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大地震に備え小金井公園で合宿研修 2泊3日で震災復興を疑似体験

By in 災害・防災 on 2019年7月16日
テント設営

テントを運んで設営する

 首都直下地震に備えて私たちは何ができるか。避難所に見立てたテントを公園内に張って復興プロセスを疑似体験する2泊3日の合宿研修「復興まちづくりキャンプ2019」が、7月13日から15日まで都立小金井公園のつつじ山広場で開催された。スタッフ約60人と延べ約100人の一般市民が参加して、被災後の生活再建や復興まちづくりの課題を話し合った。

 

失敗も貴重な経験

 

 1999年に立川市の昭和記念公園で実施した合宿研修「震災サバイバルキャンプ・イン’99」の参加者を母体に実行委員会(代表・中林一樹首都大学東京名誉教授)を立ち上げ、昨秋から大学教員、民間プランナー、自治体職員らが準備を進めてきた。

 キャンプは3日間を、被災から「7日後」(非難生活期)、「3ヵ月後」(復興始動期)、「3年後」(本格復興期)の3ステージに見立てて進められた。雨天のため参加者は当初の見込みより大幅に減ったが、お年寄りや子供連れを含め、西東京市や小金井市など近隣で地域活動などをしている住民が多く参加した。

 初日は午後から参加者が十数人ずつ「山の手」「下町」「郊外」の地域別3グループに分かれ、それぞれ用意された共同テントや寝床用の個人テントを設置した。夕方から雨が降り出したため、個人テントをブルーシートで覆ったり共同テント内に設置したり。災害時にも風雨はあるためスタッフは「かえって訓練になる」と話す。

 

テント生活

雨のため寝所向けテントを共同テントの下に設置

仮設トイレ

仮設トイレを組み立てる

 

 夕食はツナ缶にカレー粉をまぶしたツナカレー、ポリ袋を使った酢の物といった災害用。「被災直後」だけに量は少なめだが、「意外といける」というのが大方の感想だ。

 「郊外」グループではテントの雨垂れに備えて溝を掘っていたが、未明から溝から水があふれ出し、急遽、水抜きの穴掘りに迫られた。しかし参加者の男性は「この共同作業を通じてメンバーの一体感が年齢を超えて強まった。失敗も無駄ではなく、貴重な経験です」と話していた。

 

「事前復興」の重要性

 

 2日目午前は震災後に直面するテーマごとに3カ所に分かれて専門家を講師にセミナーを実施し、午後からのシンポジウムでそれぞれの問題意識を深めた。

 「復興まちづくり」がテーマのセミナーでは、阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大震災、熊本地震など全国の被災地の復興を担う現地リーダーや研究者が現場の事例を報告した。口々に強調したのが事前の備え、いわゆる「事前復興」の必要性だ。耐震補強や広域避難所の確保などハード面の整備は必須だが、特に重要なのがコミュニティーづくりだという。

 

セミナー風景

セミナーで各被災地から報告

 

 「普段できないことは震災時にもできない。常日ごろから心配し合える仲間をつくっておくことが必要」(神戸市長田区)。「高齢化など以前から抱えている問題が災害時に顕在化する。被災直後にうまく助け合えない所は、その後もうまくいかない」(新潟県長岡市)。「都市再建は早ければいいわけではない。便利で安全できれいな街ができても、人々のつながりがなければ復興感は得られない」(宮城県気仙沼市)。

 海外でも被災前のあり方が被災後を決定していた。ニュージーランドでは震災直後より市民から10万件以上の復興アイデアが寄せられ、それを基に復興計画が練られた。以前からの街づくりプロセスの延長として実現したという。

 印象的だったのは、「祭りを行うプロセスは災害対策本部の立ち上げとそっくり。祭りは最高の防災訓練だ」(岩手県陸前高田市)という報告だ。

 とはいえ、人口が密集し住民の流動性が高い東京は、他のどの地域とも異なる。今後、急速に高齢化も進むことを考え合わせて、これまでにない人のつながり方、新しい形のコミュニティーを探る必要性が指摘された。既存の制度が復興の足かせにもなりうるため、被災経験に基づく新たな制度設計も求められる。

 

若者という原動力

 

 公園内には3グループのほか、仮設店舗や仮設トイレ、仮設住宅が設置され、遊びを通して防災を学ぶ「仮設子ども塾」や復興アイデアを募集するコンテストなどのプログラムも同時開催された。

 各グループは3日間にわたって復興の局面に応じて必要となる日用品や課題を話し合い、3日目はその発表会があった。

 

話し合い

グループ別の話し合い

 

 それぞれ復興の前提となるメンバー内のコミュニケーションを図る工夫が見られた。あいさつから掲示板による情報共有、リーダーにニックネームを付けたり各テントに名前を付けたり。子どもの元気な姿が復興の力になるという経験知から、テント内に子どもが遊ぶスペースを設けたグループもあった。

 活躍が目立ったのは35人の学生ボランティアだ。SNSによる情報伝達を自然にこなし、裏方だけではなくリーダー的役割を果たした学生もいた。

 ある男子学生は「今回、地域のみなさんが学生を受け入れてくれる場があり、年代を超えてコミュニケーションを図れたことが一番の収穫だった」と話した。

 一方、複数の被災地から「都会から来た学生ボランティアとの出会いで現地の年寄りたちが元気になった。互いに認め合う関係を築けたのは震災のおかげ」との声があった。

 キャンプの最後にあいさつに立った中林代表は復興に向かうキーワードとして①つながり②コミュニケーション③若者④子ども⑤元気⑥愛着の6つを挙げ、「若者がつながりを築いていく最大の原動力になる。今回のキャンプの遺産を一人ひとりが引き継いで次につなげていきたい」と話した。
(片岡義博)(写真はすべて筆者提供)

 

【関連リンク】
・ 復興まちづくりキャンプ2019(公式HP
・ 復興まちづくりキャンプ2019(facebook

 

【筆者略歴】
 片岡義博(かたおか・よしひろ)
 1962年生まれ。共同通信社文化部記者として演劇、論壇などを担当。2007年フリーに。小平市在住。嘉悦大学非常勤講師(現代社会とメディア)

 

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