ダイエットと健康、家族の絆も サイクリングの魅力にはまって
高速走行用のロードバイクが目に付くようになった。独特のドロップハンドル、スマートなヘルメット、身体にピッタリのサイクルパンツやジャージ…。週末には家族とも遠出する西東京市芝久保町在住の松岡正人さんに、サイクリングの魅力と効果、留意するべき安全対策などについて寄稿していただいた。(編集部)
運動不足で始める
自転車というと、近所への買い物や通勤通学用の「ママチャリ」を思い浮かべる方が多いと思うが、近頃ではロードバイクもだいぶ市民権を得てきている。筆者が運動不足解消のためにサイクリングを選んだのは、ジョギングよりも足首や膝に負担がかからないことと、通勤に自転車を使うことを考えたからだ。土日も仕事することが多かったので効果的に運動するにはいい選択だと思った。結果紆余曲折はあったものの、体重を12キロくらい減らすことができた。一緒に自転車に乗って遊んでくれる友人も見つけることができた。妻もロードバイクに乗ってくれることになったので、週末夫婦でちょっと遠出することもある。
ロードバイクは、高速走行を目的に設計された自転車。重さはママチャリの半分ほどなので、軽く持ち上げることができる。タイヤの幅も半分ほど。変速機は16段から24段程度装備されている。ハンドルは途中からくるんと丸く湾曲している。シティバイクやクロスバイクはハンドルが棒状なので、長い距離を走ると疲れてしまう。しかしロードバイクはドロップハンドルなので、持ち手の位置によって上体の姿勢を変えることができる。長距離を走るために生まれた形状だと思う。
ということで、西東京でのサイクリング歴は6年、年間の走行距離は2000キロから3000キロになる。そんな週末のロードバイク生活をご紹介したい。
楽しみが増える
西東京市の南のはずれに多摩湖自転車道がある。わずか10キロほどで多摩湖まで行けるコースだが、夏場は湖畔の周回路の木陰を、涼しさを感じながら走ることができる。自転車道沿いに喫茶店やうどん屋がたくさん並んでいるので、そこかしこで休憩ができる。私のオススメは、小平駅側のあじさい公園脇のカフェ ラグラス。春先や秋には屋外のテーブルでまったりしながらコーヒーをいただくのが常である。
うどんは小平の指田屋さん。多摩湖に近いところだと、東村山消防署の向かいにある「きくや」にもよくお邪魔する。昼ご飯を食べに行くのも、自転車に乗る動機のひとつである。
乗り始めた頃は、多摩湖を一周して帰ってくるだけでも大旅行だった。それが週末に少しずつ乗り続けたおかげで、100〜150キロくらいの距離であれば、山があっても向かい風が吹いても、なんとか行って帰ってこれるようになった。それもこれも多摩湖自転車道のおかげである。
しかし、このところランナーや散歩する方々も増え、ロードバイクも多くなってきた。これから走ってみようと思われる方は十分に注意してほしい。あくまでも歩行者優先。これががわかっていない自転車乗りが増えている。その上、横に広がって道を塞ぐなどマナーの悪い歩行者もいるので、事故にならないように、安全に走ってほしい。
休日の午前中はトレーニングと称して、50キロから100キロの距離をに走りに行くことにしている。あまり教えたくないが、オススメは埼玉県の飯能市である。所沢から入間へバイパスで抜け、入間川を渡ってから武蔵野音大の脇を通って名栗方面へ向かう。飯能に入ってしまえば車も少なく、信号もほとんどないので安心して走れる。秩父に抜ける国道299号線は、自動車が多いのでお勧めしない。さらに脚を延ばしたいなら、飯能から埼玉県道30号線を抜けて都幾川、小川方面に行けばたくさんサイクリストに会える。オススメルートをぜひ堪能してほしい。
トップレースを走る気分
ロードバイクに乗ったら、週末の過ごし方が大きく変わった。仲間や家族とともに、サイクルイベントに出ることもある。「もてぎ7時間エンデューロGW」という、ちょっと変わったイベントを紹介しよう。
みなさんは栃木県にある「ツインリンクもてぎ」(現在「モビリティリゾートもてぎ」に改称)をご存知だろうか。車やモーターサイクルの国際的なレースを開催している全長約5キロのレースコースである。ここを、自転車で走ることができる。
このイベントの素晴らしいところは「公道ではないので思いっきり走れる」ことに尽きる。公道を走るのも楽しいが、信号があり対向車も少なくない。しかしこのコースには、信号も対向車も存在しない、同じ方向に走る自転車だけなので「より安全」だと言ってもいいかもしれない。
もちろんマイペースで走ればいい。一人で4時間あるいは7時間ひたすら走り続ける鉄人たちもいれば、ママチャリでのんびり楽しんで走る人、子供に伴走するお父さんお母さんもいる。体にフィットするサイクルパンツやジャージを着なくてもいい。なかにはスーツで走ったり、ぬいぐるみを着て走る人もいる。もちろん袖や裾などが車輪に絡まないように注意したい。
このイベントは毎年5月5日に開催され、今年も家族や自転車仲間たちと参加した。プロになったつもりで、ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアのような世界のトップレースを走っている気分で走ることのできるイベントなのである。
アルプスの自然を感じて
一方で、公道を走るイベントは近年その数が増えている。人気のイベントは申し込み開始とともに受付終了となったり、東京マラソンのように抽選が前提のイベントも少なくない。私が毎年参加しているイベントはいくつかあるが、5月24日に代表的なイベントがあったのでこちらも紹介したい。
長野県松本市から白馬村のスキージャンプ台までを往復する「アルプスあずみのセンチュリーライド」(http://aacr.jp)。センチュリーとは100のことだが、この場合は100マイル、160キロを走破するイベントである。美しい風景と途中の休憩所(エイドステーションという)でいただく漬物やおにぎり、ケーキや甘い物が最高に素敵。このため人気が高く、参加募集が始まってすぐに定員に達して締め切られてしまう。今年は残念ながら160キロのクラスには参加できず、泣く泣く120キロのクラスに参加した。
今年はコースに若干変更があった、おかげでコースを外れてしまたものの、大きく遅れることはなかった。むしろ、路面の傷みの激しいルートや、交通量の多いルートがより安全なルートと変更になったことで、安心して走ることができるようになり、一緒に走った妻は喜んでいた。さらに、エイドステーションも追加され、気温も20度前後と涼しく快適なイベントだった。来年も夫婦で参加する予定である。
距離が短かめで、厳しい坂道も少ない。女性にもオススメのイベントである。
無理せず世界を広げて
ロードバイクに乗り始めたのは健康のためというどちらかといえば後ろ向きな理由からだった。その後継続してこれたのは、いままで行けなかったところまで自分の足で移動できることの嬉しさを知ったことだろうか。
日々のストレスを一切忘れて四季折々の風景の変化、花々や木々の香りを感じながら自分のペースで走ることを楽しめるようになったからだと思う。ハイキングやランニングよりも、少し遠くへ移動することができるのがサイクリングの大きな特色かもしれない。
しかし、ロードバイクはママチャリと乗り方が違う。なれるまで無理せず、楽しみながら新しい移動手段を使って世界を広げてみてはいかがだろうか。
(松岡正人)(写真はすべて筆者提供。禁無断転載)
【関連情報】
・多摩湖自転車道(地図)(サイクルスポーツ.jp)
・多摩湖自転車歩行者道 (みどころ)(たまろくナビ)
・「多摩湖自転車歩行者道」に名称変更します(東京都建設局、2018年03月27日発表)
【筆者略歴】
松岡正人(まつおか・まさと)
新潟県出身、結婚を機に妻の実家がある田無市(当時)に引っ越して20年、現在は小金井公園まで徒歩圏の芝久保町二丁目在住。三人子供がいるが一緒に遊んでくれる年齢でもなくなり、週末の天気が良ければ飯能・秩父方面にサイクリングに出かけるのを趣味にしている。エンジニアを経てマーケティングを生業とし、外資系のIT企業で文化のギャップに苦しみながら格闘中。