
「未来の職業を探そう」 田無三中で「仕事のお話を聞く会」 「三中応援団」と「育成会にしはら」が共催
中学生が、大人たちのさまざまな職業や仕事体験の話に耳を傾ける-。地域住民の「学校応援団」が「育成会」と協力し、生徒たちの未来の職業探しを手助しようと企画した「仕事についてのお話を聞く会」が開かれました。この企画実現に動いた西東京市立田無第三中学校の「三中応援団」責任者の本田雄三さんに、当日の模様や実現までの経緯をまとめてもらいました。(編集部)(写真は、西東京市立田無第三中学校)
9人の大人が「仕事」を語る
6月10日午後、9人の大人が西東京市西原町3丁目の田無第三中学校(東山信彦校長)にやって来ました。ヘアメイクアーティスト、パン屋開業、農業、飲食店経営、障がい者サッカーの普及発展を目指している福祉人、歌手・司会・女優・文筆家も兼ねる起業家、グラフィックデザイナー、ゲームを通じた教育活動を目指してNPO立ち上げに参加する人、そして「ひばりタイムス」編集長も。
職業も年齢もさまざまな9人が班に分かれ、2年生4クラスを順に回って自分の仕事や将来について1人10分ずつ話しました。コロナ禍で実施できなかった「職場体験」に代わり、社会人の仕事や体験に触れる機会を提供しようと企画した「仕事についてのお話を聞く会」です。三中生は大人たちからこんな言葉をいただきました。
「好きなものを早くみつけられたので、中学生の頃からそこに向かって努力する事ができた」
「ずっと普通の主婦だったが、パン作りだけは大好きだった。友達に食べてもらうと、『おいしい』と言って笑顔になってくれる。それがうれしくて50代からお店を始めた。ただ体力的に厳しく毎日はできない。だから1日だけのお店にしてみよう…。諦めずに、他のやり方ではできないか考えれば、きっと道は開ける」
「飲食店は、お客さまに『ありがとう』と直接言ってもらえる素晴らしい仕事。大変なこともたくさんあるけど、目の前のお客さまを思うと頑張れる」
「サッカーが好きだった。選手にはなれないけど関連のある仕事がしたいと、イベント系警備の仕事をした。そこで障がいのある方と接して、どんなお手伝いが必要か知りたいと福祉関係の仕事にも就いた。好きなことから発展させて、いろいろな道に進むことができる」
このほか、中学生に人気の職業のYouTuberについては、「どれだけの登録者がつくと収入になるか。それには撮影が大事。プロに頼むと高額で赤字になる。YouTuberとして生きていくのはなかなか大変だ」と、現実を見つめる話も聞くことができました。
絵本デザインの進め方を実物を見せながら具体的に説明したり、「どんな風に仕事をしたいか」と生徒に質問して話を進める人、自身がしてきた編集の仕事を紹介する人も。それぞれ職業についてわかりやすく、希望を持てるように話していました。
耳を傾け鋭い質問も
三中生も真剣に耳を傾け、時には手を挙げて質問していました。
地元の農家の方には「スーパーで野菜を買う人が多いので苦労されているのでは」。これに対して「新鮮さで勝負。また対面販売しているのも強みです」との答が返ってきました。「農家の後継者問題は?」という鋭い質問もありました。
事前に用意されていたワークシートに懸命に記入していた姿も印象に残ります。
三中生の心に変化が芽生えればと思っています。
「この仕事が楽しい」「お客さんの喜ぶ顔が好き」「どんなことでも楽しいと思える仕事を」「自分を好きでいることが大事」…。生徒だけでなく、聞いている大人たちも改めて、そうなんだよねと再認識する1日でした。
コロナ禍で「職場体験」取り止め
文部科学省のホームページによると、全国の公立中学校の9割近くがキャリア教育の一環として職場体験を実施しています。職場体験とは、生徒が事業所などの職場で働くことを通じて、職業や仕事の実際について体験したり、働く人々と接したりする学習活動です。
私が中学生の時、職場体験はありませんでした。自分の進路も、学校の成績だけで高校を選べばいいやと考えていました。息子が三中にお世話になった時、職場体験があり、ちゃんと子どもの将来を考えてカリキュラムを組んでいるんだと感心したものです。
田無三中では毎年2年生の1学期、2日ないし3日間職場体験をしてきました。コロナ禍で、他の学習活動同様、実施できなくなっていて、今年度もできない状況と伺いました。
地域の大人が力を合わせ
中学生だと仕事を間近で見る機会は学校の先生、日々の買い物のお店くらいしかないでしょう。自営業ですと保護者の仕事を見ることはできますが、それは少数だと思います。仕事について知る機会が少ないなか、中学生が自分の進路を考える際の参考になればと思い、保護者でも先生でもない大人が、仕事の話をする会を考えました。2年学年主任の葛目先生と相談し、クラスに来ていただいて、話をしてもらうことになりました。
三中応援団メンバーに声かけしてもらったり、育成会にしはらのメンバーにお願いしたりした結果、9人が引き受けてくださいました。仕事の話といっても、何をテーマにと決めず自由に、とお願いしたので戸惑ったでしょうが、皆さんご自身の仕事が好きで誇りを持ってされていることを話してくださいました。
会が終わった後、東山校長先生から「多彩な人にお話しいただいて、生徒にとって有意義でした。学校だけでは探せなかった」と労いのお言葉を頂戴しました。学校の先生方は日々お忙しいので、地域の大人が代わりにできることがあればお手伝いしたいと考えておりましたので、少しでもお役立てできていればうれしいです。
楽しかったので来年もブラッシュアップしようと、やる気満々です。
(写真は、筆者提供。クレジット入りの1枚を除く)
【筆者略歴】
本田雄三(ほんだ・ゆうぞう)
1963年2月10日東京都生まれ。会社役員。西東京在住16年。長男が田無三中3年生の時「三中応援団」を設立し、主に定期考査前の学習会や放課後カフェを開いてきた。2年前より地域で青少年の健全な育成を支えている「育成会にしはら」の活動にも参加する。
【関連情報】
・田無三中応援団(西東京市立田無第三中学校)