
20年の「居場所」活動をもっと多彩に コミュニティーレストラン「木・々」は灯を消さない 「持続化給付金」対象外に怒り
「地域の居場所をつくりたい」と仲間たちが資金を出し合い、20年前から運営してきた西東京市のコミュニティーレストラン「 木・々」がコロナ禍の中で、苦境に陥っている。「みなし法人」なので、国の「持続化給付金」が受けられないことがわかった。しかし、「ここはみんなの居場所。灯は消さない」と代表の鈴木美紀さんと仲間たちは次の展開に取り組みはじめた。
仲間たちと資金を出し合い「居場所」をつくる
鈴木さんたちが「自分や仲間たちや地域の人たちが交流する場所が欲しい」と話しあい、元八百屋さんだった場所を見つけた。2000年にはコミュニティーレストラン「木・々」を開設した。改修費1000万円は、仲間たち9人がそれぞれ50万円ずつ出し合い、不足分はサポーター会費や寄付でまかなった。
もともと「安心」にこだわった協同組合で活動していたから、食材には自信がある。「お酒も出して、気軽に話も相談もできる場所にしたい。生活や政治のことも話し合いたい」と、まずレストランを開始。居酒屋、絵手紙、俳句、健康麻雀などの教室や介護者交流の場としてケアラーズカフェなどを次々に開設。マルシェや地元の野菜も販売も始めた。
所在地は西東京市保谷町6丁目。保谷小学校が近くなので、子ども食堂や宿題ルームも設け、子どもたちや母親、高齢の方たちが「気軽に集える場所」になっていた。リサイクル洋服の販売、小物も置いた。ここに来る人たちが持ってきた。店や活動を支えるサポーターも70人近くになった。
一方で自分たちの高齢化もあり、次にどうするか考えていた矢先のコロナ禍だった。
売上6割減。「持続化給付金」申請したら
コロナ感染が広がる中で、急速に活動も事業も減速。家賃と光熱費だけでも月に17万円が必要だ。しかし4月には売り上げが6割減になった。
退職して「木・々」を手伝いようになった片山文敏さんが、5月に入って国の「持続化給付金」を申請した。「法人番号が違う」とはねられた。それならと個人事業主で申請した。受け付けはできたが、2週間後に突然「法人格を持っていないので、対象外だ」との通知がきた。
「20年間、法人として活動し事業税や住民税もはらってきた」と交渉した。「該当しない」との返事だった。
「みなし法人」では地域のためにと事業を続けてきても制度の対象外らしい。市の「店舗等家賃補助金」も、法人格を持っていないと活用できない。結局、都の「感染拡大防止協力金」だけ受給でき、やっと家賃と光熱費を払うことができ、一息ついた。
コロナ禍の中でも、やることはある
自粛は要請されても、店を継続する保証がない。それでも仲間たちの意見で、4月9日から6月まで延べ30日間で222食の「子ども無料弁当」を店頭で配った。
近くにチラシをまいた。若い夫婦らしい人が申し訳なさそうに「子どもが多いんですけど、いいですか」と来たり、弁当を取りに来た子どもが、「おじいちゃんに弁当持って行っていいですか」と、小さな声で話しかけてきたりしたこともある。
食べるのにも苦しい人がいるんだと気がついた。
コロナ禍の中で「現実が見えてきた」とはよく言われる。大切なのはそれを受け止め、次に活かして何をするかだ。
政府の配ったマスクを集めて、野宿支援者の会に送ったり、炊き出しのための募金活動にも取り組んだ。自粛でもやることはある。こんな時こそ「人が支えあうこと」が必要だ。
次に向かうために夢を描く
「木・々」は、仲間たちが協同し、資金も出し合って運営してきた。「みなし法人」で、地域に必要な存在として20年間「仕事」を営み続けてきた。
自分たちや地域の課題を解決したい、子どもや高齢者のこと、このまちを楽しくしたいと考えて、法人のあるなしにかかわらず活動する人たちも少なくない。
国会では、持続化給付金を巡り、委託先が事務の大半を(委託費をたっぷり取って)再委託し、「事業費の中抜きがされている」と追及されていたが、「わたしたちが、潰れると悩んでいる時に、いったい何をやっているんだと腹立たしい」と怒りが募る。
「この場所を潰すわけにはいかない。一人暮らしの高齢者のために「みんなで晩ご飯」を企画したい。子ども食堂も始める。若い人が集まれるスペースも考えたい。みんなのアイデアでこの場所をもっと多彩にしたい」と、気持ちは次に向かい始めている。
鈴木さんたちは「協同する力を集めて地域に必要な仕事、良い仕事をつくりたいと思ってがんばってきた。そういう働き方が制度として認められ、資金面の支援もあったら、自分たちもこの町ももっと元気になれる」と話している。
(川地素睿)
【関連情報】
・コミュニティーレストラン「木・々」(HP)
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