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今年5月に「里山フェスティバル」 西東京市の雑木林を市民協働で再生

By in みどり-環境, 交流・共生 on 2019年1月3日

明るくなった西原自然公園

 雑木林再生、里山、市民協働-。西東京市の「西原自然公園を育成する会」の実践は、全国から注目されている。これまで国土交通大臣賞、東京都公園協会最優秀賞、あしたのまち・くらしづくり活動賞などを受賞。今年5月に「里山フェスティバル」も開催するという。どんな活動なのか。川地素睿さんの報告です。(編集部)

 

 

 西東京市西原町にある文華女子高等学校の南側に、武蔵野の面影を残す2ヘクタールの自然公園がある。樹木の本数はおよそ1800本。クヌギやコナラ、ムクやエノキの雑木林を市民の手で再生しようと「西原自然公園を育成する会」(池田干城会長)が18年にわたって守ってきた。その記録「武蔵野の雑木林再生」(12月1日付)が 出版された。

 

雑木林を背景に冊子を持つ池田干城会長

 

放置された雑木林を協働で再生

 

 「雑木林を守る作業をしてきたつもりだったが、教えられることが多かった。自然の力と魅力に惹かれて、今までやってこれた。それを記録として残したいと冊子を発行した」と池田さんは話す。

 「武蔵野」というと「雑木林」を連想する人も多いが、雑木林は薪炭と堆肥を資とする生活も支えてきた。しかし、昭和30年ごろからプロパンガス普及と雑木林の住宅化によって、放置される林も多くなった。見かけは「緑豊かな雑木林」だが、多くは手入れがされないままだった。西原自然公園も樹齢60年を超える木が増え、樹下には光が届かず、裸地化状態になっていた。それを再生させる取り組みが始まって18年。今では雑木林も若返り、市民の公園として親しまれるようになった。「大木は市が伐採し、市民が管理を行う」協働の実践例だ。

 管理は日々の積み重ねが大切だが、昨年は思わぬ出来事にも見舞われた。

 

台風で大木が根こそぎ倒れた

 

 9月30日の台風24号の影響で、自然公園も大きな被害を受けた。折れた枝が散歩道を塞ぎ、大きな檜の木が仰向けに倒れて根が地表に飛び出した。樹齢100年以上の松の木も2本が真ん中で折れ、上部は10m以上も吹き飛んだ。

 「この災害には、市の職員も業者も手が回らない。そこで私たちが道を塞いでいた倒木や枝を切断し、道を開き、安全対策を行った。ボランティアの機動力が役立ったと思う」と池田会長は振り返る。

 昨夏は、酷暑も続いた。早朝作業でも34度。風も吹かない。
 膝ほどの丈があるササや草を刈り、若い木に巻き付いた蔓を取り払う。汗びっしょりで冷水とスイカで一息つく。そうした作業を重ね、このあたりでは、ほとんど見られなくなったヤマユリも咲いた。手をいれることで、江戸時代から残っていた土が息をしはじめ、種も芽吹いてきたのだ。

 

「子どもが入ってはいけない」公園だった

 

 西東京市は、いこいの森公園など約50の公園を、指定管理者制度で民間事業者に委託している。西原自然公園は、市民ボランテイアの手で保存運営している珍しい例だ。 西原グリーンハイツ(720戸)や西原団地(522戸)に隣接し、散歩する人や家族連れも多い。

 20年ほど前には手入れをする人がいなくて暗い公園だった。「痴漢がでる。子供は入ってはいけない」と言われていたが、市は予算も人手もないので悩んでいた。

 手を挙げたのが、地域で環境保全の活動をしていた人たちだった。2000年に「育成する会」を立ち上げ、「雑木林の再生(若返り)」を目標とした。そのために、萌芽更新(切り株からの芽を育てる)と植樹を併用し、途切れることなく作業を続けてきた。今は樹木も約20種、草も花も40種が季節ごとに元気な姿をみせる。

 

元気な会員たち

 

どんどん林が変化するのが面白い

 

 池田さんは滋賀県で育った 。「近江商人には、三方良し(売り手と買い手の両方が喜び、それに世間にもプラスになって三者が満足する)という言葉がある。ボランティア活動でそれを感じている」という。

 会員は約30人。60~80代の人が多い。自分の得意や好きなことを生かして、ゆっくりと作業を続けている。写真を撮る人、絵を描く人、北海道で山仕事をしていた人がいる。チェンソー作業のベテラン、虫や草や木に詳しい人もいる。「手を入れ始めたら、どんどん林が変化するのが面白くて、長く作業を続けることができた」という会員もいる。

 

得意を生かして作業する

 

地域文化のフィールドミュージアム

 

 60~70年生きてきた大木を伐採することに異論を唱える人も少なくない。林や森は自然のままおいておくべきだという人もいる。だが、武蔵野にある雑木林と里山は、人が手を入れて暮らしと調和させ、燃料になる薪を雑木林からもらい、生き残ってきた。作業をする中で、昔の人たちの自然と付き合う知恵に驚かされることも多い。

 

公園入口にある看板

 

 想像していたよりも再生してきたので、市は西原自然公園を「地域文化のフィールドミュージアム」と名付け、「育成する会」が雑木林更新ゾーン、雑木林保存維持ゾーン、針葉樹ゾーン、草地・疎林ゾーン、林間広場ゾーンに分けて管理している。

 木が若くなり、草の種類が増えたことで、カブトムシが増え、ルリタテハやアカボシゴマダラの幼虫が身近で見られるようになった。

 

評価されて活動の範囲も広がった

 

 そうした活動が評価されて平成25年には東京都公園協会最優秀賞を受賞。翌年には国土交通大臣賞を、28年には、あしたのまち・くらしづくり活動賞ももらった。田無にあるアニメ会社エクラアニマルの協力を得て、子どもたちにもこの活動を伝えたいと「さくらとサクリン 雑木林の秘密」の(本多敏行演出作画)でアニメ映画もつくった。

 近隣の市からの見学、視察も増え、交流の輪も広がった。武蔵野市や福生市、東久留米市、武蔵村山市などの行政やボランティア団体とも交流するようになった。

 

芝久保公民館まつり。子どもたちの作品

 

 また、西東京のいこいの森公園で毎年5月に開催される「アースデイ」では、「ネイチャートライアスロン」を担当。子どもたちがのこぎりで木を輪切りにし、三輪車をこいだ後、50メートル走る。毎年、行列ができる。芝久保公民館まつり(2018年10月27・28日)にも参加。200人の子どもたちが、輪切りにした木にどんぐりや松ぼっくりをのせる工作を楽しんだ。

 

市と一緒に「里山フェスティバル」開催

 

冊子の表紙

 2019年は、公園開園40年。「会」が作業し始めてから数えて20年になる。それを記念して新緑の美しい5月12日、「里山フェスティバル ~観察会と音楽会~」を開催する。市内にこんなに多彩な自然があることを、多くの人に知ってほしいとの企画だ。里山体験や、押し花づくりなどを親子で遊ぶイベント、園内の案内もある。文華女子高等学校講堂で「里山」をテーマにした音楽会もあるので期待できそうだ。

 作業は月2回、毎月1日と第3土曜日に行っている。会では、「一度見に来てください」と話している。

 冊子「武蔵野の雑木林再生」は全72ページ。500円で販売している。お求めは、メールアドレス nishihara-sizen@qf-h.bb4u.ne.jpまで。

(川地素睿)

 

【関連リンク】
・西原自然公園を育成する会(HP

 

【筆者略歴】
 川地素睿(かわじ・もとえ)
 高知県出身。東久留米市在住20年。法律事務所、旅行業を経てNPO法人に参加する。もうすぐ地域に帰ってくる団塊世代。高齢者も含めた多世代が関わるまちづくりに関心がある。

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