ろうそくの炎で軒下の屏風絵を鑑賞 高知県・赤岡町の「土佐赤岡絵金祭り」3年ぶり開催

投稿者: カテゴリー: 文化 オン 2022年8月16日

 義兄の緊急入院で土佐・高知に帰郷した。義兄は完全隔離で対面もできない。時間が余るので7月16日、県内香南市赤岡町で午後7時から開催される「絵金祭り」に出かけた。午前中の雨もあがり、夕闇の中で歌舞伎に題をとった屏風絵が、風にゆらぐろうそくの炎に浮かび上がった。

 

入場者1日1000人限定の宵闇祭り

 

 絵金こと幕末の絵師金蔵が残した芝居屏風絵を、町家の旦那衆が宵宮にあたる7月14日に町家の軒先に飾らせたのは江戸時代末期からといわれる。昭和52年(1977年)からは商店街が中心になって年1回、「土佐赤岡絵金祭り」として一般公開をはじめた。屏風絵は照明を落とした町家の軒先に飾られ、ろうそくの炎で鑑賞する幻想的なお祭りだ。

 

屏風絵

ろうそくの炎に浮かぶ屏風絵

 

 いつもは万を超える人たちが集まるが、新型コロナウイルスの影響で3年ぶりに開催した今年は7月16日、17日の2日間、それぞれ1日の入場者を1000人に限定。事前予約で受付けた。

 

歌舞伎に題をとる屏風絵18点展示

 

白い浴衣で解説する女性

白い浴衣で解説する

テント

お店は中央テントで

 

 絵師金蔵は、もともと土佐藩家老の御用を勤める狩野派の絵師だったが、贋作騒動に巻き込まれて城下追放となり、野に下った。六尺近い巨漢で大酒のみの金蔵がその鬱憤を歌舞伎に題を採った絵に込め、凄惨な場面では血赤といわれる赤い絵の具をたたきつけたようだ。町内に保管している屏風絵は23枚だが、絵の傷みもあって修理中の5点を除いて18点を展示した。

 「花上野誉石碑 志度寺」の屏風絵の解説を聞いた。
 「暗殺された主人の子に敵をとらせたいと乳母は自害。ほとばしる血の中で一子坊太郎は仇討ちを誓い、のちに本懐を果たします」と語る浴衣姿の若い女性の声に、道行く人たちの足も止まる。「義経千本桜 鮨屋」「鈴ヶ森」「伊豆越え道中双六 岡崎」と続いていく。いつもは焼きそばやヨーヨー釣りなどで賑やかな物売りの店も今回はない。中央テントに小売りの店があるだけだ。昔の面影を残した街並みがろうそくの炎にゆらぐのを見ながら解説を聞き、あまり音もない時間をゆったりと歩くだけでも、今の時代には貴重だ。

 

絵金蔵、子ども歌舞伎興行、冬の夏祭りも

 

商店街の百貨店

町の百貨店-なんでもあるちや

 

 赤岡町は、この前まで日本一小さな町(今は2番目)と言われていた。
 町の中心には、絵を保管する絵金蔵がある。絵金の描いた屏風絵の修復、保護とともに、町の活気を取り戻したいと住民によるワークショップで元米蔵を再生したものだ。街歩きマップもここでくれる。すぐ前には、回り舞台も花道もある弁天座がある。町の文化の伝承を願って再建されたもので、祭りの2日間は町の有志によって、子どもも演者にした絵金歌舞伎も開催された。

 

元酒屋のカフェ

元酒屋活用しカフェも

 

 赤岡は漁業の町、4月には浜辺で一升酒の早飲み競争もするどろめ(ちりめんじゃこ)祭りもあり、優勝するのはいつも女性だ。伊能忠敬の測量地の碑もある。

 商店街も面白い。小さなうちわ、手ぬぐい、織物、瀬戸物、ガラス、お面、せんべい、漬物、所狭しとあらゆるものを売っているている店もある。

 絵金祭りの夜、古い酒造りの家を借り、夫婦で運営している若い人もいた。ドリップで入れる本格的なコーヒーが200円。「おいしいですね。もっと値段を高くした方がいいよ」と声をかけ、まちづくりの話になった。かまどがあるので、食堂もやりたいそうだ。もらった名刺をみると、東京の青山とオランダに店舗をもつデザイナーだった。若い人も楽しみながらやっている。

 冬には、商店街の通路の真ん中に茣蓙を敷き、こたつをしつらえて丹前を着て酒を飲み食べる冬の夏祭りもあり、お店で通用するのは両替所で交換した小判だけだ。なんでもおもしろがる土佐人らしい気質を残している町が元気なのがうれしい。

 

【関連情報】
・土佐赤岡絵金祭り(公式サイト

 

川地素睿
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