市の奨学金制度廃止案を可決 西東京市議会文教厚生委員会
西東京市議会の文教厚生委員会(藤田美智子委員長)が9月9日に開かれた。西東京市の奨学資金支給制度と奨学基金をそれぞれ廃止する条例案がともに賛成多数で可決された。学校司書を1校に1人配置を求める陳情は可否同数となり、藤田委員長の裁決で不採択となった。奨学資金支給制度は今年1月、市奨学生選考委員会(森本寛子委員長)が廃止を答申していた。
市教育委員会の説明によると、2004年に高校生枠(50人)の充実と大学生枠(50人)の廃止が同委員会から答申され、高校生枠を100人に増やすなど制度変更を実施。2010年度からは国による公立高校授業料の無償化、私立高校生への就学支援金支給が始まり、市の制度は運用休止となっていた。
2014年度は、国が授業料以外の経費負担を軽減する奨学給付金も創設。2017年度からは東京都が私立高校の授業料軽減助成金制度を拡充するなど、保護者負担が軽くなった-など、市教委は答申内容と同趣旨の提案理由を述べた。
中村駿氏(共産)と保谷清子氏(共産)は「奨学金返済が滞る学生が増えて社会問題になるなど状況は変わっている。大学生枠の復活を図るなど奨学金支給制度を継続するべきだ」「学生らを取り巻く経済環境は悪化して生活が苦しくなった。バイトに追われる学生も少なくない」などと述べて反対した。
学校司書を1校に1人配置することを求める陳情の採決で、賛成したのは共産2人、立憲1人、生活者ネット1人。反対は自民3人、公明1人。4対4で可否同数となったため、委員長の藤田氏(公明)が不採択と決めた。委員の森輝雄氏(無所属)は病気のため欠席だった。この陳情の署名人は6日に592人が追加提出され、計2015人に上った。
市教委によると、西東京市は1人の司書が1日6時間勤務で、2校を兼務している。学校司書が1人1校の勤務体制は、多摩26市のうち23市だった。しかし司書の1校当たりの配置時間は西東京市が年間759時間で、多摩地域の1校当たり687時間を上回り、26市中11番目だった。1校1人配置でも、毎日勤務ではなく、実際は多様な勤務実態だという。
これに対して中村氏(共産)や加藤涼子氏(生活者ネット)は、文部科学省が2017年度から始めた「学校図書館図書整備等5か年計画」を紹介しながら、「学校司書の配置に総額1100億円の財政措置がなされている」と指摘。「一般財源に含まれているため、学校図書館充実に有効に使われていない」などと述べた。
市教委は「現状の勤務状況のまま1校1人にすると、約3000万円計上される」と述べ、厳しい財政事情の下で「学校司書の連絡会、研修会を通じて学校図書館の充実を図りたい」と答えた。
このほか芝久保小学校の会議室を改修して芝久保第二学童クラブを新設する児童館条例改正案は挙手全員で可決した。
同性パートナーシップを含む性的マイノリティの人たちに市民の意見を反映させ、また相談窓口を設置する陳情は、6日に取り下げ申出書が提出された。陳情取り下げの承認は本会議事項のため委員会で審査せず、委員長から議長に報告することになった。
(北嶋孝)
【関連リンク】
・学校図書館図書整備等5か年計画(文部科学省「学校図書館を、もっと身近で、使いやすく」PDF:1.17MB)
・これからの学校図書館の整備充実について(報告)の公表について(文部科学省)