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農地を生かした地域づくり 西東京市に「エコディストリクト」提案

By in 市政・議会, みどり-環境 on 2018年9月10日

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 自然環境と共生する地区「エコディストリクト」を西東京市につくる、という展示会・ミニシンポジウムが9月2日、同市いこいの森公園パークセンター付近で開かれた。市の生産緑地保全を検討する都市計画審議会専門部会委員の村山顕人東京大学准教授が提案し、研究の一環としてイタリアのトリノ工科大学と共同で実施した。両大学の学生が市内で演習した成果発表や大学と市によるパネルディスカッションに、参加した約50人の市民らは熱心に耳を傾けていた。

 エコディストリクトは、「エコ」=自然環境保全と「ディストリクト」=地区、を組み合わせた造語。一つの地区内で省エネ、緑・水の保全、エネルギー供給のしくみをなどをつくる取り組み。

 

西東京市の丸山市長が挨拶

 当日シンポジウムに先立ち同市の丸山浩一市長は「まちづくりは地域づくり。住みやすい地域はどのような形がよいか。お話を伺いながら政策を前に進めていかれれば」と挨拶した。

 続いて同専門部会会長で進行役の東京大学大学院工学系研究科の村山顕人准教授は、「西東京市は市街地でありながら農地が残っているのが特徴。部会では開発と都市農業保全の両立をテーマに提言を作っています。審議だけでなく、大学の教育活動と連携して、市内南部の向台町と北部の住吉町を演習課題対象地区に設定して実施しました。これを基に提言を作ります」と説明した。

 続いて同大大学院工学系研究科都市工学修士課程2年の栗本開さんが演習成果を発表した。実施期間は昨年9月から今年5月。同市の緑と水を生かした計画・デザインを提案した。市の人口動態、土地利用、交通規制などの現状を分析し、全市的な都市計画の戦略を立案。これを基に市内2か所の都市デザインを設計した。

 現状分析の結果、農地を生かしたまちづくりや水害リスクを軽減し緑地や住宅を守る対策が重要だと分かったという。

 住吉町では、5、6丁目の一部に焦点を当てた。東西に走る幹線道路計画に合わせ、既存農地を残し、周辺未利用地を広場としてデザインした。整備予定の幹線道路に歩道橋を作って南北を結び、南側の未利用地を遊び場兼貯水池にする。北側にある小学校の児童らが晴天時はここで遊び、雨天時は地区の住宅、農地の浸水リスクを減らすという案。栗本さんは「歩道橋からは農地住宅地が共存する活気ある市を象徴する景色が期待できる」と話した。

 向台町は、水害リスクの高い石神井川沿い3、4丁目、南町4、5丁目を対象。空地と農をテーマにした浸水空間を整備する。石神井川沿いの空き地は、日常市民が野菜を栽培し、豪雨時は周辺住宅の浸水リスクを減らす。また、既存の公営住宅を修復、増築して耐震化を図る。さらに川辺の景観を作り川と触れ合えるデザインを検討した。

 会場から「農地としての永続性が大きな問題。どう考えるか」という質問に対し、栗本さんは「開発権を移転するなどして農地保全するしくみをつくる」と答えた。

 パネルディスカッションでは、トリノ工科大学の准教授3人がイタリアから見た西東京市の印象と可能性について語った。

 

パネルディスカッションディスカッションで話すクラウディアさん(中央)、村山さん(右)、松本さん(左)

ジアンカルロさん(中央)、マルコさん(右)、飯田さん(左)

 

 クラウディア・カッサテッラ准教授は、「首都圏域にある農地は貴重な資源。学生には小さな水域と結べるような農地、屋敷林のような美しい農地はどこにあるか、など疑問を投げかけました。こうした観点から対象地を分析することは西東京市の持続可能性を考慮した魅力的な計画策定に繋がるのではないか」などと述べた。

 マルコ・サンタンジェロ准教授は、「世界の政策でもキーポイントになるのが『持続可能性』。西東京市には緑・農地が残っているだけでなく、市自体が保全したいと考えるのは世界的にも珍しい。市内の大学が所有する緑地を市民に開放してほしい。東大は良い例。また、植木の圃場(作物を育てる場)は一番の関心事。所有者と市、市民の連携により、地域資源にできるのでは。市単独で実施するのは難しいが、先駆的な取り組みをすることで他市のモデルになることを期待する」と話した。

 ジアンカルロ・コッテーラ准教授は、「プロジェクトを進める上で、農家、事業主、住民、JAなどの要望を踏まえ、市がオープンな議論の場を提供し、舵をとることが重要。それには、農家など横の関係、道路整備など行う東京都との縦の関係を重要視することが大事ではないか」と語った。

 

松本課長の報告

 

 続いて市の立場から、都市計画課の松本貞雄課長が現状と課題を報告した。
 西東京市の農地は、1993年から24年間で約6割減少。市では固定資産税や相続税などが優遇される「生産緑地」を増やす施策を進めており、今年同専門部会で検討中の都市農地保全に向けた施策を実施する。松本課長は、「今回のイベントなどを通して機運醸成を図り、今後も生産者、消費者などの交流を含めた企画を進めていきたい。市役所の中でも各部署と連携しながら課題解決したい」と語った。

 最後に専門部会が提言する中間報告として、都市農地保全の意義について、都市計画審議会専門部会委員で東京大学大学院工学系研究科の飯田晶子特任講師が、地域の文化、市民の健康、緑の都市基盤(グリーンインフラ)、世界的な課題への解決、という4つの視点から説明した。飯田講師は地域文化では、「西東京市はイタリアの先生方が仰るように個性ある場所。農地は歴史ある農村の文化であり価値あるものだと再認識することが重要」などと語った。

 同専門部会は今年度を目途に市長へ建議(意見)を提出。市は具体策を検討する。

 会場外では、トリノ工科大学と東京大学が今年5月、今回の演習をテーマにトリノの国際都市デザイン・ワークショップで発表した成果物などが展示された。
(柿本珠枝)

 

【関連リンク】
・9月2日 開催!展示会・ミニシンポジウムのお知らせ(西東京市Web

 

【筆者略歴】
柿本珠枝(かきもと・たまえ)
 旧保谷市で育ち、現在西東京市田無町在住。1998年(株)エフエム西東京開局から携わり、行政や医療番組、防災、選挙特番など担当。地域に根差した記者としても活動している。

 

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