西東京に妖怪「アマビエ」降臨! 駄菓子屋さんのウインドウに描き降ろし

投稿者: カテゴリー: 新型コロナウイルス文化 オン 2020年4月29日

 新型コロナウイルスの災いを払い除けようと、伝説の妖怪「アマビエ」がSNSなどネット空間に頻繁に登場するようになった。しかしこの妖怪が、西東京市の一角に「降臨」したことを知っているだろうか。依り代はキットパスと呼ばれる新しい画材と駄菓子屋さんのウインドウ。巫女役を務めたのはウインドウアートで知られる地元在住の鈴木信子さんだった。10日ほど前、記者は目撃した!

 

完成したアマビエと鈴木信子さん(駄菓子屋ヤギサワベースの店頭)

 

 「アマビエ」は江戸時代、瓦版に絵入りで登場した。漫画家の水木しげるさんが妖怪巡りの作品で紹介したことでも知られている。「疫病がはやったら、自分の姿を写して人々に見せるように」と言い残したとか。そんなネット言説がにわかに広まった。

 降臨現場は、西武新宿線の西武柳沢駅北口にほど近い、富士街道沿いの駄菓子屋さん。その「ヤギサワベース」店主の中村晋也さんから前夜、「アマビエの絵をアーチストさんに描いてもらいます」と連絡が入った。店のウインドウに、アマビエ降臨! コロナ除けのまじないになるかも。そう言い聞かせて4月19日朝10時、店頭にやって来た。

 

初めは白い描線から始まった

身体はウロコ状に

 

 ほどなく現れたアーチストの鈴木信子さんは店主と軽く打ち合わせたあと、絵の具箱からキットパスを取り出した。新たな画材、水溶性のチョークだ。「水に溶け、拭くとすぐきれいに消えます」と鈴木さん。ウインドウを拭き清め、いきなり白い線を描き始めた。丸く重なるとやがて、頭部と長い髪が浮かんできた。下書きなし。描線は直に、ウインドウを淀みなく走り始める。

 絵は、ウインドウガラスの向こうから見る。描き手の鈴木さんはときどき外に出て、絵の見え方を確かめながら描いていく。重ね描きしたら、あとで描いた色がガラスに現れる。描いたカラーを指でなぞると画材が延びてぼかしになる。塗り潰したブルーを網目状に指で取り去ると、泡立つ海面が鮮やかに浮かんできた。最後にパウダーをはたいて、絵が溶けにくいように仕上げた。

 

ブルーの海が現れて

ところどころ拭き取ると砕け散る波に

 

 こうして2時間余り。丸顔、大きな目にくちばし、薄緑の長い髪の毛。身体のモザイクタイルはウロコか。後光に包まれ、星のきらめく、ほぼ等身大の妖怪アマビエが、波間に浮かびながら降臨した。

 鈴木さんは武蔵野美術大学で油絵を学んだ。その後テキスタイルデザインの仕事を経て、今は「ART WORKSHOP庵」を主宰。インストラクターとして、キットパスアートのワークショップを開いたりウインドウアートを制作したりしてきた。

 描き終えた鈴木さんは髪をかき上げながら「コロナ禍が収束して、みなさんが落ち着いて外に出られるようになるといいなあと思いながら描きました。楽しい気持ちで見てもらえたらいいですね」と話した。

 

外に出て絵を確かめ、話し合う鈴木信子さん(左)と店主の中村晋也さん

通りかかる人たちが見物客になる

 

 店主の中村さんは「お店も1カ月以上閉めています。それでも空いているかも、と来てくれる子がいます。そんな子どもたちがアマビエを見て、ホッとしてくれたらうれしい」。店内の駄菓子やマンガが子どもたちの「帰り」を待っている。

 通りかかる人たちがしばし立ち止まる。お年寄りも子どもも、男女の別なく、のんびり見物する。ゆったりした日曜日のお昼時。「きれい。写真を撮らせてください」とスマホ片手に駆け寄る女性もいた。完成後も、店頭で絵を眺めたりスマホで記念撮影する人が絶えないという。アマビエが引き連れてきたのは、穏やかな時の流れに浮かぶ「絵心」と「童心」だったのかもしれない。
(北嶋孝)

 

【関連情報】
・駄菓子屋ニュース アマビエ様降臨しました(ヤギサワベース
・ART WORKSHOP 庵(あん)(facebook

 

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