「そしてトンキーもしんだ」を朗読、紙芝居も 平和を願う非核・平和パネル展

投稿者: カテゴリー: 暮らし オン 2019年8月10日
非核と平和パネル展朗読 転用不可

平和を願う非核・平和パネル展が開かれた。手前が1トン爆弾の模型(写真は谷口捷生さん撮影)

 非核・平和パネル展が8月2日から7日まで、今年も田無駅北口アスタセンタ―コートで開催された。「非核・平和をすすめる西東京市民の会」が市と共同して行っている企画で、70年以上前に西東京であった戦災の様子をパネルにまとめ、多くの人が犠牲になった1トン爆弾の模型も展示している。

 

次の時代に繋げる場

 

 「あと少しで弾を受けて死ぬところでしたよ」「ここに落ちて来たんですよ」「(田無駅北口にある)平和のリンクの事を知ってますか」…。去年、初めて受付を手伝った時に訪れた人たちから聞いたことばの数々に、知らなかった事実の多さと重さ、今だからこそ伝える場が必要だと痛感した。

 今年も初日から仕事の合間に手伝った。2日の設営の時は美しい折り紙や花に囲まれ、当時の新聞の記録や工夫された手書きの資料などが展示されて、買い物帰りの人たちの眼を引いていた。とりわけ市と市民で作った1トン爆弾の模型に、手で触る若者の姿もあった。

 

非核と平和パネル展

戦争の記録をパネルで展示(谷口捷生さん撮影)

 

 もっと多くの人たちに足を止めてほしい、話を聴いていてほしいと願う。今年も平和を祈った朗読や紙芝居、手話での歌、ギタ―演奏と歌、フラダンスなどが市民グループの手で催され、訪れた人の数は3日(土)90人、4日(日)180人以上に及んだが、もっと交流を広げ深め、次の時代に繋げられる場になればと思った。

 

何かできないかー子どもたちへのメッセージ

 

「そして、トンキーもしんだ」の表紙(クリックで拡大)

 私も何かできないか考えた。思いついたのが「朗読」だ。児童作家、たなべまもるさんが描いた絵本「そしてトンキーもしんだ」を基に「語りつごう あの日 あの頃」という戦争を語り継ぐ朗読会の文集(小泉靖子さん編)に書き下ろした作品だ。巻頭には「戦争を忘れないで下さい。知って下さい。そして学んで下さい」とある。上野動物園の戦争時に殺された動物たちの話で、毎年8月15日にラジオで故秋山ちえこさんが朗読していた「かわいそうな象」の話も思い浮かぶ。

 今年の初めに縁があり、子どもたちの前で戦争の話をする機会があった。実体験もない私ができることはと悩みながら考えた。父母から聞いた幼な心にも焼き付いた当時の戦争の話、それから子供たちに身近に感じてもらえるのはと選んだのが「朗読」で、「そして、トンキーもしんだ」というこの作品だった。

 

こどもたちの声

 

 最初に「戦争の話をおじいちゃんおばあちゃんから聞いたことある?」と生徒に聞いた。手を挙げる生徒は一人もいなかった。

 朗読を始めると、すすり泣きが聞こえた。休憩時間には持参した原爆の図を描いた丸木俊さんの「ヒロシマのピカ」の絵本に、「本当にあったことなんですか」という質問もあった。

 最後に「今日のお話、頭の片隅に残しておいてね。それから日本軍がアジアで戦争の時に何をしたかも歴史の中で学んで下さい。今も悲しい思いをしている人たちもいます。それが戦争です。ゲームの時間を少し減らして考えて、考えて下さいね」と伝えた。

 その後、大勢の子どもたちから感想が届いた。「初めて戦争の話を聞きました。何の罪もない動物がかわいそう。戦争はそんなに人を狂わせるのでしょうか?」「もし子どもができたら絶対に戦争はダメだと教える」「戦争が激しくなったことを教えるために動物を殺すなんて残酷」「トンキーごめんね」「なんで戦争は起きるんだろう。もっと話し合いすれば傷つかない」「戦争は痛そうだ」「戦争で家族が死んだらどんなに悲しいか。決めた人に責任が取れるかと聞きたい」…。子どもたちの純粋な心に圧倒されると同時に、大人の責任を痛感した。

 

戦争って-朗読を通して

 

 今回のイベントで、その「そして、トンキーもしんだ」を朗読した。聴いて、感じて、考えてほしかった。残念ながら聞いた子どもは少なかったけど、訴える場を少しでも増やしたかった。

 当時の飼育課長小森さんの後書きの言葉を添えた。

 「この、ゾウを殺さねばならなかった事件は、時が経つにしたがって、だんだんわかりにくいことが多くなってきます。それは、この時代の動物園をとり囲んでいた社会のの状況そのものが遠く、わかりにくくなっているからです。この時代、世間では多くの人が家族を、父を、夫を、そして子どもたちを戦場に連れ出され、そして失っていった時代なのです。国のため、戦争に勝つためと命令されて、動物たちは例外とは許されなかった時代なのです。この悲しい事件を通して、知ってほしいのは動物のかわいそうさだけではなく、戦争がいかに悲惨なものかということです。戦争は人々を狂気の鬼にするものなのです。そうした流れの中でこのお話をとらえてほしいのです」

 静けさの中で聴いている人たちの思いを感じた。「3階から聴いている人たちもいましたよ」「泣きながら聴いている人もいました」。そんな声を届けてもらった。

 この時代に生きるものとして、どうしてこういうことが行われたのか、今、どういう時代なのか、横にいる若者は何を感じているか、そのためにはどういう一歩を踏み出せば
いいのか、再び考える機会となった。

 

力を合わせて

 

 もうひとつ、23歳の時に来日し、詩や絵本を書き続けているアーサー・ビナードさんが「原爆の図」が展示してある丸木美術館に7年間通い続けて、完成したばかりの「ちっちゃいこえ」の紙芝居を上演した。ビナードさんが丸木夫妻の思いを胸に葛藤し、何度も書き直し遂に完成した重みを感じながら、少しでも伝えるべく素人の私が読んだ、猫のことば、サイボウ、生き続ける事…。

 

紙芝居も上演(増田恵津子さん撮影)

 

 紙芝居はすごくいい道具だとも発見した。技術はこれから。長年続けている方たちからも教えて頂こうと。それも関わった故の楽しみ。言葉や音楽やいろいろな表現で道を作ることの素晴らしさも感じた。今年も訪れた方から戦災時の田無の様子、中国から引き揚げてきた時の話、今の日々の暮らしのことなどたくさん聴いた。「広島の被爆者なんです」と語り始めた方もいた。まだまだ聞きたいことはある。伝えていくこともある。これからもこのような場を作っていけたらと切に思う。来年もがんばりましょう。再びご協力お願いいたします。
(穂坂晴子)

 

【関連リンク】
・非核・平和パネル展(ゆめこらぼ
・そして、トンキーもしんだ(国土社
・単品紙芝居「ちっちゃい こえ」(童心社

 

【筆者略歴】
 穂坂晴子(ほさか・はるこ)
 西東京市在住19年。児童教材出版社勤務後、日本語・こども読み書き教室開室。 「非核・平和をすすめる西東京市民の会」「SAVEザ9条・SAVEザ憲法の会」「戦争ホーキの会」会員。

 

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