木・木

20年の「居場所」活動をもっと多彩に コミュニティーレストラン「木・々」は灯を消さない 「持続化給付金」対象外に怒り

投稿者: カテゴリー: 暮らし オン 2020年7月19日

 「地域の居場所をつくりたい」と仲間たちが資金を出し合い、20年前から運営してきた西東京市のコミュニティーレストラン「 木・々もくもく」がコロナ禍の中で、苦境に陥っている。「みなし法人」なので、国の「持続化給付金」が受けられないことがわかった。しかし、「ここはみんなの居場所。灯は消さない」と代表の鈴木美紀さんと仲間たちは次の展開に取り組みはじめた。

 

仲間たちと資金を出し合い「居場所」をつくる

 

 鈴木さんたちが「自分や仲間たちや地域の人たちが交流する場所が欲しい」と話しあい、元八百屋さんだった場所を見つけた。2000年にはコミュニティーレストラン「木・々」を開設した。改修費1000万円は、仲間たち9人がそれぞれ50万円ずつ出し合い、不足分はサポーター会費や寄付でまかなった。

 もともと「安心」にこだわった協同組合で活動していたから、食材には自信がある。「お酒も出して、気軽に話も相談もできる場所にしたい。生活や政治のことも話し合いたい」と、まずレストランを開始。居酒屋、絵手紙、俳句、健康麻雀などの教室や介護者交流の場としてケアラーズカフェなどを次々に開設。マルシェや地元の野菜も販売も始めた。

 

この日は「音読」

 

 所在地は西東京市保谷町6丁目。保谷小学校が近くなので、子ども食堂や宿題ルームも設け、子どもたちや母親、高齢の方たちが「気軽に集える場所」になっていた。リサイクル洋服の販売、小物も置いた。ここに来る人たちが持ってきた。店や活動を支えるサポーターも70人近くになった。

 一方で自分たちの高齢化もあり、次にどうするか考えていた矢先のコロナ禍だった。

 

売上6割減。「持続化給付金」申請したら

 

 コロナ感染が広がる中で、急速に活動も事業も減速。家賃と光熱費だけでも月に17万円が必要だ。しかし4月には売り上げが6割減になった。

 退職して「木・々」を手伝いようになった片山文敏さんが、5月に入って国の「持続化給付金」を申請した。「法人番号が違う」とはねられた。それならと個人事業主で申請した。受け付けはできたが、2週間後に突然「法人格を持っていないので、対象外だ」との通知がきた。

 「20年間、法人として活動し事業税や住民税もはらってきた」と交渉した。「該当しない」との返事だった。

 「みなし法人」では地域のためにと事業を続けてきても制度の対象外らしい。市の「店舗等家賃補助金」も、法人格を持っていないと活用できない。結局、都の「感染拡大防止協力金」だけ受給でき、やっと家賃と光熱費を払うことができ、一息ついた。

 

コロナ禍の中でも、やることはある

 

 自粛は要請されても、店を継続する保証がない。それでも仲間たちの意見で、4月9日から6月まで延べ30日間で222食の「子ども無料弁当」を店頭で配った。

 近くにチラシをまいた。若い夫婦らしい人が申し訳なさそうに「子どもが多いんですけど、いいですか」と来たり、弁当を取りに来た子どもが、「おじいちゃんに弁当持って行っていいですか」と、小さな声で話しかけてきたりしたこともある。
 食べるのにも苦しい人がいるんだと気がついた。

 

代表の鈴木美紀さん(右)と片山文敏さん(左)

 

 コロナ禍の中で「現実が見えてきた」とはよく言われる。大切なのはそれを受け止め、次に活かして何をするかだ。

 政府の配ったマスクを集めて、野宿支援者の会に送ったり、炊き出しのための募金活動にも取り組んだ。自粛でもやることはある。こんな時こそ「人が支えあうこと」が必要だ。

 

次に向かうために夢を描く

 

 「木・々」は、仲間たちが協同し、資金も出し合って運営してきた。「みなし法人」で、地域に必要な存在として20年間「仕事」を営み続けてきた。

 自分たちや地域の課題を解決したい、子どもや高齢者のこと、このまちを楽しくしたいと考えて、法人のあるなしにかかわらず活動する人たちも少なくない。

 国会では、持続化給付金を巡り、委託先が事務の大半を(委託費をたっぷり取って)再委託し、「事業費の中抜きがされている」と追及されていたが、「わたしたちが、潰れると悩んでいる時に、いったい何をやっているんだと腹立たしい」と怒りが募る。

 「この場所を潰すわけにはいかない。一人暮らしの高齢者のために「みんなで晩ご飯」を企画したい。子ども食堂も始める。若い人が集まれるスペースも考えたい。みんなのアイデアでこの場所をもっと多彩にしたい」と、気持ちは次に向かい始めている。

 鈴木さんたちは「協同する力を集めて地域に必要な仕事、良い仕事をつくりたいと思ってがんばってきた。そういう働き方が制度として認められ、資金面の支援もあったら、自分たちもこの町ももっと元気になれる」と話している。
(川地素睿)

 

【関連情報】
・コミュニティーレストラン「木・々」(HP

 

川地素睿
(Visited 1,374 times, 1 visits today)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA