自由学園平和講演会

「最悪の平和」か「まだマシな戦争」か 自由学園の「平和週間」で岡田斗司夫さんらが講演

投稿者: カテゴリー: 子育て・教育 オン 2022年10月2日

 自由学園(東久留米市学園町)の女子部・男子部(中等科・高等科)で、9月20~22日に「平和週間」と銘打った講演会が開催された。21日の「国際平和デー」にちなみ、2016年から毎年行われ、平和になるためには何が大切か、人と人とのかかわり方はどうあればよいかなどを考え、学校や寮などでも「より平和な社会となるよう」実践していきたいとする趣旨。企画や講師選び・依頼や当日の進行など運営は生徒が行い、今年は中2から高3までの19人が係を務めた。当日は全生徒約460人が参加した。(写真は倉野武撮影)

 20日の講師は、ユーチューバーで作家の岡田斗司夫(としお)さん。
 冒頭の自己紹介で、「名前の斗は戦う、司はコントロールする、つまり戦いをコントロールする男という意味で、平和の講演にはあまり向いていませんが」とあいさつ。今回の講演について岡田さんは、依頼されて4人の中3生徒に会った際、岡田さんの質問に対する答えを聞いて「この学校、レベル高いぞ」と講演を引き受けたエピソードを語り、講演でもその「質問」を紹介した。

 

岡田斗司夫さん

「講演は5年ぶり」と言いつつ、ノリノリの岡田さん

 

 〈あなたは大陸の真ん中にあり、人口1億人の国の大統領です。この国は30年間景気が悪く、失業者も多く、毎年2万人の自殺者がいて、先の見通しもない「最悪の平和」と言える状態。あるとき国境付近にものすごく価値がある地下資源が見つかり、隣国と戦争が起こりそう。戦争になると、最初の1年で1万人の死者が出るが、その後は年間1000人くらいの死者で済み、80%くらいの確率で勝てそうとも。戦争にまつわる事業で失業者はいなくなり、勝って地下資源が手に入ればこの先50~100年は景気がよくなる。戦争だけど、「まだマシな戦争」という状態。さて、あなたはどちらを取るか――〉

 岡田さんは、「こういうめちゃくちゃしんどいことを決めるのが政治。ここにいる460人は、日本の国会(衆院)議員(465人)とほぼ同じ数。だから、皆さんは独立国・自由学園の国会議員で、皆さんの決定でこの国がどうなるかという思考実験をしてください」と呼びかけた。

 

岡田斗司夫さん

ディズニー、ジブリなどを題材に、戦争と平和を語る

 

 続けて、米アニメーターでプロデューサーのウォルト・ディズニーが愛国者で第一次、第二次世界大戦のとき、戦争への参加を熱望したり、戦意高揚のアニメ作品を作ったりしたことを紹介。また、戦前、ゼロ戦の設計・開発を担当し、自らの夢とさまざまな犠牲に思いをはせる堀越次郎を主人公にしたジブリアニメ映画「風立ちぬ」、古代の神たちが住んでいた山や森を破壊し、楽園を作ろうとする人間と、山犬に育てられ、人間に戦いを挑むサンの姿を描く同「もののけ姫」の物語を丁寧に説明。そして、戦争と平和につながる主人公たちの行動や思いについての質問、さらに、冒頭で紹介した「最悪の平和」と「まだマシな戦争」のいずれを選択するか―の答えも求めた。

 その後、生徒たちが、それらの答えを書き込んだ大きめのポストイットを見ながら、岡田さんがコメント。「この中3男子は、『とにかく戦争が起こらないことを願う。NO WAR』と書いているけど、戦争か平和では、戦争を選んでいる…難しいんですよ。細かいこと、いろいろな立場を考えると、正解はない」。また、「あっ、これは考えたことなかった。確かにそうだね」と感心する答えも。すべてに目を通すことはできなかったため、10月2日(日)午後7時から生配信の岡田さんのユーチューブチャンネルで講演の様子とともに紹介すると約束した。

 講演終了後も、質問や、記念撮影などのため多くの生徒が会場に残り、岡田さんもそれぞれ丁寧に応えていた。

 

岡田斗司夫さん

終了後も岡田さんのもとには生徒が次々と集まり…

 

 岡田さんはひばりタイムスなどのインタビューに「最前列の中央が中学1年生、つまり半年前まで小学生ですよ。その人たちに話して、これわかっているかどうか、彼らの目をのぞきながらドキドキして話すのは貴重。中学1年生でもわかるように気を付けて、かなり精密な話ができたと思う」と振り返った。

 また、「生徒さんのリアクションが楽しかった。どの部分に納得して顔が縦に動いて、どの部分は退屈して背もたれに背中をつけるのか。背もたれに背中がつきそうになると、いかん、この話は端折ろうとかね(笑)」。

 一方で、「誰もが平和がいいと言うのは決まっているけど、その発想と主張を大きくするだけでは平和は来ません。一番いけないのは思考停止。議論することはいけないことだと封じたうえで平和を守らせる、戦争をさせるというのが最悪です」とのメッセージも。

 最後に中高生が企画する「平和週間」について、「僕が受けたことがないタイプの依頼で、中3の生徒さんからじかに(依頼の)メールをもらった。中学生がこんなことをやっているなんておもしろい。こういう学校がもう少し増えてくれた方が僕は楽しい」とも話した。

 岡田さんを講師に提案した中学3年の田中陽彩(ひいろ)さんは「小学4年生のころから岡田さんの動画を見て、面白いなと思っていました。視野が広く、物事を俯瞰的にとらえるところが好き。平和週間なら直接岡田さんの話が聞けると思い、推薦しました。実際に話が聞けてうれしかったし、人を飽きさせない話、話し方、人にものを伝える方法なども勉強になりました」と満足した様子だった。

 「平和週間」では21日に社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子さんが「『真の自由』を求めて、女性学は何と闘ってきたか?」と題して講演。「『伝統だから』『こうするものだから』などとあきらめたり思考停止になることなく、これはおかしいのではないかと気が付けるようになること、そしてそのことを伝えていくことが大事。ノイズは歓迎されない場合もあるが、そのようなノイズこそが、よりよい社会作りのきっかけとなる」などと説いた。

 22日は助産師として活動しつつ、NPO法人ピッコラーレの理事として「にんしんSOS東京」の相談窓口などを務めている土屋麻由美さん。妊娠や出産をめぐる実態やデータ、自身の相談対応経験などを紹介し、遅れている日本の性教育改革などを訴えたほか、「男女ともに互いの心と体に思いやりを持って、安心して相談し合えるパートナーとなり、一緒の時間を楽しく過ごせる間柄になること」の重要性を強調した。

 「平和週間」の取り組みを始めた更科幸一・女子部校長は、「この日本に住んでいる私たちにとって平和とはどういうことか考えることは大変難しく表面的になりやすいです。平和のタネまきを若いときにすれば、いつか芽が出て花が咲く。そのために良質なタネをまいておきたい」と企画の意義を語る。そのうえで、今年の「平和週間」について、「これまでで一番、企画・運営を生徒にまかせた年で、ほぼ100%生徒が行うことにとても違う意味があると思います。生徒たちの心に何か一つでも残っていれば良いです」と話した。

 

【関連情報】
・岡田斗司夫日曜LIVE#458(2022.10.2)自由学園講演(YouTube

 

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