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求む!市民活動資料 3年目の「市民アーカイブ多摩」

投稿者: カテゴリー: 暮らしメディア・報道 オン 2016年4月14日
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「市民アーカイブ多摩」のパンフレット表紙(クリックで拡大)

 「市民アーカイブ多摩」をご存じだろうか。市民活動の歩みが分かる多摩全域の機関紙誌、いわゆるミニコミ資料を一堂に集め、自由に利用できる市民図書館(所在地・立川市)だ。もちろん西東京市の市民活動を記録した資料も収集され、だれでも閲覧できる。この4月初めでオープン3年目。この間の経緯や活動報告を、創設・運営に参加してきた国立市の山家利子さんに寄稿していただいた。(編集部)

◆「市民アーカイブ多摩」ってなに?

 「市民アーカイブ多摩」は、市民が拠金して開設し、運営している市民活動資料の図書館です。立川市の北部、玉川上水駅から南方向へ徒歩8分、緑に囲まれた閑静な住宅街の一角にあります。2014年4月に、木造平屋の民家を、床はフローリングにしましたが、障子は残すなど住居の雰囲気を残しながら改装して開館しました。市民団体「ネットワーク・市民アーカイブ」が設立・運営主体です。

 施設は、緑地保全のNPO法人「グリーンサンクチュアリ悠」の敷地内で、所有者のご厚意により提供されています。

 毎週水曜日と第2・4土曜日の午後1時から4時まで開館し、おもに多摩地域の市民団体の機関誌や広報誌などのミニコミを集めて、整理・保存し、公開しています。資料をご覧になりたい方は、開館日に自由に来館して利用していただけます。

 市民活動資料と聞いてもピンと来ない方も多いかもしれませんが、市民が活動する中で生まれてくるこれらの資料は、他では得られない面白さと価値があります。

市民アーカイブ多摩(上)と フローリングに障子のある閲覧室(下)写真は筆者提供。

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市民アーカイブ多摩(上)と フローリングに障子のある閲覧室(下)
写真はネットワーク・市民アーカイブ提供。

 

◆10年単位の積み重ね

 「市民アーカイブ多摩」としては3年目に入ったばかりですが、開設までに8年の運動がありました。
 そもそもの始まりは、今から44年前、1972年に東京都教育委員会が立川市内に開設した「市民活動サービスコーナー」に遡ります。同コーナーは市民活動支援事業の中で団体が作成した会報や冊子を収集・整理・公開し、集めた資料は30年間にダンボール約500箱にもなりました。

 2002年に東京都はこのコーナーを廃止しましたが、NPO法人「市民活動サポートセンター・アンティ多摩」が発足し、市民のネットワークや資料の維持・活用に向けて取り組みました。その動きが2006年「市民活動資料・情報センターをつくる会」設立につながり、資料保全の運動が広がりました。

 資料室開設に向けて、行政に働きかけたり、地元企業に当たったり、試行錯誤を重ね、いずれも難しいと分って、自力による設立を目指し、2010年に募金運動を開始。運動の過程で法政大学環境アーカイブズとの出会いがあり、2011年末に500箱のコーナー資料は法政大学に移管。協働作業を経て現在同大学大原社会問題研究所で公開されています。

 この約10年の間にも、市民の活動は絶えることなく続き、活動の資料もまた次々と生み出されています。「アンティ多摩」は新たな資料の収集にも取り組み、2006年には「ミニコミ広場」を設け、定期的に開室して資料の試行的公開を行いました。10年間に集まった資料は約100箱になりました。

 この「ミニコミ広場」を受け継ぎ、募金運動で集まったお金で改装を施して、100箱の公開と新規収集を目的に「市民アーカイブ多摩」は開館したものです。開館に合わせて「資料センターをつくる会」は「ネットワーク・市民アーカイブ」に発展・改組し、図書館や資料館のスタッフ、大学の研究者、市民団体のメンバーなどによる会員が運営しています。

◆生活現場の知恵がいっぱい

 「市民アーカイブ多摩」の館内は、閲覧室、書庫、事務スペースがあります。利用者も入れる書庫には、現在約1400タイトルのミニコミを中心とした資料があり、平和、人権、自然、公害、福祉、子ども、高齢者、教育、消費者、文化・芸術など、約30の分類順に配架されています。

 インターネットが普及した現在、紙資料は不要と言う方もいるようです。情報を手軽に得られるという点はネットの利点ですが、物事を深く知る、知って考える、という点では、紙資料が勝るように思います。

 

アーカイブの書庫。写真は筆者提供。

アーカイブの書庫。写真はネットワーク・市民アーカイブ提供。

 

 市民が活動する中で生まれてくる資料には、生活の現場や当事者としての視点による情報や知恵が詰まっています。暮らしや社会の問題にぶつかった時、物事に疑問を感じた時、新聞やテレビからは得られない物事の見方や問題解決への筋道が見えてきたり、励ましを得られたりします。

 たとえば「不登校」について。世間ではまだまだ本人や親の怠慢とする見方が強いため、問題に直面した多数の子どもや家族もその考え方のために苦しむ現実があります。そんな時に、「登校拒否を考える会」の発行する「通信」など、不登校の問題に取り組む団体のミニコミを続けて読むことによって、自分たちがひとりではないことや、不登校という体験を糧にしてより豊かに生きていける可能性を知ることができるなら、資料がもたらした出会いや気付きは、その人の人生にとって計り知れない大きな意味を持つでしょう。

◆歴史的にも重要

 また市民活動資料は歴史的資料としての価値も重要です。2008年に公文書等の保管に関する法律が制定され不十分ながら一定の公文書保存体制が作られました。しかし公文書はあくまでも公的機関の作成した文書なので、実際の人々の動きの記録としてはきわめて不十分です。歴史の実相を把握するためには、公文書と人々自身の作った記録の両方が必要です。その意味でも市民活動資料は重要です。

 たとえば、「資料センターをつくる会」のシンポジウムで、小平市史編さん委員(当時)を務めた経済学者・歴史学者大門正克さんは、市民の資料が決定的に重要だったと話されました。500箱のにあった「障害者(児)の権利を守り生活の向上をめざす小平の会」の『めざす会ニュース』と『あさやけだより』によって、小平市の近現代を考える上で医療、福祉の占める位置の大きさや、戦前からの流れを受け継いでいることが見えてきた、ということでした。

◆44年間付き合って

 さてかく言う私は、「市民活動サービスコーナー」開設時に非常勤職員として就職し、以来44年間「ミニコミ」と付き合ってきて、未だに飽きるということがありません。封を開けながら、ついつい読みふけってしまいます。

 当事者としての発信はそれ自体として面白さや惹き付けられるものがありますが、現実生活でも実に役立ってきました。ふり返れば、さまざまな問題についての本質の理解や考える視点を、たくさんこれらの資料からもらってきました。そして、そのことによって自分の直面する問題を一歩離れて見ることができ、いたずらに振り回されないで来られたように思うのです。

 

市民団体の機関紙誌

市民団体の機関紙誌。写真はネットワーク・市民アーカイブ提供。

 

◆もっと資料を!

 「市民アーカイブ多摩」の所蔵タイトルで、西東京市に発行主体の連絡先があるミニコミは現在20誌ですが、うち継続的送付があるのは6誌です。私たちは開館に漕ぎつけたものの、この2年間は施設整備と収集資料の整理・提供(および体制の整備)に追われ、資料の積極的収集はようやくこれから取り組むところです。

 西東京でも、実際はもっともっとたくさんの市民が発行する資料があるはずです。「ひばりタイムス」掲載をご縁に、ぜひ西東京や近隣地域のミニコミをお送りください。

◆2周年記念講演会

 2周年記念講演会を5月29日(日)午後、「屈せずに生きた浪江虔─民主主義の礎としての私立南多摩農村図書館」というテーマで開きます。講師はノンフィクション作家の田中伸尚さんです。浪江虔は昭和恐慌の時代に、地主に抵抗する小作農民を支援しようと、南多摩郡鶴川村(現町田市)にやってきて、76 年前、小さな図書館を自力で開館した人です。彼が試練を乗りこえ、村の図書館を戦後民主化の拠点としていった軌跡をたどり、今この時代を生きる私たちへの示唆を得たいと思います。

◆ご来館をお待ちします!

 年4回ほど、土曜日の開館時間終了後に「緑陰トーク」という催しも開催しています。「市民アーカイブ多摩」の最寄り駅玉川上水駅は、西武線経由で来られる場所にありますので、どうぞ気軽にお訪ねください。
(山家利子)

アクセス(地図)

■アクセス:多摩モノレール、西武拝島線「玉川上水駅」徒歩8分
■住所:立川市幸町5-96-7  TEL 042-536-5535(開館中のみ)
■開室日:毎週水曜日、第2,4土曜日
■開室時刻:13:00-16:00
■入館カンパ:100円~
■ホームページ:ネットワーク・市民アーカイブ(since 2014.4.6)
【事務局】〒190-0022立川市錦町3-1-28-301 TEL/FAX 042(540)1663
E-Mail:simin-siryo@nifty.com
 (地図はネットワーク・市民アーカイブ提供)

 

 【筆者略歴】
 山家利子(やんべ・としこ)
 1943年、兵庫県生まれ。教員を経て、1972~2002年、都立多摩社会教育会館市民活動サービスコーナーの非常勤職員。2002年、仲間とともにNPO法人市民活動サポートセンター・アンティ多摩を設立、一時期を除き理事兼事務局スタッフ。「ネットワーク・市民アーカイブ」運営委員。
関連論文:「資料と活動の交流拠点だった『都立多摩社会教育会館 市民活動サービスコーナー』」(『大原社会問題研究所雑誌』No.666(2014年4月号)「特集:市民活動・市民運動と市民活動資料、市民活動資料センター」)

 

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