居場所づくりから地域の輪へ 講演会「中学校にカフェをつくろう!」
西東京子ども放課後カフェ講演会「中学校にカフェをつくろう!」が7月9日、田無公民館で開かれました。高校の居場所カフェ運営や青少年のキャリアづくりを支援してきた石井正宏さん(NPO法人パノラマ理事長)の講演のほか、市内の青嵐中、ひばりが丘中、田無一中、お隣小金井市の緑中の事例が発表され、100人を超える参加者が交流しました。この集まりは西東京市公民館市民企画事業。参加した丸山修さんの報告をご覧ください。(編集部)
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先着60名、早いもん勝ち、ということで、満席だったら譲ろうと時間つぶして10分前に行きましたら、10席増やした最後の70番目の席に滑り込み。そのあと来た人は別の部屋(カフェの再現と展示スペース)に急きょ追加で設けた中継会場での参加になりました。熱中症注意報が出される中、参加者・運営者110人はすごい。中学生の居場所づくりへの関心の高さが実証されました。
冒頭、ワンフロア下の中継会場に映像・音声を送ることによって生じる時間の遅延を意識したリハーサルが披露されました。運営側は大変そうでしたが参加者には面白かった。
小金井市緑中学校は放課後子ども教室の制度を利用して、週に一度程度実施されているとのことでした。それを見学した西東京市の育成会ひろがりが立ち上げた田無第一中学校の放課後カフェは、実習室にて地域のさまざまな団体や個人を巻き込みながら実施していて、青嵐中学校では主任児童委員さんや民生委員さんを中心として図書室を利用したブックカフェとなり、ひばりが丘中学校では児童館の職員も協力してはじまった。それぞれ特色のある事例発表は写真を中心にわかりやすく具体的。教育や学習臭くなくカフェっぽいプレゼンテ―ションでとても良かった。
田無一中の育成会ひろがりが緑中学から“パクった”という赤ちゃんと中学生のふれあいはとてもほほえましく、一人っ子や兄弟の少ない今どきの中学生には貴重な経験であり、緑中学や神奈川県立田奈高校で試みられているおやじのお気に入り、お宝の漫画を並べるのも、中学生や高校生とおやじに共通の興味・話題を醸し出す工夫として感心した。
休憩時間のカフェ体験は、中継場所でもある別室にて、スタッフがいれたての珈琲や冷たい飲み物を参加者に提供。カフェについての掲示物や、実際に中学生が遊んでいるゲームもあり、どれも興味深かった。
一息ついた後の田奈高校の図書館で行われている高校内居場所カフェ「ぴっかりカフェ」(*1)の発表は勉強になりました。ここを運営されているNPO法人パノラマ理事長の石井正宏さんのお話は素晴らしかった。
「やり直しのきかない社会で、学校から排除され、人生の前半で躓いた若者のその後の人生はどうなるのか?」
「正規労働と福祉的就労のどちらの側にも辿り着けない若者たち(非正規労働)の移動の可能性を高める支援と政策-福祉以上就労未満の若者たち」
「支援機関に辿り着くまでに10年かかる。在学中に学校以外の所属を作るサポート…目指すべきは教育と雇用の接続支援」
「溜めのない(*2)学校で、居場所が持てないことから不適応を起こす生徒たち」で、居場所が持てないことから不適応を起こす生徒たち」
「卒業生や地域住民が学校に入りやすくなり、生徒の社会関係資本が広がる、学校と地域をつなぐ2.5プレイス(*3)モデル」
「学期、学年、卒業など限られた期間内に結果を出す評価者の教師は短期決戦型スペシャリスト、中退や卒業、所属にとらわれず社会的自立を目標とする非評家者の外部支援者は長期決戦型ジェネラリスト」
「貧困支援のポイントは、誰もが利用でき、バレるという感覚を持たない…スティグマ(恥辱)を生まない支援」(*4)
「テストの点は普通で、学校にもちゃんと来ていると重大な課題に先生は気づけず、生徒は言い出せない…一般的な個別相談と交流相談の違い」
「経済資本→文化資本→社会関係資本→自尊心・自己肯定感(夢や希望)から「文化資本→社会関係資本→経済資本→自尊心・自己肯定感(夢や希望)へ…積み上げベースを文化資本で再構築する」
「人は漠然とした不安の状態では課題解決の行動は起こせない…不安の大きな固まりをChunk Down(*5)して明確な課題にする」
「教師の専門性では解決できない課題の発見…司書の専門性では解決できない課題を司書は発見している」
……などなど。
自分の子供が中学生時代(田無一中)、自分は中学校に数回(体育祭と文化祭)しか行ったことがない会社人間でした。子供は当時、学校内にカフェはないので放課後は、よく南芝久保通りにあった肉屋さんにたむろし、数人でコロッケ立ち食いしてから帰宅していたようです。肉屋さんにはまちのたまり場としてずいぶんお世話になりましたが、今は廃業されて在りません。中学校カフェも高校カフェも、ご紹介では甘いもの(カルピス、お菓子)が人気ということでしたが、コロッケもどうでしょう…なんてことと、以前発表を聞いたことがある、いなぎFF(Friendly Family)ネットワークが稲城市城山文化センターの陽だまりスペースを利用して取り組んでいる「中高生の居場所づくり」(*6)開設に至る壁や運営当初の悪戦苦闘の話しを思い出しました。
(丸山 修)(写真は主催の「西東京子ども放課後カフェ」提供)
【注】
*1 神奈川県立田奈高等学校「ぴっかりカフェ」>>
*2 溜めのない:多くの学校では学校内には使用目的が明確な場しかなく、いわゆる“たまり場”がない、最近、学校によっては階段の踊り場やフリースペースをたまり場にする例もある)
*3 プレイス:ファースト・プレイス=家、セカンド・プレイス=学校や職場、サード・プレイス=地域や社会、この場合の2.5プレイスは、学校内に学校以外の要素を持ち込んだ場
*4 バレるという感覚、スティグマを生まない=利用者も第三者もそこが貧困な子が利用する場、特殊な場というふうに思わない感覚
*5 Chunk Down:固まりを分解して要素ごとに整理すると絡み合って潜んでいる課題が見えてきて行動に繋がりやすくなる。
*6 いなぎFFネットワーク 中高生の居場所づくり >>
【筆者略歴】
丸山 修(まるやま・おさむ)
1948年生まれ 小平市育ち 西東京市在住50年。1979年2月~一般財団法人高度映像情報センター(AVCC)勤務。2008年1月~2017年4月末 民設民営の公民館「霞が関ナレッジスクエア」運用統括・シニアプロデューサー。2012年~2017年3月、岩手県大船渡市の「デジタル公民館まっさき」事務局。西東京市では「みんなの学校」上映会、中学校の「避難所運営ゲーム(HUG)」などにサポータ参加。食と農の体験塾 大豆編 2017 塾生・ロクトリポート農作業体験 記録係。