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「誰にでもやさしいまちづくり」 共生社会実現に向けて市民ができること

By in 福祉・保健, 交流・共生 on 2019年3月30日

笑顔で質問に答える講師の野澤和弘さん(写真:ノマ西東京提供)

 ノーマライゼーション西東京の会(通称ノマ西東京)は3月24日、毎日新聞社論説委員(社会保障担当)の野澤和弘さんを講師に招き、「西東京の“今”を知る勉強会」を障害者総合支援センターフレンドリーで開催した。ノマ西東京は、住み慣れたまちで、安心・安全な暮らしを次世代に継ぐことをミッションとし、農業と福祉の連携を模索しながらまちづくりのために活動している。

 勉強会のテーマは、「誰にでもやさしいまちづくり~共生社会の実現に向けて、西東京市での今自分ができること」。障害のある人もない人も、赤ちゃんからお年寄りまで、誰もが住みやすいまちくづりに何が必要なのかを考える会だった。

 1983年毎日新聞社に入社し、社会部で、いじめ、引きこもり、薬害エイズ、児童虐待、障害者虐待などに取り組んできた野澤さんは、ジャーナリストとして現場に長く関わってきた経験をもとに1時間余り講演。その後の45分は、60名を超す参加者からの感想や質問に野澤さんが答える時間が設けられ、双方向のやり取りが活発に行われた。

 野澤さんは主として、急激なスピードで進む高齢化問題、こどもの貧困や虐待、そして障害者について、福祉現場や関連行政委員会の取り組みを交えながら話した。

 

講師の野澤和弘さん(写真:ノマ西東京提供)

フレンドリーの会場はほぼ満席(写真:筆者提供)

 

 高齢化問題には「“できない”ばかりに注目せず、“できる”を軸に生活を組み立てていく中に、悲観ばかりではなく面白い種、希望がたくさん見つけられる」と野澤さんは語った。高齢化率(人口における65歳以上の割合)が45%と高齢化が進む熱海市で、88歳の女将が経営する旅館や、90歳の現役マッサージ師の話を例に挙げ、人それぞれの特性にあった働き方、働ける場所、働ける時間があり、様々な働き方が可能であると説いた。

 子どもの貧困や虐待に関連して、相対的貧困が見えにくい現状において貧困の連鎖を断ちきろうとする現場の努力が多数披露された。

 障害者については「どんな重度障害者にも生きる価値がある。かれらの内面的豊かさ素晴らしさに健常者は気が付いていないだけ」と話し、素晴らしいアート作品を生みだす力のある障害者を紹介した。また大江健三郎、太宰治、パールバック、近松門左衛門らの文筆家や、官僚、政治家、経済人、弁護士といった障害者を親近者に持つ人々の作品や仕事が、障害者と共に生活することでいかに影響をうけているのかに触れた。

 講師の編著「障害者のリアル×東大生のリアル」に記述のある、手足や顔などの筋肉が動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)患者と学生との触れ合いの事例も紹介した。「からだが動かない不自由と、こころが動かない不自由はどちらが不幸なのか」という問いをALS患者から突きつけられた学生らが、生きる意味を自ら問い直すエピソードが、参加者らの胸を打った。

 どの問題も、当事者やその家族の ”孤立と分断” が問題をより深刻にしており、困りごとをみんなで支え助け合える生活圏域内でのつながりと、障害・高齢・貧困と問題を分けず、総合的な対応が可能な地域の拠点や仕組みを作っていくことの重要性が説かれた。

 

講演会のチラシ(クリックで拡大)

 

 休憩をはさんだ勉強会後半の質問コーナーでは、寄せられた多数の感想や質問がホワイトボードに貼り出され「発達障害がある子を育てているが、お話を伺いとても励まされた」などの感想が直接講師に届けられた。

「障害者が働くとは?」という質問には、”働く”ということは、お金を得て自立するという狭い定義に限定されず、社会との関り、自分の存在を肯定できる活動、ひいては生きる-それ自体が仕事であり “働くこと” であると語った。その他の質問にも、フランスやスウェーデンの海外の例を挙げるなど一つひとつ丁寧に答えていた。

 いろんな人が “ごしゃごしゃ” に混ざり合ったまちで、誰もが安心して暮らせる地域づくりは「行政に任せるだけでなく、市民としてこのまちを大切にしたいという思いを持ち、主体的にまちづくりに関わることから始まる」と野澤さんは言う。地域の課題に自ら取り組む人々が、そのプロセスを共に分かち合い課題を乗り越えていく過程が、つながりを生み育てる。「差別など暗い事例だけにフォーカスせず、合理的配慮のよい事例をたくさん集め、持ち寄ることが大事。人が集まる楽しい企画、おいしいイベントを仕掛けながら、合意を形成していくプロセスの共有こそが、地域づくりの大きな力となり、原点となる」と締めくくった。

 講師が部長を務めた毎日新聞夕刊編集部のキャッチフレーズは「人生は夕方から楽しくなる」だと言う。それは「日々の仕事を終えてからの夕方の時間であり、人生の夕方でもある」と。その言葉通り、講演会後は近くの居酒屋に場を移し、野澤さんを交えての懇親会が開かれた。通常の講演会では講演が終われば講師はとんぼ帰りしてしまうが、この日は野澤さんご自身もじっくり腰を据えての参加者との話し合いの機会を喜び、集まった面々のバライエティに富むバックグラウンドに感嘆される様子も見られた。会は野澤さん自らが音頭をとり、歌舞伎の見得を切る動作を加えた “歌舞伎一丁締め” で終了となった。

 2016年に始まったノマ西東京主催の 「西東京の“今”を知る勉強会」 は今年で4回目。野澤さんの講演会にかつて参加し感銘を受けた同団体メンバーの田辺広子さんは「先生のお話は、事実だからこその笑いと涙のエピソードに溢れており心打たれたから」と講演を依頼した経緯を語っていた。
(卯野右子)

 

【関連リンク】
・ノーマライゼーション西東京(facebook

 

【筆者略歴】
 卯野右子(うの・ゆうこ)
 西東京市新町在住。金融会社勤務。仕事の傍ら「アートみーる」(対話型美術鑑賞ファシリテーター)「みんなの西東京」「放課後カフェ」の活動に参加。東京藝術大学で「アートX福祉」を履修し、2019年4月より東京都美術館のアートコミュニケーターとして人と美術館を繫ぐ活動を開始する。

 

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