フードパントリー

フードパントリー、6月いっぱいで店仕舞い 9ヵ月間のドラマを振り返る

投稿者: カテゴリー: 暮らし子育て・教育 オン 2021年6月25日

 「6ヵ月なら頑張れるから、やってみようよ」。西東京わいわいネット代表、岸田久惠さんの言葉でフードパントリーが始まった。多くの人の協力の下、残すところあと1回で終わりを迎える。今年3月で店仕舞いするのが忍びなくて6月まで3ヵ月延長し、結局昨年10月から9カ月間、西武新宿線田無駅の南口駅前で週2回、店を開き続けた。この間、さまざまな出来事があった。ここで起きたドラマを少し振り返ってみよう。(写真は、田無駅南口にあるフードパントリー会場)

 

頼もしい若者ボランティアたち

 

 フードパントリーでは、6個ほどの大箱に何種類かの食品を入れて、そこから一つずつ選んでもらう方式にしていた。学生ボランティアが「こんにちは! この中からおひとつどうぞ!」「どれがいいですか⁉」。小さな子どもさんがカウンターの箱のなかが見えないようだと「抱っこして見せてあげるね!」。明るい声かけで会場を常に盛り上げてくれた中学生、高校生、大学生、社会人。特別支援学級の子も、ヘルプマークをつけている子も、日本人も外国人も。色々な若者が「上から目線でなく」「満面の笑顔で」フードパントリーの会場を盛り上げてくれた。

(写真1)

ボランティアの若者たち

真剣に働くカウンター内の若者たち。赤いマスク姿が代表の岸田さん。

 

支援の輪が広がる

 

 いつもたくさんの寄付をくれる常連さんから、相談を受けたことがあった。田無駅前のペデストリアンデッキにずっと心配な人がいる、と言う。フードパントリーに市の職員が何かと顔を出しているのを知って、相談してくれたのだ。すぐに職員が動き、必要な支援ができた。子どもに優しい人は、誰にでも優しい。心配から安心に変わる、嬉しい出来事だった。

 また、ある時は唐揚げ専門店から「1万円分の寄付です!」と出来立ての唐揚げが届いた。市民の方が、コロナ禍で頑張っているお店への支援とフードパントリーの支援をしてくれたのだ。何度も何度も地元のパン屋さんのパンを買って届けてくれた人もいた。こちらも、パン屋さんへの支援とフードパントリーへの支援である。

(写真2)

フードパントリー

池澤隆史市長(左端)が視察に来てくれたので、消毒液を渡して働いてもらった

 

9ヵ月の活動を振り返るためのアンケート

 

 5月には、わいわいネットの活動を振り返るためにアンケートを実施した。アンケートには、6月15日現在で60名の方が答えてくれた。
 以下は自由記述の回答の抜粋である。

 「最初は戸惑いましたが、利用して良かった」「家計とと共に精神的に救われました。お手伝いの学生さん達ありがとう」「生活に潤いができました」「支援している方もとても明るく、いつも楽しみにしていました」…

 子どもが書いたと思われる筆跡でもたくさんの意見があった。
 「また、やってほしいです」「良かった。たのしかった。おかしがもらえてうれしかった。生活にやくにたった。」「かいすうが、へってもやってほしい」…
 アンケートを作り、集計したメンバーは「泣けます」と、私達メンバーに報告した。

 

赤ちゃんが生まれた! 卒業式もあった!

 

 2人目の赤ちゃんがお腹にいる人、3人目の赤ちゃんがいる人、両方とも、フードパントリーの開催中に無事に赤ちゃんが生まれた。お姉ちゃんになった上の子を連れて来たパパには、みんなで「おめでとう!」と伝え「赤ちゃんの3倍、上の子を可愛がるのよ」と先輩風を吹かしてみた。1ヵ月すると赤ちゃんを連れたママも参加。学生ボランティアが赤ちゃんの小さな姿に感動していた。3人目の赤ちゃんを連れたママには、お願いしてちょっと抱かせてもらうことができた。

 

子どもたち

「赤ちゃんが生まれて子どもが3人になりました」

子どもたち

いつも水曜日にパパと来る男の子は元気いっぱい

 

 3月には、高校三年生の子が、卒業式後に来て、卒業証書を黙って差し出して見せてくれた。寡黙な彼にスタッフから矢継ぎ早に声がかかる。「これからどうするのぉ」「4月からも顔見せに来てよ」「卒業おめでとう!」。みんなで卒業を祝うひとときとなった。

 

ゆっくりと歩き続けたい

 

 9ヵ月のボランティアは、とても楽しかった。そしてそれと同じくらい大変だった。もともと1ヵ月に一度の子ども食堂をやっていたメンバーが、1ヵ月に9回活動したのだ。トータルで78回。延べ2420組4643人を受け入れた。そりぁ、疲れるはずだわ。週に2回、会えばそりぁ、みんな仲良くもなるわ。だけど、同じようには続けられはしない。予算がついたら「やって当然」になるし、回数そのままでは、還暦以上の年齢が多いメンバーのカラダが持たない。他の用事を後回しにやってきた反動も大きい。今はメンバー内で知恵を出し合い、今後の活動を検討中である。しっかりと振り返って、次の活動に踏み出していきたい。ゆっくりと一歩ずつ。

 

 ロシア人の学生ボランティア、ユーリアさんが流暢な日本語で「26日には、(コロナ禍だから)打ち上げはできませんねぇ」と残念そうに言った。私は個人的には、チラシ作り、食品の確保、問い合わせの対応など、実にたくさんの役割を担ってくれた、岸田代表を、最終日に、胴上げできないだろうかと妄想している。

 

 そして、皆さんに感謝を伝えたい。まずは、食品を受け取りに来てくれた皆さん。そして、格安で場所の提供をしてくれた大家さん。たくさんの寄付と毎回のゴミの受け入れをしてくれたセブンイレブンのオーナーさん。市の職員の皆さん。寄付をくださった皆さん。9ヵ月間のご支援ご協力に心からのありがとうを。
(石田裕子)

 

石田裕子
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