Print This Post Print This Post

想像力の世界に魅せられる-影絵劇づくりに参加して

By in 学ぶ, 楽しむ on 2018年2月14日

上映会のプログラム(クリックで拡大)

 芝久保公民館主催の創作講座「安房直子の童話で影絵劇をつくろう」(全15回)が昨年開かれ、完成作品が11月の芝久保公民館まつりで上演された。半年近い長丁場の協働作業によって、西東京市在住だった児童文学作家安房直子さんの作品世界が、光と影の織りなす影絵劇に生まれ変わった。講座に参加した人たちは1月半ばに振り返りの会合を開き、2月には有志が影絵づくりの自主活動を続けることになった。この間の創作の苦労と喜びをまとめた高橋眞理子さんの報告です。(編集部)

 

影絵劇を上演した日

 

 影絵劇上演会が11月25日、芝久保公民館まつりの中であった。芝久保公民館主催講座「安房直子の童話で影絵劇をつくろう」での作品発表である。

 

会場は満席。入口付近に立ち見の人もいた

 

 作品は「ふしぎな文房具屋」「木の葉の魚」の2点。2つのグループが、劇団スタジオライフ・倉本徹さんの影絵指導により制作し、安房直子倶楽部・横田千恵子さんの朗読にあわせて上演した。会場(視聴覚室)の入場者数46名。満席だった。

 私は「ふしぎな文房具屋」のグループ。この作品の登場人物は、おじいさん・女の子・猫。ふしぎな文房具屋で売っているクレヨンや消しゴム、虫めがね、吸い取り紙等の文房具が、次々とふしぎな世界を展開させていく。異界との接触がある、悲しみを温かさに変えてくれる話。

 最後のスクリーンに「おわり」の文字。私たち、グループの5人は、少し離れたところからお互いの目と目を合わせ「うん、うん」と頷き合った。どの顔も嬉しそうだ。

 

上演が終わると会場は拍手に包まれた。講座参加者と講師の倉本徹さん(右から2人目)、講座担当の芝久保公民館、大江正子さん(右端)。

 

 終了直後。見に来てくれていた友人たちから「綺麗だったよ。素敵だったよ。1回だけじゃ勿体ないね」と声を掛けられる。

 

安房直子作品を取り上げる

 

 1回目「安房直子の世界へ①朗読とお話」
 横田千恵子さんの朗読でひとつの作品に触れる。その後「安房さんの童話にできるだけ多く親しみましょう」と倉本さん。参加者自身が上演する作品を選ぶ、との説明だった。横田さんからは、安房さんの作品リストの紹介がある。知っている作品もあったが、作者である安房さんが西東京市(旧保谷市)で執筆されていたことを知るきっかけになる。

 2回目「影絵の見せ方・作り方」
 倉本さんの指導により、夢中で取り組んだ1時間余り。黒画用紙と色セロファンなどを材料にして出来上がった作品(背景)の中で、イラストの黒い影の主人公たちを動かす。後方から光を当ててもらうと、突然、幻想的な世界が現れた。影絵劇づくりが、より楽しみになった瞬間だ。

 3回目「光と影のワークショップ」
 高島美希さんからは、質感の異なる素材から、光を通さずにできる、強くはっきりした影・光を通してできる、色のついた透き通った影や繊細で柔らかく淡い影について認識を深めた。作品づくりもあり、アートの世界を楽しむ。

 

「光と影のワークショップ」。さまざまな素材がアートに

「木の葉の魚」上演中。スクリーンの左が朗読の横田千恵子さん

 

 4・5回目「安房直子の世界へ②③上演作品を選ぼう・台本づくり」
 作品リストを基に安房さんの多くの作品に触れていくと、安房さんの温かさと優しさにあふれた不思議な世界に迷い込んだ。安房さんの作品には動物や花が多く登場する。異界との接触も多く、不思議な展開が待っている。明るく楽しい話のほかに怖い話もあるということを知る。2回かけて話し合った結果、安房さんの描く独特の世界を異なる視点から、「ふしぎな文房具屋」(異界との接触のある楽しい話)と「木の葉の魚」(怖い話)を上演することに決まった。2つのグループに分かれ、段落分けと背景を作り、まずは台本づくりと作成するものの役割分担をする。いよいよ影絵劇づくり!

 

影絵の魅力が徐々に

 

 6~14回目「影絵劇づくり―通し稽古」
 倉本さんの「本物を使うと面白いよ」との言葉に、私たちのグループでは、本物の手や虫めがねを使用。カーテンの場面には布を使用した。これは高島さんから学んだことにも影響を受けた。

 「木の葉の魚」のグループでは、たこ糸を編み、魚を捕る網を作っていた。「木の葉の魚」、雨がキラキラ輝きながら降ってくる場面がある。これはプロジェクター上で操作している。「こうすると、川の流れになるよ」と倉本さん。光と影で、雨も川の流れも表現できる。光と影の持つ力はすごい!光と影からは、毎回のように新たな発見があり楽しい!!

 影絵人形づくりでは、倉本さんが説明をしながらパーツに穴をあけ金具を取り付けて見せてくれた。完成した人形の影がスクリーン上で動くのを見て「可愛い!」の声。急に親近感が湧く。

 

「ふしぎな文房具屋」上演中

 

 私のグループでは、登場するおじいさんと女の子の人形を大小数種類作成し、場面によって使い分けた。
 背景は、場面ごとの下絵を切り抜き、セロファンで色を付けるなどして時間をかけて仕上げた。

 影絵を映しているスクリーンの裏側には、3台のプロジェクターが設置されていた。それぞれ背景と人形を交互に映す。プロジェクターからの距離によって影の大きさは変化する。人形を2体以上同時に登場させる時には、特に位置関係に注意した。ふしぎな文房具屋の店内では、おじいさんと女の子の向き合う場面が多い。ある場面では、人形のおじいさんと女の子のほか、それぞれの人形から差し出す手を本物の手で演じる担当もいて、ひとつのプロジェクターの前に4人が集まって演じた。一人のアイデアから生まれた表現だったが、そのために人形も台本も作り直した。真に創作活動だと思った。

 

想像力の世界

 

 15回目「影絵劇上演」
 私たちは朗読を聞きながら、横田さんはスクリーン上の影を見ながら、お互いの息を合わせて劇を進行させる。
 「影絵劇の黒い影の人形には表情がない。見ている一人一人が想像する。想像することが影絵の醍醐味。影絵は想像力の世界である」(倉本さん談)。

 

 感動を共に
 この講座に参加した9名のうち半数以上はすでに地域で読み聞かせ・朗読・人形劇等の活動をしていて、文化活動に関心の高い参加者が多かった。私は「公民館だより」を読んで、影絵劇に心惹かれるものがあり、公民館講座に初めて参加することにした。

 「影絵劇創作」という、参加者全員が初めての体験。ワクワクした期待感も大きく、実際に期待以上の感動を味わえた。しかし、思ったより難しくて大変だったというのも本音である。それぞれの思いを汲みながら共同での創作活動には幾度もの変更や、思いが通じず困惑することもあった。講師のサポートと創る楽しさで乗り越えた。そして感動を共にできた。終了後の達成感と嬉しさは格別だ!

 

 アンケートより
 「思っていたより何倍もステキ!」「語りも影絵の美しさも堪能しました」「ふしぎな世界を味わえました」「今の時代、このような劇は貴重で、新鮮に見えました。もっと多くの人にこの良さを知ってほしいです」「別の機会にも上演してほしい」…。

 

来場者で賑わう芝久保公民館

 

 振り返りの会で
 1月13日(土)芝久保公民館で講師の方々と参加者が集まった。参加者からも再上演したい、との声が上がる。そこで2月に話し合いをすることに。初心者で未熟な影絵劇ですが…上演する感動と観客のみなさんの感動を共有できる再上演を心待ちにしています。
(高橋眞理子)

 

◇安房直子(児童文学作家)
1943年東京都生まれ。1970年『さんしょっ子』で日本児童文学者協会新人賞、1973年『風と木の歌』で小学館文学賞、1982年『遠い野ばらの村』で野間児童文芸賞、1991年『花豆の煮えるまで』でひろすけ童話賞など受賞多数。西東京市で執筆活動を続けた。1993年、肺炎により死去。享年50歳。(西東京市中央図書館 地域・行政資料室より)

 

【筆者略歴】
 高橋眞理子(たかはし・まりこ)
 西東京市在住30年以上。元小学校教員。

 

(Visited 455 times, 1 visits today)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA