
高齢者、子ども、市民ボランティアがつながる 「おうち時間応援パック」が取り持つ縁
西東京市で、6月下旬から7月にかけて、市内75歳以上の市民に「おうち時間応援パック」が配布された。市内全ての小学校が参加し、それぞれの学校から10人程度の児童が応援メッセージを書いた。「みなさんが元気がないと聞いてとても心配しています。一日もはやく、えがおがもどることをねがっています」などと、子ども達の思いが素直につづられている。
「運動に取り組み、社会とつながる」ために
健康福祉部高齢者支援課の職員、杉野逸平さんは、「4月下旬に、コロナ禍の影響を確認するために、市がすすめているフレイル予防の3つの要素である食事・運動・社会とのつながりについてのアンケートを一部の地域で実施しました。9割近くが食事についてはしっかり取り組めているとの回答でした。一方、外出自粛による身体的制限によって、4割の方が、運動は取り組めていない、社会とのつながりが減ったとの回答がありました。フレイル予防として、この点をカバーすることができないか検討し、おうち時間応援パックの配布が決まりました」と言う。
元気でいてね。おうち時間
コロナ禍で出かけることができず、家にこもることを余儀なくされた75歳以上の高齢者に健康グッズなどを届ける、おうち時間応援プロジェクト。クールタオル、運動するためのトレーニングバンド、市内の風景写真の絵葉書。そして食事、栄養に関する冊子と、近隣小学校児童のお手紙が、ボランティアに手を挙げた市民の手で届けられた。受け取る人、配布する人、たくさんの市民が関わったプロジェクトだ。
子どもからの応援メッセージ
小学生が書いた手書きのメッセージを入れたアイデアは、職員の体験による。「小学生の頃に近所のお年寄りに手紙を書いて、とても喜んでもらい、しばらく文通をしました。その経験がお手紙配布につながりました」。
配送が始まり、最初に高齢者支援課に届いたのは、グッズにあった葉書に書かれたお礼状だった。それを皮切りに連日電話が鳴り響いた。「もったいない」と言う声がある一方、「心配してくれてありがとう」「小学生からのメッセージが嬉しかった」「トレーニングバンド使います」などの電話が続いたと言う。
フレイル予防と、共生社会が一歩前進
封入や配送に関わったのは、プロジェクトに応募した一般の市民だけではない。障がい者施設や、市が運営する「若者の居場所事業・We 」からも参加があった。配送の経験がない市民も多かったが、該当する家がわからない時は隣近所に聞いたりしながら配布したと言う。郵便局の人や宅配業者に声をかけて教えてもらう人もいた。高齢者へ支援をしたいと言う思いがあふれる仕事ぶりだった。
「ありがとう。ご苦労さま」の言葉と笑顔
市民プロジェクトに参加した三保谷浩輝さん(59)の話。
「新型コロナウイルス感染への不安や外出自粛(ステイホーム)などで心身ともに窮屈な思いをされている“先輩”方に少しでもお役に立ちたい―。そんな思いもあって、応援パック配布のお手伝いをさせていただきました。地域ごとの仕分けやポストへの投函の作業を繰り返すなか、ある大型マンションでうれしいことがありました。集合ポストの位置を管理人さんに聞くと、管理人さんと年配の男性がポストまで案内してくれました。そして、「俺のもあるのかな」。お名前と部屋番号をうかがって、直接お渡しすると、「ありがとう。ご苦労さま」の一言。その言葉と笑顔でこちらが励まされたような気になりました。こんなときだからこそ、よりお互いに思い合い、助け合うことの大切さを直に教えていただきました」。
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今回の事業で、グッズを受け取った市民がおよそ2万6500人。ボランティアに関わった人が120人。障がいがある人もない人も、10代から70代まで幅広い年齢層が参加したこの事業。共生社会とフレイル予防をすすめる取り組みとなったのではないか。
(石田裕子)
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