地域メディアの最前線をリポート 『令和のローカルメディア』刊行 「ひばりタイムス」も登場

投稿者: カテゴリー: 環境・災害メディア・報道 オン 2021年8月7日
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 地域情報を発信するさまざまな地域メディアの最前線を伝える『令和のローカルメディア』(あけび書房)が発刊された。激変する地域メディアの可能性と課題を具体的な事例とともにリポートし、災害対応や地域活性化に果たす役割の大きさを伝えるドキュメントだ。

 

 著者は武蔵大教授の松本恭幸氏、元河北新報社メディア局長でメディアプロジェクト仙台代表の佐藤和文氏、ビデオ作家の佐藤博昭氏の3人。地方紙、CATV、コミュニティーFM、ウエブメディア、地域映像祭、自治体広報、市民メディア(ミニコミやインターネット放送など)について全体的な動向を考察するとともに、先進的な事例を取り上げて運営理念からコンテンツの制作過程、資金やスタッフの調達方法までを詳細に記している。

 

 インターネットの普及で部数減に苦しむ地方紙では、報道体制のイノベーションに向けてシリコンバレーへの実地研修や社内外270人へのインタビューを実施した静岡新聞の挑戦に焦点を当てている。CATVでは、鳥取県米子市に本社を置く中海テレビ放送を取り上げ、地域のニュース報道に力を入れた地域密着型の放送、米子をハブとした全国CATVへの配信サービスなどを報告。自治体広報では、愛媛県松山市の広報誌で市内の中学生が地域の歴史や文化を紹介する連載企画が市民の大きな反響を呼んだ例を紹介している。

 

TOKYO854

「TOKYO854 くるめラ」のスタジオ

 

 北多摩地域の事例もある。大規模災害を契機に次々に開局したコミュニティーFMでは、「TOKYO854 くるめラ」(旧FMひがしくるめ)が、市民ボランティアスタッフの活用など局の置かれた状況に応じて運営方式を変え、経営を安定させた事例として登場する。ウエブメディアでは、本サイト「ひばりタイムス」が「従来のマスメディアが充分にカバーできなかった地域の情報ニーズの隙間を埋める役割を担うもの」と位置づけられている。

 

 ローカルメディアの役割として本書が注目するのは、大規模災害時の情報提供に加え、「関係人口」の拡大に向けた地域の魅力発信だ。関係人口とは移住したり観光に来たりする人々ではなく、地域と多様な形で継続的にかかわる人々のことを指す。人口減少時代にローカルメディアのあり方が地域再生のカギになるという。

 

 インターネットやSNS、携帯ビデオカメラなどメディア環境の進展に伴って普通の人々がメディアの主体として関わる時代になった。本書にも市民ジャーナリスト、市民ディレクター、市民映像作家などが次々に登場する。メディアや自治体、企業だけでなく、地域情報を発信しようとする市民にとっても貴重なケーススタディ集になるだろう。
(片岡義博)

 

【関連情報】
・『令和のローカルメディア』(あけび書房

 

 

片岡義博
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