Print This Post Print This Post
近藤菜穂子さん

ある朝突然、接触確認アプリから通知が来た 新型コロナウイルスに翻弄された数日

投稿者: カテゴリー: 新型コロナウイルス健康・医療 オン 2021年1月27日

 新型コロナウイルスの接触確認アプリから、ある朝突然1通の通知が届く。「(感染者との)接触が確認されました」。受け取った人は、驚き、恐れ、不安に駆られる。FM西東京の人気パーソナリティーとして活躍したフリーアナウンサー、近藤菜穂子さんの身に、そんな驚きの出来事が起きた。そのあと、どうなったのか。本人の体験を報告してもらった。(編集部)(写真提供:FM西東京)

 

 1月上旬に再度発出された緊急事態宣言を受け、新型コロナウイルスの新規感染者数は少しずつ減っているものの、予断を許さない日々が続いている。少し前までは、身近で感染した方の話は聞かなかったが、ここ最近は「友人の職場の同僚」「SNSで繋がりのある人」が感染したという話を聞くようになり、いよいよ身近に迫ってきていることを感じていた。

 

 私自身、手洗いや消毒はもちろん、人との接触機会をなるべく減らすなどの感染症対策はしっかりと行っていた…つもりだった。

 

 つもり…としたのは、私自身がしていたのはあくまで「感染しないための対策」であり、「感染した・感染者の接触者になった時の行動」に対しては、ほぼ丸腰だったからだ。

 

 今回は、「新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOA」から突然通知が来て、大いに焦り、不安に涙ぐみ、数日間思い悩んだ私の体験談を届ける。今まさに同様の体験をし、不安な思いを抱えているという方の役に少しでも立てば嬉しい。

 

新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOAとは

 

 新型コロナウイルス感染拡大を防止する目的で、昨年6月に厚生労働省よりリリースされたスマートフォンアプリ。スマートフォンの近接通信機能(ブルートゥース)を利用して、陽性者と接触した可能性について通知を受けることができる。

 

アプリの仕組み(厚生労働省 接触確認アプリについて(概要)より)

 

 厚生労働省によると、1月22日時点のダウンロード数は約2,408万件、陽性登録件数は9,033件。国内の累計感染者数が1月24日時点で36万人を超えていることを考えると、ダウンロード数のみならず、陽性者の登録件数の少なさも見て取れる。

 

 感染が身近に迫っている…といえど、接触確認アプリのダウンロード数はまだ多くない。正直「私に通知が届くことなんてないだろう」と高を括っていた。

 

ついにその日が来た

 

 1月14日木曜日の朝、突然スマートフォンにこのような通知が入った。

 「このデバイスで1件の接触の可能性が特定され、接触確認アプリと共有されました」

 

通知スクリーンショット

通知スクリーンショット

 

 アプリのダウンロードから約7ヵ月、「本当に機能しているんだろうか?」という疑念すら持ち始めていた中、初の接触通知に一気に脈が速くなる。

 

 「大丈夫、まずは落ち着こう」と自らに言い聞かせるものの、身体は正直だ。心臓が早鐘を打つ。かすかに残った理性が働き、この通知が検査機関で証拠になるのでは? とスクリーンショットを撮り、急ぎ接触確認アプリを開いた。

 

スクリーンショット

接触が確認されなかったスクリーンショット

 

 「陽性者との接触は確認されませんでした」

 

 「どっちやねん…」。東京生まれ埼玉育ちの私から関西弁が飛び出すくらいには動揺していた。

 

 厚生労働省のホームページ内にある「Q&A」には、次のような問答が載っていた。

 

【問】陽性者との接触があったようなプッシュ通知が表示されましたが、接触確認アプリを開いて陽性者との接触を確認すると「陽性者との接触は確認されませんでした」と表示されます。
【答】iOS搭載のスマホで接触確認アプリ1.1.3以前のバージョンをご利用の場合、1メートル以内で15分以上という判定基準よりも広範な接触についてプッシュ通知が表示されていることが明らかになっていますので、該当する場合は接触確認アプリで陽性者との接触の有無をご確認ください。

 

 接触確認アプリの通知を送る判定基準は「1m以内で15分の接触」。スマートフォンにプッシュ通知を送る判定基準はそれよりも緩い、ということらしい。そもそも私のアプリは最新版『1.2.1』なのに、このような通知が届いてしまった。

 

 結局のところ、これが「不具合」なのか、厚生労働省のホームページを読むだけでは解決できなかった。続いて私は、インターネット上にある、同様の体験をした方の記事を読み、自身が本当に陽性者と接触していたのかを調べ始めた。

 

 ここにiPhoneでの調べ方を記すが、iPhoneのシステムバージョン13.7を境に調べ方が微妙に違ってくる。

 

 私の13.6.1バージョンのiPhoneの場合はこうだ。

 

 「設定」→「プライバシー」→「ヘルスケア」→「COVID-19接触のログ記録」→「接触チェックの記録」というように開いていく。ここの「一致したキーの数」というのを確認する。接触がない場合は「一致したキーの数」がすべて0と表示。「一致したキーの数」が1以上のものがあれば、陽性者と接触があったということになる。

 

スクリーンショット

一致したキーの数

 

 どうやらやはり1人の陽性の方と接触をしている。

 

 全く記憶にない。通知が来た1月14日から過去を振り返っても、淋しいことに人と接触した覚えがない。緊急事態宣言が発出された1月7日よりもさらに前から、スーパーへの買い出しの他に、人がいる場所にほとんど出かけていないのだ。

 

 ようやく落ち着きを取り戻しつつあった私は「これは何かの間違いかもしれないね」と同居する家族に話すと「間違いではなかったら? PCR検査を受けたほうがいい」と返された。ごもっともな話だ。この時の私は、自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりしてしまう、いわゆる「正常性バイアス」が働いた状態だったのかもしれない。まさか私が? と思いながらも、とうとうPCR検査を受けることにした。

 

PCR検査受診へ

 

 接触確認アプリに通知が来た場合、相談センター等の判断によりPCR検査を無料で受けることができる(医療機関での検査については初診料が別途かかる)。私のように、アプリの画面では「接触は確認されません」と出てしまうこともある。通知が間違って消えてしまうこともある。できればスマートフォンへの通知画面をスクリーンショットしておくことを勧める。

 

 さて、調べてみると、近所のクリニックでPCR検査を行っているということなので、早速電話をしてみた。事の次第を告げると検査を受けるように言われた。

 

 「検査は予約制で、個室の隔離部屋で待って受けることができますが、それでも感染のリスクはご了承ください」

 

 「感染のリスク」という言葉が出ると思わず怖気づいてしまうが、最短だという夕方の予約をとり、意を決してクリニックへ向かった。その出で立ちは、不織布マスクに帽子、メガネ、手袋。はためには「不審」だったかもしれないが、素人なりの「完全防備」だった。

 

クリニックでは

 

 クリニックに到着すると、一般待合室が混み合っている。密だ。PCR検査受診者用の隔離部屋へすぐに入れるかと思いきや、隔離部屋に入るのに待たなければならないらしい。一般待合室の外の廊下に丸椅子が置かれ、座って待つように案内される。

 

 この後、ここで合計2時間待つことになる。予約していても、その時間通りとはいかないようだ。その間、私の他に待っていたのは合計5人ほど。約2メートルの間隔で横に並んでいる。年代は20代~30代と思われる方が多い。私の隣に座っていた女性は苦しそうに頭を抱え、咳を繰り返していた。女性に申し訳ないと思いつつ、私はすぐに席を立ち、ひとり離れたところで順番を待っていた。

 

 「なぜすぐに隔離部屋に入れないのだろう?」
 「症状のある方が並んで待っている状況は危ないのでは?」

 

 そんなことが頭に浮かんできたが、まさにこれが全国で起きている医療現場での混乱の一端なのかもしれないと思うと、不満を口にするのもはばかられる。

 

 「そもそも、すぐにPCR検査を受けられること自体が恵まれているのでは」などと考えながら廊下の隅に立ち続け、2時間が経った頃ようやく隔離部屋に通される。

 

 このクリニックでは、複数ある診察室や処置室、検査室をPCR検査用の隔離部屋として使っているようだった。私の通された部屋は、キャスターが付いた簡易的なベッドと、なにかの検査に使うような見たことのない機械が置いてあった。

 

 「荷物はどこでもご自由に置いてくださいね」と声をかけられたが、膝の上に置いたまま待つ。その間も周りの部屋からは絶えず苦しそうな咳が聞こえている。あちらの部屋もこちらの部屋もPCR検査を受けようとする人たちで埋まっているのだ。「思っている以上にこの感染症は自分のそばにあるのかもしれない」と思うと、膝の上の荷物を抱える腕に力が入る。

 

 いよいよ検査の時。
 検査は唾液を採取して提出するタイプだった。看護師からは「ここ1時間に歯を磨いたり、飲食はしていませんか?」と確認される。検査結果に影響が出る可能性があるらしい。私は廊下で2時間待っていたので問題はなかったが、家を出る前に歯を磨いていたので、到着後すぐに検査をしていたら正確な検査結果が得られなかったかもしれない。

 

 5分かけて容器に唾液を入れていく。唾液を泡立ててはいけないらしいが、これが難しい。唾液が出づらい時はスマートフォンに梅干しの画像を表示させようかとも考えたが、杞憂に終わった。

 

 結果は2日後、陰性でも陽性でも電話が来るとのこと。結果が出るまでは外出しないようにと注意を受け、保健所が発行した注意書きが渡された。

 

保健所資料

保健所資料

 

 検査後は隔離部屋で会計を済ませ、人と接触をしないままクリニックを出た。予約時間から2時間半ほどが経過していた。

「ようやく帰れる」

 外に出るとすっかり日は暮れて、空気は冷たくなっていた。ひんやりとした空気の中で、ここ数時間の様々な感情が徐々に落ち着いていくのを感じていた。

 

PCR検査の結果

 

 PCR検査を受けてから2日後に「陰性でした」と電話があった。

 

 「晴れて陰性だ!一安心!」。決してそうはならなかった。「検査を受けたクリニックで感染していたら?」という心配が消えなかったからだ。

 

 新型コロナウイルスの感染から発症までの平均日数は5日程度と言われている。検査結果は陰性だとわかっていても、「あの場で感染したのでは」という新たな不安がなくなるまでは、さらに時間が必要だった。

 

フェーズが変わった

 

 検査を受けてから2週間が経ち、現時点で体調に変化はないが、今後もさらなる感染症対策が必要だ。対策というのは、手洗いや消毒、マスクだけではない。陽性者との接触が確認された場合、感染した場合、自宅療養になった場合。あらゆる可能性を想定し備えておかないとならないフェーズに入っていると、今回の体験を通し改めて感じた。

 

 接触確認アプリからの突然の通知に感情が揺れ動いた、この数日間の体験が、どなたかの参考になればと思っている。

 

 ここまで読んでくださった皆さまもどうかお体と心を大切に。一日も早く穏やかな日々が戻り、友人たちと飛沫を気にせずに笑い合えることを心から願っています。
(近藤菜穂子)(写真と画像は筆者提供)

 

【関連情報】
・ 新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOAに関する情報(厚生労働省
・新型コロナウイルス接触確認アプリについて(概要)(厚生労働省

 

近藤菜穂子さん

近藤菜穂子さん(写真提供:FM西東京)

【筆者略歴】
 近藤菜穂子(こんどう・なおこ)
 1977年生まれ。埼玉県所沢市育ち。元ひばりが丘住民。
 大卒業後はインテリア商社に勤める。30代半ばでラジオパーソナリティーに転身。東日本大震災直後から岩手県で地域の情報番組のパーソナリティーを担当。2015年からはFM西東京でパーソナリティーをしながら、ディレクターとして制作も手がける。現在はフリーアナウンサーとして場所を問わず活動中。

 

(Visited 17,564 times, 81 visits today)

ある朝突然、接触確認アプリから通知が来た 新型コロナウイルスに翻弄された数日」への1件のフィードバック

  1. 前田和男
    1

    検査結果は陰性だったことを喜ぶべきと思います。COCOAは1m以内で15分間接触した人数をカウントします。最低周囲4人が対象と考えて良い。マスク装填は判断しない。従って、最大の濃厚接触者をカウントしています。安全サイドの測定です。私は、現状に大賛成です。6000万人のダウンロード、感染者のデータ入力を迅速にする方法を考えるべきでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA