日本・ベトナム共同製作映画が国際映画祭へ 来日ベトナム女性3人を描く「海辺の彼女たち」

投稿者: カテゴリー: 暮らし文化 オン 2020年9月14日

©2020 E.x.N K.K.

 日本・ベトナム共同製作映画「海辺の彼女たち」(英題:Along the Sea)(藤元明緒監督)が9月18日からスペイン・バスク地方の都市サンセバスチャンで開かれるサンセバスチャン国際映画祭の新人監督部門に選定され、現地で19日と20日、世界初上映されることになった。

 

 この映画では、よりよい生活を求めて来日したベトナム女性3人の苦悩と葛藤が描かれる。日本の労働現場で不当な扱いを受け、職場を逃れて不法滞在となった3人が、ブローカーを頼りに新たな職を求めて雪国の港町にたどり着く…。今年2月、青森県の外ヶ浜町で1ヵ月間ロケ撮影が行われた。

 

 藤元監督が4年前、外国人技能実習生の過酷な労働に悩むSOSメールを受け取ったことが作品のきっかけになった。連絡が途絶えた彼女の消息が頭から離れなかった。その後、故郷から遠く離れた場所で、いつ捕まるかも分からない生活を送る多くの同じような環境にある人たちや支援者らを取材し、オリジナルの脚本が完成した。

 

 新作の主役の3人は昨年6月、共同製作会社の協力の下、ベトナムのハノイとホーチミンでオーディションを開き、選出した。

 

映画「海辺の彼女たち」から(©2020 E.x.N K.K.)

 

 藤元監督はプレスリリースに発表したコメントで、「世界中の人たちが集う映画祭という場で、”彼女たちの声”が届くことを願っています」と述べている。

 

 この作品は藤元監督の第2作。最初の映画「ぼくの帰る場所」」(2017年)は在日ミャンマー人家族の実話に基づいた作品。同年の第30回東京国際映画祭「アジアの未来」部門で作品賞のほか、国際交流基金アジアセンター特別賞なども受賞。他の国際映画祭でもグランプリを獲得するなど高い評価を得た。

 

 両作の企画、製作、配給は、西東京市に拠点を置く株式会社E.x.N(エクスン)。同社のプロデューサー渡邉一孝さんは藤元監督とともに18日から現地に滞在予定。渡邉さんは「(藤元監督の)前作『僕の帰る場所』では達成できなかったヨーロッパでの大きな舞台、肩を並べる同部門で競う作品たち、コロナ禍での開催、さまざまなことを考えますが、頂いた機会を大事に映画祭を経験してこようと思います」と話している。公開は来年2021年の予定。

 

 サンセバスティアン映画祭は今年68回を迎える。カンヌ、ベルリン、ベネチアとともに知られる国際映画祭だ。新人監督賞部門にはこれまで高橋陽一郎監督「水の中の八月」(1998年)」などの日本人監督の作品がノミネートされ、藤元監督が6人目となる。今年のメインコンペティション部門には、河瀬直美監督「朝が来る」と佐藤快磨監督「泣く子はいねぇが」の2作が選ばれた。
(北嶋孝)

 

【関連情報】
・SAN SEBASTIAN INTERNATIONAL FILM FESTIVAL(SSIFF
・New Directors 2020. 68th Edition(SSIFF
・A FILM PRODUCTION COMPANY E.x.N(HP

 

北嶋孝
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