認知症の家族会「西東京ゆとりの会」 介護の悩みを共有して21年
認知症介護の悩みを共有する家族会「西東京ゆとりの会」が、前身の「家族交流会」の発足から数えて21年を迎えた。超高齢化社会では避けられない認知症介護問題。同会代表の谷恭子さんに、会の活動やご自身の体験などをうかがった。
同会は1996年、前身となる旧田無市保健所主導の「家族交流会」として発足。認知症家族を介護する人たちの要望を受けた。翌年、旧田無市・保谷市の合併を機に「西東京ゆとりの会」と改名、自主グループとなった。現在、会員数は35人。40歳代から90歳代までの、在宅介護する家族や施設入居している親を介護する家族、看取りを終えた家族、ケアマネージャらの専門スタッフが集い、月1回、日頃の悩みを語り合い、勉強会などを開いている。
定例会には、平均約20人が参加している。「お風呂に入りたがらない」「おむつがもれる」といった悩みなどを話し合い、介護歴の長い人たちがアドバイスもする。谷さんは「例え解決しなくても参加すると頭がすっきりする、とみなさんおっしゃいます。きっと先輩介護者のお話を聞くと、介護の先が見通せるからではないでしょうか」と話す。
谷さん自身も当時62歳だった認知症の実母を20年間在宅介護してきた。「20年頃前は、認知症に対する一般的な理解は低く、閉鎖的な辛い環境で介護していました。手が上手く動かせなくなっても何でもやりたがる母は、失敗の繰り返し。初めは母を叱咤激励していたのですが、気づくと感情のまま毎日怒っていました」と当時を振り返る。
そんなとき、谷さんの苦悩を救ってくれたのが家族会だったという。「『人間だから怒ってもいいのですよ』と専門家の方からアドバスをいただいたとき、自分が母から逃げていたことに気付かされました。これからは母と一緒に肩を並べて生きて行こうと決心がつき、気持ちが楽になりました」と話していた。
「認知症の家族と向き合うのに大切なことは、その人を尊重すること。真摯に向き合うことです。見下すのではなく、背中をさすり、気持ちを聞く、ご本人が一番輝いていたときの話を引き出すことです」と谷さんは話す。
「頭で分かっていても実行するのは難しいですよね。そんなときは、介護される方と少し距離を置く事です。デイサービスやヘルパーさん、ショートステイなどたくさんの人の手を借りて、自分の心身を守ることが大切です。それが介護される方を守ることになります」と付け加えた。
実母を看取った今、谷さんは「やっぱり母が大好きなんだなあ、と思います。私の心の中ではずっと生きています」と涙を浮かべながら話していた。
厚生労働省によると、65歳以上の認知症高齢者は、2012年で462万人(7人に1人)と推定していたが、団塊の世代が75歳以上になる2025年には約700万人(5人に1人)に達すると見ている。
同会定例会は、毎月第2水曜日13:30~15:30(8月は休み)、西東京市役所田無庁舎、田無総合福祉センターなどで開く。年会費1200円。詳しくは西東京市役所、公民館、地域包括支援センターなどの公共施設にある「西東京ゆとりの会」のチラシを参照。
(柿本珠枝)
【関連リンク】
・西東京ゆとりの会(認知症の家族会)(西東京市社会福祉協議会)
【筆者略歴】
柿本珠枝(かきもと・たまえ)
旧保谷市で育ち、現在西東京市田無町在住。1998年(株)エフエム西東京開局から携わり、行政や医療番組、防災、選挙特番など担当。地域に根差した記者としても活動している。