規課に相談した公文書は残っていなかった」「部内の意思決定にかかる文書もない」とも述べた。

 旧保谷市が挙げて決定、実施してきた方針が、「都市整備部」の判断で覆され、判断内容と過程を示す文書もない、との回答だった。市長、副市長に事情説明したのは「第3回定例会が始まる前の9月14日」だった。「部の判断」は4年間、部内にとどまっていたことになる。

 池澤隆史副市長は旧保谷市からの案件であっても「西東京市として取り扱いの方針を決める際は、組織としての機関決定が必要だった」と説明。丸山浩一市長は「今回の事案は組織として機関決定されていなかった。組織の長としてお詫びする。今後は法的な検証を踏まえ、しっかり意思決定したい」と陳謝した。

 

「要綱」失効、時効は10年…

 

 「法的な検証」を進めると、更新手続きの根拠も揺らいでくる。
 納付猶予手続きは当初、2000年に定めた「要綱」を根拠に進められた。ところが翌年1月、合併して西東京市になったとき「要綱は引き継がれなかった。現在『失効』している」(湊都市整備部長)。市がこれまで5年ごとに実施した更新手続きの根拠は「空白」。「あくまで任意の寄付のお願い」というのだ。

 池澤副市長は、「旧保谷市で事案を確認した時点で、債権は消滅した」とした上で、「今後寄付をお願いすることに問題がないかどうか。要綱がない中でお願いするのか。根拠をどうするか。これらの課題を法的に整理して市の対応を考えたい」と述べた。

 地方自治体の問題を多く手掛けている東京平河法律事務所(千代田区永田町)の橋本勇弁護士に事情を伝え、時効問題の見解を尋ねた。橋本弁護士は現在、西東京市の監査委員。この問題の発端となった旧保谷市の監査報告書にも、監査委員の一人として名前を連ねていた。

 「下水道事業の受益者負担は、下水道法に基づく公法上の債権で、時効は5年です。しかし、時効になった後の寄付の約束は民法の契約になり、私法上の債権に当たるのではないですか。いま問題になっている詳しい事情を知りませんが、一般的には、民法の契約の時効は10年です」と言う。

 決算委員会で「時効10年」に触れた遣り取りはなかった。質問する議員も答える市も、寄付協力のお願いの法律的な性格にまで目が届かなかったのかもしれない。

 

消滅負担金は現在9092万円

 

 一般質問で最初に問題提起したのは、自民党の浅野髙司氏だった。旧保谷市時代から議員を務め、今期で勇退の意向を明らかにしている最古参議員。しかも時効問題が発覚した1999年当時、監査委員の一人でもあった。それだけに本会議で口火を切り、決算委員会でも真っ先に質問に立った。浅野氏を引き継ぎ、稲垣裕二氏(自民)、森輝雄氏(無所属)、山崎英昭氏(統一会派みらい)が決算委員会で質問した。薄皮が剥げるように、未知の事実が次々に明るみに出た。

 2017年度下水道特別会計決算は決算委員会で不認定になった後、本会議でも賛成少数で不認定となった。賛成したのは、自民6人、共産4人、無所属の納田さおり氏の計11人だった。自民の浅野氏と稲垣氏は採決時に退席した。

 旧保谷市時代に、寄付を断った人たちの負担金分など最終欠損額は約423万円だった。しかし負担金相当額を将来寄付すると約束したケースはもっと多かった。その総額は1億1022万円(126件)に上った。その後、農地を宅地にして約束通り負担金相当額を寄付したり、道路などを造ったため減免されたりした場合もある。都市整備部が把握している「消滅した受益者負担金の額」は「9092万660円になる」(湊部長)という。

 合併から17年。土地所有者の代替わりも進んでいる。今後も協力を依頼するのか。依頼したら親の代の約束通り、負担金相当額を将来寄付すると同意してくれるのか。寄付を拒否して「欠損」になったら、どう対応するのか。

 浅野氏と森輝雄氏の質問通告に、下水道受益者負担金問題が挙がっている。市の見解と方針は、来週予定される議会の一般質問で明らかにされるだろう。第4回定例会の動きから目を離せない。
(北嶋孝)

 

【関連リンク】
・一般質問通告(平成30年第4回定例会)(西東京市Web
・付議案件・結果(平成30年第3回定例会)(西東京市Web

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One thought on “下水道受益者負担問題の見解説明へ 西東京市議会の特別会計決算「不認定」受け

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    本文中、元市長の名前が違っていました。「保谷孝範」氏ではなく「保谷高範」氏です。確認が不十分でした。お詫びして訂正します。
    保谷市長が給料半減したことや、議員報酬の一律引き下げ提案に反対があったことなどを追加し、中見出しも差し替えました。(編集部)

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