サロン「ぷらっと」7ヵ月ぶりに再開 地域の人たちが集う「憩いの場」

投稿者: カテゴリー: 暮らし オン 2020年10月13日

マスク着用でコミュニティづくりについて意見交換(写真1)

川村 匡由(地域サロン「ぷらっと」主宰)

 新型コロナウイルス感染拡大の防止のため、各地の地域サロン(カフェ)が開催を見合わせているなか、今年3月以降自粛していた筆者主宰の「ぷらっと」が10月11日(日)、「3密」とソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保などに努めながら7ヵ月ぶりに再開した。今後、感染の終息を見据えつつ、これまでと同様、毎月第2、3日曜日午後1~5時、参加費1人100円(茶菓とも)で自由におしゃべりし、交流してもらうことになった。

 

 場所は武蔵野市境3‐12‐10、ソフィ―武蔵野101号室で、JR中央線・西武多摩川線の武蔵境駅北口から徒歩5分。西東京、東久留米方面からは西武鉄道池袋線ひばりケ丘駅前から「武蔵境駅行き」の西武バスに乗車し、終点より2つ手前の「武蔵境自動車教習所入口」で下車、徒歩1分の3階建ての賃貸マンションだ。ここの1階のリビングルームと書斎を16年前から地域に開放し、毎月第2、3日曜日の午後、だれでも「ぷらっと」立ち寄り、団欒(だんらん)したり、フォークソングを楽しんだりして交流を深めてもらえれば、という“憩いの場“である(写真1)。

 

ミニ講座や見学会、一品持ち寄りパーティーも

 

 ただ、他のサロンと違うのは、参加者のリクエストがあれば筆者が年金や医療、介護、老活・終活、防災、山歩きについてミニ講座(参加費同300円)を開講。「人生100年」をより充実して送るため、参考となる情報の発信地としての「プラットホーム」という意味合いもある。

 

 このほか、5、10月、屋上で「一品持ち寄りパーティ―」を開いたり、希望者と周辺の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの見学会(参加費同500円)を催したりしていることである。1階奥には駐輪場や乗用車1台分の駐車場を無料で利用できるともあって、地元の武蔵野市や西東京市、東久留米市をはじめ、練馬区などの自治体や社会福祉協議会の職員、議員、事業者も顔を見せ、各種委員会の進め方や本の出版の依頼、メディアのインタビューの場ともなっている。

 

 また、平日は筆者が主宰している福祉デザイン研究所(非営利任意団体)の研究会を開催し、首都圏の大学教授など会員約10人が参加、これまで独立行政法人福祉医療機構(WAM)などから研究助成を受け、各種調査・研究に従事し、その結果をシンポジウムや著作を通じて問題提起している(写真2)。

 

賃貸マンションの1階で開いている「ぷらっと」(写真2)

 

夏場は軽井沢へ

 

 さらにユニークなのは、毎年7~9月の夏場にサロンをクローズし、涼を求めて軽井沢に活動の場所を代え、旧軽銀座やショー記念礼拝堂(教会)、北原白秋の歌碑、旧三笠ホテル、追分宿郷土館めぐりや碓氷峠、離山、小浅間山、浅間牧場などでのハイキングに出かけていることだろう。

 

 また、群馬県嬬恋村の鹿沢(かざわ)温泉の公共の宿に2泊し、江戸時代の浅間山「天明の大噴火」の被災地を訪ね、防災セミナーを行っていることである。

 

 それもそのはず。筆者は山岳紀行家(元日本山岳会会員)でもあって、約30年前、地元に山荘を建てて以来、毎年、夏から秋にかけてリゾートライフを満喫しており、『いまからはじめる中高年の山歩き』(ミネルヴァ書房)などを出版したり、各地の自治体やNPOの生涯学習講座で山歩きの話や写真撮影などの出前講座を通じ、関係者との交流にも努めている(写真3)。

 

夏は軽井沢周辺で山歩きも(写真3)

 

「終活互助」に取り組む

 

 目下の研究は地域住民や研究仲間と西東京市向台町の武蔵野徳洲会病院などの協力を得て、これから3年がかりで武蔵境の賃貸マンション、または西東京市向台町の戸建て住宅のいずれかを有志2~3人が共同生活する一方、リビングルームを地域に開放、防災・減災も含めた「終活互助」に取り組むことである。

 

 このため、このプロジェクトの構想を今年3月、同病院の講堂を借りて披露する予定だった。しかし、コロナショックで来春以降に順延せざるを得なくなった。それでも、全国初の国民主権・自治による地域福祉実践であるだけに是が非でも実現させるべく、来年3月に開催できないか、思案中である。また、このシンポジウムは筆者も理事をしている一般社団法人シニア社会学会(会長:袖井孝子・お茶の水女子大学名誉教授)の合同研究会のイベントも兼ねている。

 

「高齢者支え合いネットワーク」活動の拠点を提案

 

 さて、西東京市では2020年度現在、市内に計約40ヵ所のサロンが開設され、地域住民の貴重な交流の場となっている。これは2001年、田無市と保谷市が合併し、西東京市が誕生したのを機に、「新生・西東京市」として地域福祉を本格的に推進したいとする当局の依頼を受けた筆者が、「みんなでつくろう 安心なまち」をキャッチフレーズに、旧田無市での高齢者見守りネットワークとふれあいのまちづくり事業を地域福祉として一体化し、かつ旧保谷市と合わせ、全20小学校区(当時)のすべてで福祉会館や小学校の廃校、宅老所、古民家などを「高齢者支え合いネットワーク」の活動の拠点とすることを提案。それとともに、各地区に地区社協を設置して地域福祉として推進。合併効果をあげるべく、財源は市、運営は社協が担当し、地域住民に呼びかけてはと勧めた。

 

 これを受け、地域住民がサロンとして提供する自宅を武蔵野市がバリアフリーに改修後、1戸当たり年間最高1000万円を補助し、NPOなどに委託する「テンミリオンハウス」事業、および全町内会をグルーピングし、地域福祉を推進したいとの三鷹市社協の依頼を筆者が受け、研修講師として関わった「ほのぼのネット」事業を関係者と視察した。

 その後、西東京市の場合、旧田無市ではけやき小学校区(旧西原地区)、旧保谷市では保谷第一小学校区をモデル地区に指定。夜間、計3回の住民懇談会を行ったあとモデル事業としてスタートさせ、その後、現在、40ヵ所ものサロンが開設し、今日に至っているもので、今後は地区社協の設置によりさらなる地域組織化となればと願っている。

 

「困ったときはお互いさま」をモットーに

 

 今年度再開初日となった11日(日)のサロンは台風の影響もあって、当日、参加を予定していた女性ソーシャルワーカーなど3人は次回18日(日)に延期のむね連絡を受けた。それでも向台町1丁目のサロンやNPO法人ワーカーズコープのスタッフ、さいたま市の筆者の教え子の計3人が立ち寄り、それぞれの地元の現状や近況、最近の政局を意見交換するなど有意義なひとときを過ごすことができた。

 

 「ぷらっと」では今後もこのような有志の参加を通じ、地域福祉のささやかな実践として息長く取り組んでいきたい。なぜなら、「ぷらっと」は数年前から武蔵野市の「武蔵野プレイス」および西東京市の「ゆめこらぼ」に市民団体として登録しており、サロン活動を通じ、「困ったときはお互いさま」をモットーに地域住民の有志と連帯し、ともに安全・安心な生活を送るべく地域福祉の実践に努めたいからである。それはまた、地元武蔵野大学に今なおお世話になっており、次代を担う多くの卒業生のその後の人生を見守っていくことも務めだと思うからでもある。
(写真は筆者提供)

 

【筆者略歴】
 川村匡由(かわむら・まさよし)
 1946年、静岡県出身。立命館大学文学部卒。早稲田大学大学院人間科学研究科博士学位取得、博士(人間科学)、行政書士有資格。現在、武蔵野大学名誉教授(社会保障・地域福祉・防災福祉)、世田谷区社会福祉事業団理事、北区社会福祉協議会成年後見制度推進委員会会長など。主な著書に『社会保障再生(近刊)』『介護保険再点検』『防災福祉コミュニティ形成のために実践編』『防災福祉先進国・スイス』『地域福祉とソーシャルガバナンス』など。

 

【関連情報】
・川村匡由のホームページ(HP
・一般社団法人シニア社会学会(HP

 

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